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保有時も考慮して経済合理性を追求する
◆ソニー損保、「エコカーに関する調査」結果を発表 <2009年 08月 06日号掲載記事>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【環境より経済性重視という現実】 ソニー損保が「エコカーに関する調査」を実施した。20 代~ 50 代の自家用車を保有し、エコカーに関心がある男女 1,000 名が対象で、主な結果を抜粋すると、以下の通りとなっている。 ・「ガソリン車からエコカーに買替えることは環境に良いことだと思う」⇒あてはまる:88.4 % ・「コストがかかっても、従来の車よりも環境に良いエコカーを選びたい」⇒あてはまる:26.6 % ・「環境に良いことより、お金の節約の意識のほうが強い」⇒あてはまる:53.0 % ・「低燃費の経済性によって、ガソリン車との購入価格差を回収できなければエコカーを購入しない」⇒あてはまる: 57.6 % エコカーは、もちろん「環境に良い」という認識はあるが、コスト次第では購入を控えるという意見が主流である。特に上記 4 つ目の設問では、半数以上のユーザーが、「購入コスト+燃料費のトータルでの経済合理性」が成り立たないとエコカーを購入しないという結果になっている。 エコカーに買い替えることの経済合理性を考える上で、法人と一般消費者では、その捉え方に、若干異なる部分があるだろう。 法人、特に大企業の場合には、エコカーを導入することが IR や広告宣伝にも繋がり、車両関連費用(車両代・燃料費など)だけでなく、マーケティング活動も含めて経済合理性を勘案すると考えられる。 一般消費者の場合には、一部の層には自己のマーケティング(趣味・嗜好・ステータス感などの表現)に繋がることが考えられるが、多くの層は、どこまで意識しているかはさておき、車両関連費用で経済合理性を勘案するのではないだろうか。 こうした傾向は、これまで経済合理性に執着が薄かった若者層にも広がりつつある。詳細は、以前筆者が書いたコラム『石橋男子』を参照して欲しい。 現在、ハイブリッド車が人気を集めているが、この背景には、ハイブリッド車自体の価格が安くなってきたことに加え、減税・補助金制度が導入されたことにより、車両関連費用が下がり、経済合理性が成り立ち易くなってきたことがあるだろう。 上記のアンケートは一般消費者を対象にしたものではあるが、車両関連費用の経済合理性を追求していくことは、法人需要に応える上でも重要なことであるはずである。そして、アンケートの結果が示しているのは、経済合理性を追求していく時に、購入時のコストだけでなく、保有時のコストも含めて、考えるユーザーが増えつつあることを示しているのではないだろうか。 かつて日本車は、一定以上の性能・機能を備えた高品質な商品をリーズナブルな価格(取得時のコスト)で提供することを強みとしてきた。 しかし、現状では、海外メーカーの進化、市場のグローバル化などにより、この競争優位性が必ずしも絶対的なものではなくなりつつある。 例えば、JD パワー社の IQS (初期品質調査)では日本車より上位に位置する海外メーカーは多数あるし、市場により車の評価も変わってくる。また、一部市場・メーカーでは現地生産車両のリコール件数が多いことが示すように、日本車の品質が、昨秋以前の市場の急拡大に対応しきれなかったこともあるかもしれない。 一方で、日本車に限らず、予め中古車としての残価を見込み、取得時のコストを下げる金融手法も取られてきた。 ただ、顧客が重視する経済合理性を突き詰めれば、上述したように必ずしも購入時のコストだけでは十分ではない。メンテナンス代、燃料費、駐車場代、通行費など保有時のコストが多数あるからである。 もちろん、これまでも高品質な商品を提供する結果として、耐久性が高く、取得コストだけでなく、メンテナンス代を含めてコストメリットを享受できていたはずである。延長保証やメンテナンス・パックのように、保有時のコストを低減する施策を提案する動きもある。 しかし、乗用車の平均使用年数が 10年を超えていることを考えれば、延長保証やメンテナンス・パックの対象期間や対象部品などは限定的であり、これまで以上に保有時のコストを低減する施策を検討する余地があるかもしれない。これまで自動車メーカーとしてカバーしていなかったコストについても、対応を検討していくことが求められるのではないだろうか。 現在、自動車は「所有」するより「利用」するといった考え方が生まれつつある。これは、顧客に対して、取得時のコストだけではなく、保有時のコストを含めて、提案・訴求していかなければいけないという時代の一つの象徴的な事例だと捉えることもできるだろう。 「所有」から「利用」という時代の中では、例えば、コピー機のように取得時で儲けるのではなく保有時に儲けるといったビジネスモデルが適しているのかもしれない。その場合、取得時のコストを下げ、顧客の買い替えのハードルが下がることで、結果として、自動車業界の活性化につながる可能性もある。 ただ、1台の自動車が使用される 10年という期間の中で、複数の業態・企業が個別に顧客へ商品・サービスを提供している現状を考えると、根本的には 1社単独で、取得時・保有時のトータルでの経済合理性を顧客に提案・訴求していくことは難しいかもしれない。 だからこそ、既存の枠・概念に捉われず新たなビジネスモデルや価値の提供を考えていく必要があるのだと考えている。 その中で、コンサルティングという第三者的な立場を持つ弊社が、各プレイヤー間をネットワークする一助として、自動車業界に貢献できれば幸いと考えている。 |
<宝来(加藤) 啓>