イスラエルのイノベーションはモビリティー革命の牽引役
最近の数年間のうちに、イスラエルは、自動車およびモビリティーの分野で世界を主導するイノベーションの中心地となりました。イスラエルには自前の自動車製造産業がほとんど無いにもかかわらずです。
「イスラエルの自動車・スマートモビリティー産業は、電動化、自動化およびスマートモビリティーに関連した大きな潮流におけるイノベーションラボかつペースメーカーになりつつある」(「イスラエルの自動車・スマートモビリティー産業 - 電動化、自動化、知能化」 – 世界的な戦略コンサルティングファームであるRoland Bergerのレポートより)。
イスラエルは長年にわたって「スタートアップ大国(Start-up Nation)」と見なされてきました。イスラエルの自動車エコシステムは、2012年、イスラエル政府、イスラエルの大学、民間セクターの合同プログラムである「Fuel Choices & Smart Mobility Initiative」の設立に続く形で始まりました。このプログラムは、エネルギーとモビリティーの分野におけるイノベーションの促進を目的とするものです。このプログラムは複数の研究機関、アクセラレーター、そして現在この分野を主導するスタートアップの多くにとって、触媒の機能を果たしました。
イスラエルのモビリティーエコシステムは、ADASセンシングからスマートシティー、サイバーセキュリティー、インキャビン・テクノロジーに至るまで、幅広いサブドメインを網羅しています。
ソフトウェアからチップデザイン、用材、新しいビジネスモデルに至るまで、製品や成果の種類においても、これらの企業は多種多様です。
ここ数年間の巨大な取引によって、このエコシステムの有効性は繰り返し証明されてきました。最大かつおそらく最も有名なのは、ADASおよび自立型システムの世界的リーダーであるMobileyeをIntelが$152億という莫大な金額で買収したことでしょう。他の注目すべき例は以下のとおりです。白タクサービスVIAにダイムラーが$2億を投資、自動車サイバーのリーダーArgusをContinentalが$4億3,000万で買収、Innovizの開発したソリッドステートLiDARをBMWが将来の車両に装備、Fordが自動運転への利用を見据えてコンピュータービジョンのリーダーSAIPSを買収、Storedotの次世代高速充電バッテリー技術に対するダイムラーの$6,000万の投資、その他多くの例があります。
イスラエル・エコシステムの有効性は、M&Aやイスラエル企業との取引だけでなく、イスラエルにおけるR&Dセンターの開設状況によっても明らかです。GM、Daimler、Harmanなど、世界でも大手のOEM企業および一流サプライヤーは、エコシステムのイノベーション能力を活用しようと、イスラエルにR&Dセンターを開設することを選びました。イスラエルのスタートアップや大学と協働するため、イノベーションセンターをイスラエルに設けている企業は多くあります。フォルクスワーゲン、ポルシェ、ルノー日産三菱アライアンス、ヒュンダイがその例です。
次回以降の幾つかの記事では、モビリティーエコシステムの特定のサブドメインに注目し、巨大自動車企業が新しいモビリティーに向けて直面する重要なユースケースおよびニーズに対して、イスラエルのイノベーションがどのようにソリューションを提供できるかを探ります。