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市場浸透率の低い国を見直す
◆富士重工、2009年の米国の販売計画を前年並みの19万台弱に設定
新型「レガシィ」の投入や大型店出店などで前年並みの販売を維持できる と見て、今夏までに米国生産子会社の減産を解除する。
<2009年02月25日号掲載記事>
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【スバルが米国販売計画を前年並みに設定】
米国新車市場が急激に縮小する中で、スバルが米国の販売計画を前年並みに設定した。
改めて、米国市場の昨年 10月以降の乗用車全体(小型トラック含む)の販売台数を整理してみると、「急激な減少」と言うのが相応しい状況である。
今年度販売台数 昨年度販売台数 前年比
08年10月: 1,233千台 839千台 68%
08年11月: 1,181千台 748千台 63%
08年12月: 1,392千台 896千台 64%
09年01月: 1,048千台 657千台 63%
前年比で 60 %程度の台数にまで落ち込んでおり、どのブランドも苦戦していることは容易に想像できる。
【スバルが強気に計画した背景】
そんな中で、スバルは、昨年並みに販売計画を設定した根拠として、今年予定されている新型車の投入や大型店出店などを挙げているという。
しかし、それだけではなく、昨年の実績に裏打ちされた自信が計画の背景にあるのではないかと考える。
昨年スバルは、米国市場全体が 07年:16,176 千台から 08年:13,257 千台と減少する中で、187,208台から 187,699台に微増させた実績を残している。実は、昨年、米国の中で唯一、販売台数を伸ばしたブランドなのである(昨年、米国市場に参入したタタ及びスマートは除く)。
販売台数が増加した背景には、顧客層や車種構成、新型モデルの投入、新規出店など様々な要因があるであろうが、根本的には、本来、獲得可能な市場のシェアに対して、現状の浸透率が低いことがあるのではないだろうか。
【国内市場のアウディにみる類似性】
米国市場のスバルに類似する事例として、国内市場におけるアウディの販売状況を考えてみたい。
アウディは、国内市場全体が 07年:5,354 千台から 08年 5,082 千台に減少する中で、15,224 千台から 16,040 千台に伸ばしている。
国内市場で高級輸入車御三家と言われるメルセデス・ BMW と比較すると以下のようである。
07年販売台数 08年販売台数 昨年比 08年全需シェア*3 輸入車シェア*4
MB*1 46,811台 37,002台 79% 0.7% 17%
BMW* 2 47,103台 35,945台 76% 0.7% 16%
Audi 15,224台 16,040台 105% 0.4% 7%
*1 Mercedes Benz
*2 Alpina MINI除く
*3 08年日本市場全需は5,082千台
*4 08年日本輸入車市場は219,231台
競合する 3 ブランドの中で、販売台数を伸ばしているのはアウディのみである。しかしながら、全需でのシェアを見てみると、アウディは他 2 ブランドの半分程度である。
ここで、この 3 ブランドの本国ドイツでの販売シェアを見てみたい。
08年販売台数 08年市場全需シェア*
Daimler 315千台 9.4%
BMW 283千台 8.4%
Audi 250千台 7.5%
*08年ドイツ市場全需は3,365千台
アウディは、ドイツでは競合する 2 ブランドのシェアと良い勝負をしているのに、日本国内では競合する 2 ブランドのシェアに対して半分程度しかとれていない。
本来は(本国ドイツでは)、同等の競争力を持つ 3 ブランドであるはずが、日本国内ではアウディの競争力が低いというのが現状である。
もちろん、メルセデスや BMW というブランドが長年継続してきたマーケティングにより、顧客に認知度・ブランドイメージを高めてきたことや、商品ラインナップ自体の違いもあるので、一概には言えないが、アウディは、本来、獲得可能な市場シェアに対して、現状の浸透率が低いため、昨年、販売台数を伸ばすことができたと捉えられるのではないだろうか。
【市場浸透率の低い国を見直す】
本来、獲得可能なシェアに対して、市場浸透率が低いかどうかを判断するには、いくつかの難しさがある。
一つは本来、獲得可能な市場シェアをどこに定めるかという点である。例えば、上記であげた高級輸入車 3 ブランドのドイツ市場全需シェアは、10 %弱であるが、日本においては、1 %もない。どこの国でも、獲得可能なシェアは10 %であると捉えるのは明らかに誤りである。
もう一つは、競合をどこに定めるかという点である。日本国内において、メルセデスが全需に対するシェアが 0.7 %だからといって、アウディが現在の 0.4 %から 0.7 %まで高められるとは限らない。メルセデス・ BMW ・アウディが持つ商品ラインナップは必ずしも一致しないし、ターゲットとする顧客層も厳密には異なるなどの要因が考えられるからである。
しかしながら、一つの目安として、例えば商品ラインナップが同じような一方で、販売力に差があるような場合に(日本国内のメルセデス販売拠点は約 200拠点に対してアウディは約 100 拠点)、市場浸透率が低く、販売力を高めれば、販売台数増が見込める可能性があると捉えてもよいのではないだろうか。
市場浸透率の低い国では、全需が減少するような環境下であっても、ある程度の需要を獲得できる可能性があるのかもしれない。ただ、当然ながら、マーケティングに必要なコストは、既に大々的に展開している市場よりも高くなるだろう。
上記のようなことを念頭に置きながら、市場浸透率の観点から、グローバルな市場を今一度、見直すことも今回の不況を乗り切っていくための一つのきっかけになるのではないかと考える
<宝来(加藤) 啓>