メインメニューを開く

REPORT

業界レポート『クルマ選びに悩む時代がやってきた』

自動車業界、そして未来のモビリティ社会に関連する業界の最新動向や、世界各国の自動車事情など、さまざまな分野の有識者のレポートをお届けします。

  • Facebookでシェアをする
  • Twitterでリンクを共有する

筆者の自家用車は2009年製の国産車で、内装がちょっと豪華な特別仕様車というやつだ。少し奮発して280万円ぐらいだったと思う。愛犬も含め家族みんなで旅行に出かけ、思い出の詰まった愛車だ。その愛車もまもなく13年を迎えることから、そろそろ次をどうするか考えるタイミングが来た。そこで今回は、クルマの買い替えについて、ユーザーのひとりとして考えてみたい。

BEV/PHEVの購入を検討してみると

買い替え検討となると、クルマの電動化に関心を持っている筆者としては、まず電動車をチェックしてからでないと始まらない。そこでまず、モデルのリストアップに取り掛かった。今回検討対象としたのは、いわゆるZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)に区分されているBEV(バッテリーEV)とPHEV(プラグイン・ハイブリッド)の2つだ。日本ではHEV(ハイブリッド)も電動車に含まれているが、ここは敢えてBEVとPHEVの2つに絞ってみた。

リストアップを始めてすぐに、日本における電動化の遅れを改めて思い知らされることになる。販売されているモデル数が少ないのだ。今後、数年以内に国内ブランドからBEVの新モデルが複数投入される計画のようだが、現時点では予約注文できるものを含めても国内ブランドでは10モデルにも届かない。これでは、選ぶ楽しみがあるとは言い難い。

加えて価格も高い。価格帯は各ベーシックグレードで330万円台から660万円台と、従来のエンジン車やHEVよりも一段高いレンジになっている。価格が高くなっている要因は、バッテリーコストが大きいことに加え、ZEVに限らず最近のクルマに共通なことだが、衝突軽減ブレーキやクルーズコントロールのような高度な安全運転サポートシステムが搭載されているからのようだ。筆者も安全装置を装備したクルマを運転したことがあるが、確かに装置が作動していると安心感を覚える。これからの時代、クルマを所有するには、ある程度の自動車価格上昇は受け入れないといけないのかもしれない。

話を我が家のクルマ選びに戻すと、モデル選択肢が少なく価格も高い現状では、いくら安全運転サポートシステムが充実しているからと言っても、BEVもしくはPHEVの購入に踏み切る勇気が湧いてこない。極めて現実的に、「仕方ない、車検を通してあと2年乗るか」ということになりそうだ。そうなると、今度は、「車齢13年のクルマをさらに2年乗って大丈夫なのか?」という新たな質問が家族から出てきた。そこで次に、クルマの年齢について調べてみた。

平均車齢と平均使用年数:

自家用車を購入するとき、そのクルマを何年ぐらい乗り続けるか、人はそれぞれに概ねイメージしているものだ。3年後の初回車検のタイミングで買い替える人もいるし、いやいや最後まで乗りつぶすという人もいるだろう。この実態を推察する数値に「平均車齢」と「平均使用年数」というものがある。

「平均車齢」は、ナンバープレートを付けている自動車が初度登録してからの経過年の平均であり、人間の平均年齢に相当する。一般財団法人自動車検査登録情報協会が公開している統計データによれば、2020年3月末現在の軽自動車を除く乗用車3,928万408台の平均車齢は8.72歳で、前年に比べ0.07年延び、28年連続して高齢化が進んでいるという。

一方「平均使用年数」は、初度登録年度ごとに1年前の保有台数と比較し、減少した車両を1年間に抹消された車両とみなして、新規(新車)登録されてから抹消登録されるまでの平均年数であり、クルマの寿命と言われることもある。(ただし一時抹消も含まれるため完全にスクラップされるまでの期間とは若干異なる。)同じく一般財団法人自動車検査登録情報協会によれば、2020年3月末現在の軽自動車を除く乗用車の平均使用年数は13.51年であり、前年に比べ0.25年延び、5年連続で増加を続け、20年前の2000年に比べると3.55年も延びたという。

                                   (出典:一般財団法人自動車検査登録情報協会)

グラフを見てわかる通り、2000年以降は右肩上がりで延びている。この要因には、経済環境などクルマ周辺の事情も影響しているのだろうが、クルマが壊れなくなった・長持ちするようになったことは間違いないだろう、と個人的には受け止めている。ものづくりの努力はこういう統計数値にも表れるのだと改めて認識するとともに、クルマ作りに携わっている方々に敬意を表したい。また、クルマ販売あるいは整備の関係者も、車齢の上昇や使用年数の伸長を見据えて、それぞれの事業を展開していることだろう。

 さて、またわが家の愛車に話を戻そう。平均使用年数が13.51年という時代だから、すでに12歳の愛車も、そろそろ引退させてあげる時が近づいていることはわかった。冒頭、そろそろ次を考えるタイミングと申し上げたが、まさにユーザー感覚と統計結果が合致した格好だ。さて、どうしたものか、悩みどころだ。

電動車時代を前にした悩み:

冒頭にも申し上げた通り、我が家は購入したクルマを長年使い続ける方針だ。いまはBEVやPHEVは高額だから買えないが、かといって、いまエンジン車を購入すると2035年ぐらいまで乗り続けることになり周囲の目が気になることは必至だ。ここはHEVを買うのが無難ということだろうか。

恐らく、これからしばらくは、筆者と同じような悩みを持つユーザーが増えることだろう。そして、間違いなく彼らの購入判断がこれからの電動化の行方を左右することになるだろう。気候変動対策を見据えて賢明で合理的な判断が下せる人間にならなければと、ひとりのユーザーとして考えさせられたのである。

 

 

RELATED関連する記事

RANKING人気の記事

CONSULTANTコンサルタント