企業経営における情報収集に必要な切り口と方法について考える

(市光工業、クリーナー機能を一体化した高輝度ヘッドランプを国内投入へ)

欧州では HID ランプなど 2000 ルーメン以上の光束を発生する光源を持つヘッドランプに対し、洗浄液を噴射するなどのクリーナーの装着が義務づけられている。国内でも規制導入が検討されており、仏ヴァレオと共に製品開発へ

                 <2005年11月10日号掲載記事>

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 欧州で一定以上の光源を持つヘッドランプにクリーナーの装着が義務づけられており、市光工業が、その規制の国内導入が検討されているという情報を収集し、早くも対応を始めたとのことである。

 企業経営におけるスピードには 2 種類あるといわれている。一つは、調査や予測に基づいて前もって準備するという、今回の市光工業ような着手・着眼の早さである。もう一つは、何かが起こった後での対応の速さのことである。

 今回は、この 2 種類のスピードを社内に持つための情報収集の切り口や、収集方法について考えてみたい。

【前もって準備する】

 前もって準備するためには、まず、前もって何が起きるか、起きそうかを知る・予測することが必要となる。そして、その次に、準備をするのか、しないのかを検討することになる。

 何が起きるか、起きそうなのかを知るということは、社会・市場全体が、どういった動きをするのか、競合はどういった打ち手をしてくるのか、を分析することである。そして、準備をするか、しないのかは、自社の戦略や強み・弱みを分析し、社会全体の動き、競合の打ち手を踏まえた上で、自社の打ち手を検討することである。つまり、いわゆる 3C分析であり、まとめると以下のようになる。

(1)自社に影響を与える社会・市場全体の動きを分析すること(Customer)
(2)競合の動きを分析すること(Competitor)
(3)自社の戦略、強み・弱み等を分析し、社会・市場全体の動き、競合の動きを踏まえた上で、自社の打ち手(何を準備するか)を検討すること(Company)

 上記の 3 つの C を大きな枠として、詳細な分析項目にブレークダウンしていく必要があるが、分析項目は、自社の展開しているビジネスが製造業なのか、サービス業なのかといったことでも変わってくるし、分析の目的が生産工場を建てるための準備なのか、ある製品を、どこかの地域で販売をするための準備なのかといったことでも異なってくる。

 一般的な例として、社会・市場分析で必要な切り口は、法規制の変化や、社会インフラの整備状況、市場の成長性、顧客のライフスタイルの変化、BtoB の事業であれば顧客の事業領域の変化などがあげられるだろう。競合分析は、最近の業績や、強み・弱み、ポジショニング、戦略や、その企業の注力している領域などがあげられる。自社分析は、競合分析であげた切り口や、更に踏み込んだ、勘定科目レベルでの財務分析などが考えられる。このように分析項目は、多岐にわたるため、市場の特性を把握して分析項目に強弱をつけたりといった分析のフレームワーク作り、調査設計が必要となる。

 特に、前もって準備をするといった観点では、法規制の変化は、自社の戦略、強み・弱み等に関わらず、対応しなければ戦いの土俵にも立てなくなるという種の制約であるので、重要であろう。

 こうした分析は、大企業であれば通常行っていると想定されるが、担当部門で個別に行っていることも多く、実は同じような調査を既に他部門が行っていたということも多いのではなかろうか。大企業においては、3C 等のフレームワークを用いて、社内に散らばる情報を体系化し、情報の一元管理を行うことが、前もって準備するための近道かもしれない。また、中・小規模の企業では、調査機能を内部に恒常的に持つことが経営リソース的に難しいことが想定され、そういった場合には、外部に委託することにより定期的に確認することが必要だろう。
【対応を速くする】

 対応を速くするためには、まず、何が起きたのかを把握する必要がある。そして、その次に、どのように対応をするのかを検討することになる。

 具体的には、以下のことが必要となるだろう。
(1)情報を収集するシステムのスピードが速いこと
(2)問題を浮き彫りにするような評価指標を設定すること
(3)評価指標の責任者が明確であること
(4)定期的にモニタリングする仕組みがあること

 (1)は、それぞれの企業規模や業態によって候補となるシステムは変わってくるが、例えば月次決算に何日かかるかといったことや、粗利ベースでの情報であれば毎日確認できるといった、(2)の評価指標を踏まえた上で、必要なシステムを選定することが重要であろう。また、評価指標を変更した場合に、簡単なカスタマイズを行うことで情報を収集できるかなども考慮するべき点である。

 (2)、(3)は企業の考え方によって変わってくる。例えば、材料費は、よい材料をいかに安く購買したかという観点から購買部が結果責任を負っている場合があるが、一方で、製品別の利益でみると、その製品が、コストを含めて、いくら儲けたかについては、プロダクトマネージャーが結果責任を負うべきという考え方もある。評価指標を設定する上では、妥当な結果責任者は誰であるかとを踏まえて検討することが重要である。

 (4)は、評価指標の上下関係を見定めて、体系だてて管理をし、指標別にモニタリングサイクルを決めることが重要であろう。また、評価指標の管理階層が深くなると、それだけ対応が遅くなる可能性があるが、管理階層がフラットであるからといって、単に幅が広がるだけで、それだけ速くなるというものでもない。モニタリング結果の伝達の速さは、企業努力によって磨かれるものと考える。
【まとめ】

 前もって準備をすること、何かが起こった後で速く対応することのベースになっているのは、情報である。そして、その情報を体系的に管理し、いかに効果的に活用するかは、企業側の仕組みの問題である。経営資源の人、モノ、金に情報が加わって久しいが、情報の効率的な収集と効果的な活用は、いまだに多くの企業で十分には、理解・実践されていない領域ではないだろうか。

<宝来(加藤) 啓>