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REPORT

業界レポート『行動様式の変化とデジタルテクノロジーを活用したモビリティサービスの事例』

自動車業界、そして未来のモビリティ社会に関連する業界の最新動向や、世界各国の自動車事情など、さまざまな分野の有識者のレポートをお届けします。

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はじめに

去る3/10-11に弊社がプラチナスポンサーとして協賛するReVisionモビリティサミットがベルサール御成門タワーにて開催された。第5回の開催となる本会では初日のテーマを「新しい視点からCASEの進化を捉え直す」、2日目のテーマを「スマートシティと地域・物流におけるMaaSの可能性を探る」として、2日間で21のプレゼンテーションが行われた。当社からの招待で、住友商事も2日目に自動車製造事業本部から宮崎氏が登壇し「モビリティを進化させるBeyond Mobilityのビジネスビジョン」について講演した。

 

また、本イベントの中では弊社のパートナーであるアビームコンサルティングも自動車産業インダストリーリーダー古川氏が「アフターコロナ時代に起こりつつある自動車・モビリティ業界の変革とは」について講演した。本稿ではその内容を紹介したい。

 

改めて紹介すると、アビームコンサルティングは、戦略立案・構想策定から業務改革・設計、システム開発・導入まですべての領域を手掛ける日本発の総合系コンサルティングファームを掲げている。自動車産業においては国内自動車メーカーや部品サプライヤー等に対して戦略・調査・システム導入などの支援を行っている。今回の講演はモビリティサービス領域に関するもので、コロナによって変わった人々の生活・行動様式、そして事業環境の変化を分析し、MaaSや車両を使ったオペレーションの進化、人工知能(AI)を活用した収益改善策について、具体事例を織り交ぜながら、自動車・モビリティ業界に求められるアプローチや必要なテクノロジーについて披露した。

行動様式の変化

 

日本では、「密を避け、感染しない/させない」と言う意識が定着し、この意識の変化により「なぜ、移動するのか?」というこれまで意識してこなかった問いを突きつけられた。その結果、移動に関する行動様式にパラダイムシフトをもたらすことになった。つまり、「自ら移動するのは、その必要がある時だけ」となり、移動そのものに意味がなければ、自らは移動しない行動様式へと変化し、行動範囲についても「小さく、家族とともに」というように変わって行った。

 

この様な、意識・行動様式の変化の下では、モビリティサービスに求められるものも変わってくる。「荷物・食事だけでなくサービスも欲するときに届けてくれるデリバリーサービス」が求められるようになり、パーソナルを求めつつ、外部環境に応じて移動する/しないを判断していくため、「移動する目的・人数・関係にあわせた多様なモビリティを組み合わせてパーソナル空間を提供するモビリティサービス」が求められる。

このような行動様式の変化に対応するための成功要因として以下の3つを挙げている。

  • 人、モノを問わない柔軟なサービス設計
  • 車両、ドライバーリソースを共有できる体制作り
  • デジタル化による業務の自動化、効率化

サービス設計に関しては移動需要のダイナミックな変化を把握しながら、人とモノの移動両方を統合していくといった対応が必要となる。車両・ドライバーリソースの共有に関しても、需要に合わせて柔軟にリソース配分を変更していく、さらにシームレスなオペレーションを実行していくことが必要となる。そして、自動化・効率化に関しては、モビリティビジネスのプロセスとタスクすべてを最適化し、自動化していくことが求められる。こういった状況の中で、デジタル技術の重要性はますます高まっている。柔軟なモビリティサービスを実現するためには、市場の動的なニーズを理解することが重要となるが、この動的なニーズは政策や感染状況、経済状況に影響される。市場の変化が大きい環境の中で、手作業などの従来の方法で市場の変化を捉えて対応することは困難であるため、デジタル技術を活用し、業界を超えた事業、エコシステムを作っていくということが成功要因となる。

 

例えば、AIと機械学習をベースにした「需要予測」技術を用いれば、ダイナミックな需要を予測することが可能だ。柔軟な資源配分についても、急速に変化する需要に対して、人と車両の両方の資源を手動で割り当てることは現実的に不可能だが、オペレーションをデジタル化することで、多くのプロセスとタスクを最適な方法で自動化することが可能となる。

 

次に、このようなデジタル技術の活用事例を紹介する。

プノンペンにおける社会課題とモビリティサービス

プノンペンでは周辺の人口が増加して自動車やバイクの数が急増した結果、交通渋滞が非常に悪化しており、また、公共交通機関も不足していると言う状況にある。特にバス路線の運行状態では、使いやすい場所に停留所が無いことや、サービス面でも運行情報が少ない、乗り継ぎが難しいといった不便な状況下にあり、これらの社会問題を解決する新しいモビリティサービスが求められていた。アビームコンサルティングでは、郊外から都心部への通勤者を対象としたオンデマンドバスサービスの導入に向けた戦略立案と事業シミュレーションの支援を行っている。事業検討のKPIとして乗車人数、待ち時間、乗車効率の3つを定め、この相反する3つのKPIの最適化を検討するに当たり、テクノロジーパートナーであるオートフリート社の事業シミュレーターを活用した。

 

運行ルートの設定に当たっては、過去の移動データから需要予測を行い、将来の需要を予測して決定される仕組みを検討した。バスはこうして決定された最も多くの需要を見込めるルートを選択し、そのルートを通りながら実際に発生した需要に基づいて乗客を乗せて、目的地に向かう。結果として乗客を待たせず、効率が良く、多くの乗客を乗せられるというオペレーションが実現可能となる。


このデジタル化オペレーションの試算によると、通常のオペレーションに比べて乗車率は30%向上、運転時間は25%削減となり、高い効率性を確認することがでた。さらに、オートフリート社のシミュレーターでは時間帯毎の需要予測も可能なため、需要の少ない時間帯において、車両を他のモビリティサービスに活用する等、更なる効率化の検討も可能である。

おわりに

本講演の最後に、古川氏は「1つのモビリティサービスだけで持続性のあるビジネスを作っていくというのは非常に難しい」と述べた。今回の事例で挙げられているような需要予測のアルゴリズムや、異業種連携を通じて様々な情報を取り込むようなモビリティサービスを複数展開していくこと、これが非常に重要な成功要因になってくると考えられる。特に市場の変化の大きさを考えると、事業者ができることをやるのではなくて、市場がどのようなものを求めているか、デジタルテクノロジーを活用しながらしっかりと需要を予測し、それに対して柔軟なモビリティサービスを提供していくということが、今後の消費者起点でのモビリティサービスの提供、ひいては社会課題の解決につながっていくことになるだろう。

 

 

 

出典:

■アビームコンサルティング株式会社 第5回ReVisionモビリティサミット講演資料『アフターコロナ時代に起こりつつある自動車・モビリティ業界の変革とは』

https://sc-abeam.box.com/s/mee86glfrllozi84rgfs5cifst35i6yb

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