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事業拡大に伴うシステム改善の必要性
◆ガリバー、2009年3月~5月期の連結業績は減収増益に
<2009年07月09日号掲載記事>
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【ガリバーが小売事業に注力】
ガリバーの第 1 四半期決算が発表された。昨年同期比で、売上高は 18 %減少し 374 億円となったが、営業利益は 2.2 倍増加し 27 億円という結果となった。
売上高の主な減少要因は、買取台数が減少したことや、輸出事業などを行う子会社のジートレーディングが不調であったことが挙げられている。一方で、営業利益の主な増加要因は、小売台数の増加により利益率が高まったことや、広告宣伝費などを削減したことが挙げられている。
特に、営業利益の主な増加要因として挙げられている小売に関して、注目すべき点がある。
2009年 6月 24日号のニュース&コラムにも掲載されている「あんしん 10年保証」である。国産乗用車が対象で、販売時の車齢が 7年未満で走行距離が 7万キロ以下(軽自動車は 6年未満 6 万キロ以下)の場合に、最長 10年の保証をつけるという内容だ。
保証対象箇所は重要機構部品(エンジン、ブレーキ、ミッション、サスペンション、エンジンコンピューター、乗員保護機構、ハイブリッド機構など)及びエアコン機構と一般的な保証の範囲をカバーしている。
購入後 2年目以降は保証を利用した修理の際、免責金 1 万円が発生する、ガリバー指定の工場で車検を受けなければいけないなど諸条件はあるが、これまでの国内のメーカー乃至は新車ディーラーでは見られないサービスではないだろうか。
【アフターマーケットでは周辺事業展開が活発】
これまでガリバーは買取車両をベースとして、周辺事業を展開してきた。買取車両がオークションに出品されるまでの期間、ネット上に共有在庫として保持し販売店へ業販を行う、また、ネット上で自社でもオークションを開催するなどである。
小売も買取車両をベースとして展開している事業だろう。一般消費者に直接販売することで、これまで他に流れていた流通マージンを獲得できるため、利益率が高まる。加えて言えば、ガリバーの小売は、店頭に在庫を持つのではなく、ネット販売である。顧客が持つであろう、現車を確認できないという不安を取り除くため、「あんしん 10年保証」サービスを導入したと考えられる。
ガリバーに限らず、アフターマーケットでは、周辺事業への展開が活発になっている。
ガソリンスタンドも既存のメンテナンス系だけでなく、車検、車両販売、レンタカーなどの事業展開を始めている。用品販売店も、同様に事業拡大を進めている。
【事業が拡大した時のシステム要件の変化】
こうして事業が拡大していった時に、企業内部における管理の仕組みも変えていかなければいけないだろう。
例えば、買取→小売→整備へと事業が拡大していった時には、それぞれの事業で収益を管理することが必要になる。一つの方法として、車両個別に、それぞれの事業における取引をトレースできるシステムを構築することが考えられる。
車両 1 が買い取られ、小売され、整備入庫が入るという、それぞれの取引について、収益・費用を記録し、個々の取引を事業別に積み上げて管理する方法である。
また、収益が悪化した時には、どの事業が原因かを明確にする必要も出てくるだろう。
例えば、車両 1 を買取り小売した時に、従来は 20 万円の儲けが出ていたのに、15 万円に低下したとする。その際、他の買取店やディーラー下取りとの競争が激化し、高値で買い取らざるを得なったか、または、小売の値引きが大きかったのかなどを判断することが必要になる。そのためには車両相場情報などの指標を導入し、買取価格や小売価格と突き合わせる必要があるだろう。
さらに、事業が買取から小売に拡大した時に、A さんから車両 1 を下取(買取)、同じ A さんに車両 2 を小売する取引で、車両 2 を値引く代わりに、車両 1 を高値で買取るようなことも考えられる。
この場合、顧客 A さんで幾らの収益があったかという管理が必要になるだろう。車両別に収益を管理できるシステムがあったとしも対応できないため、顧客をキーとしたシステムを作ることが必要となる。
上記は端的な例であるが、事業を多角化した際には、システムも多角化していく必要があるだろう。
【システム改善の必要性】
自社が、もともと、どういった事業から出発しているかによって、それを支える内部のシステムにも特徴が出てくるのではないだろうか。
例えば、買取事業から出発していると、「一物一価」と言われる車両の値付けや、それに基づいた車両個別の収益管理は得意かもしれないが、顧客がオークションに限定されているため、小売事業に拡大し、顧客が一般消費者へと拡大した時に、多数の顧客の中から、重要顧客を抽出するといったような、顧客別の管理という面では弱いところがあるかもしれない。
逆に、顧客別の管理は得意だが、車両別の管理は苦手という業種もあるだろう。
トヨタの豊田社長が会見で、国内 7,500 万台の保有台数を考えれば、いろいろなビジネスチャンスがあると述べているように、今後も、既存事業者の周辺事業への拡大・新規参入が続くと思われる。その際には、企業内部を支えるシステムも柔軟に改善していく必要があるのではないだろうか。
<宝来(加藤) 啓>