AYAの徒然草(91)  『考え方の癖』

仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。

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第 91 回 『考え方の癖』

先日、親友からこんなメールが来てはっとしたんです。「彩、助けて!!」とだけ書いてあるんですよ。驚きますよね?なんかあったんじゃないかって。

彼女は、結婚して現在、一児の母です。子育てを楽しんでいるようで、携帯メールで時々、楽しい子育ての様子を子どもの写真付きで報告してくれていました。私は、写真を見るたびに、赤ちゃんって本当にかわいいなぁと、彼女のメールでとても癒されていたんです。でも、最近はそんなほのぼのとした様子から一変したメールが私の携帯に飛び込んでくるようになったんです。なにしろ「助けて!!」の一言ですから。なにか尋常じゃないことが起きてこれまでの生活から一変したとしか思えません。でも、後でその理由を聞いたら、私にとっては全然たいしたことじゃなかったので、少しほっとしたんです。

現在、彼女の家に、無期限で、彼女のご主人の妹さん、つまり義理の妹さんが居候をしているそうなのです。どうやら、その妹さんと性格が合わないようで、毎日が苦痛でたまらないみたいなんです。私は、「なーんだ」と思って、彼女に、「そのうち家が恋しくなって帰ると思うよ。時間が解決してくれるよ。だからもう少し我慢してみたら?」と、当たり障りのないことを返事していました。

しかし、日が経つにつれて彼女のメールの内容がだんだん激しくなってきたんです。「もぉー!彼女(妹さん)は早く家に帰るべきだよ!!ほんとに、常識がない人間の思考は理解できない!!普通はこんなに長く人の家には居られないはずだよ!!目障りで仕方が無い!」というように。これじゃあ、いつケンカになってもおかしくない状況です。

私の親友は、今は育児休暇中で専業主婦ですが、元々は小学校の先生をしています。とても聡明で落ち着いた雰囲気のある女性で、周囲から一目を置かれている存在です。性格は、まじめで、なんでもきちんとしているというか、とにかく、曲がったことが大嫌いな性格です。いわゆる完璧主義者です。それに、自分にも厳しいですが他人にも厳しく、「大人は常識があって当然、良識があるくらいでないといけない」と思っているような女性です。

そんな女性のところに、突然、家出してきた妹さんが飛び込んできたんですから、彼女にとっては苦痛極まりない心境なのが容易に想像つきますよね。「困ったときはお互い様なんだから温かく迎えてあげなよ。」なんて言っても、無駄なことだと私は悟っていました。

でも、もし私が彼女の立場だったら、妹さんを煙たがらずに、居候中はむしろ仲良くして家事の一つでも手伝ってもらい、自分が楽をすることを考えるけどな、なんて思ってしまいます。なにか深刻な事情があって家出してきたとしても、居候をさせてあげているんですから、それくらいしてもらったって罰は当たらないと思います。

しかし、彼女は、「妹は家に帰るべき」「普通、人の家には長く居られない
はず」という彼女の固定観念を拭えないばっかりに、精神的に苦しむ羽目になってしまっているんだと思うんです。こんなふうに、「~すべき」とか、または「~しなくてはならない」といった考え方って、時として、自分で自分を追い詰めてしまうこともあると思うんです。

また、完璧主義の人って、少しでもダメな部分があると、その部分だけじゃなくてその人を全否定してしまうような気がします。でも、全ての人間が常に完璧でいられるわけではありませんよね。自分自身が完璧を目指すのは良いとしても、自分以外の人を見るときにも、そういった自分の思考枠内で見てしまうと、自分を苦しめるだけです。

だから、彼女のようになんでも「~すべき」「~しなくてはならない」という考え方をしてしまう傾向がある人は、それを少し弱めて、「~したほうがいいかもしれない」という程度に置き換えて考える癖をつけたほうが良いんじゃ
ないかなぁと思うんです。完璧は確かに素晴らしいことですが、完璧じゃなくたって大丈夫なことはたくさんありますから。

私は、忙しかったり、また、遊びほうけていて時間がないと、自分のお部屋の掃除を何日もサボってしまうことがよくあります。そうすると、当然、部屋がだんだん散らかってきます。もちろん、きれいに整理整頓された部屋で自分の時間を過ごすほうが快適なのはわかっています。だから、そういう状態になってしまったときは、「部屋が散らかっていてもまぁ死なないし、とりあえず、いっか?」と楽観的に考えて、部屋の掃除ができていない自分を責めないようにしています。当然、自分以外の家族が同じような状況でも、全く気にしません。

考え方の癖って人それぞれで、人の顔と同じように個性の一つですよね。でも、人の顔が、一緒にいて明るい気分になれる顔と、そうではなく、なんとなく怖くて暗い気分になってしまう顔があるように、考え方の癖も同じだと思うんです。自分自身や周りにいる人を自然と明るくできる考え方の持ち主と、どちらかというと暗い雰囲気をもたらしてしまう考え方の人がいますよね。もしも、後者のような人が、ほんのちょっとだけ考え方の癖を変えてみたら、自分も、そして周りの人も気持ちが楽になれると思うのです。

さて、私は、今度彼女から「彩、助けて!!」という救助信号が届いたら、このように返事をするつもりです。「『妹は早く家に帰るべき!』と決めつけて考えずに、『家に帰ったほうがいいかもしれない。(家族も心配していると思うよ。)』という程度に考えたほうが、気持ちが楽になると思うよ。ちょっとだけ、考え方の癖を変えてみたら?もっと気楽に行こうよ!!」と。

<佐藤 彩子>