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環境の変化を注視し、自社の弱みを強みに変える
◆富士重工、4月に国内のスバル販売会社を統括会社体制へ完全移行
<2009年 01月 31日号掲載記事>
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【構造的な問題を抱える日本市場】
自販連が発表した 1月の国内新車販売台数(軽自動車を除く)は前年比 27.9 %減の 17 万 4281台となり、6 カ月連続で前年実績を下回った。1月の減少率としては集計を始めた 1968年以来で最大であり、販売台数もピークだった 1990年からほぼ半減した。
また、全軽自協が発表した 1月の軽自動車販売台数は、前年比 5.6 %減の 12 万 7426台であり、3 カ月連続で前年実績を下回ったものの、登録車に比べると底堅い状況が続いているといえるだろう。
リーマンショックの影響は日本の自動車市場にも及び、販売台数の記録的な減少を引き起こしているが、日本市場の低迷は数年前から継続しているものであり、他の市場のように一過性のものではなく構造的な問題といえる。
人口の減少や少子高齢化、若者、都市部での車離れといった主に人口動態的な要因により、ストックである保有台数も 2007年度から減少を開始している。
構造的な問題に対応するため、自動車メーカー各社は数年前から、国内事業の構造改革に着手し始め、販売ネットワークの最適化も進めてきているが、昨年から更に約 30 %減ということはそのピッチを更に早めなければならないということになるだろう。
【各系列で進められる販売ネットワークの最適化】
このような状況を受け、スバルは、昨年 10月から近畿地区、九州地区を皮切りに取り組んでいる同社出資の国内販売会社の統括会社体制への移行について、当初の 2009年秋の予定から前倒し今年 4月に完全実施することを発表した。
具体的には、4月 1日付で新たに 4 地区(東北地区、甲信越・北陸地区、東海地区、中国・四国地区)において統括会社体制へ移行する。
先行 2 地区と同様、各地区内で中核販売会社を統括会社と位置づけ、地区全体の事業運営 ・ 管理の責任を負うとともに、その他の販売会社は統括会社傘下の事業会社として、営業活動を中心とした担当地域の事業運営に責任を負う。
今回の新体制への移行にあたっては、先行 2 地区で得られたノウハウを活用するとともに、各地区の地域特性に応じた経営体制とする予定としている。
なお、出資会社のうち、担当市場の規模や企業規模が大きい北海道スバル、神奈川スバル、千葉スバル、東京スバルの 4 社は、今後も単独会社として経営を続ける。
これに伴い、国内のスバル販売会社は 46 社体制から実質 22 社体制となる。メーカー系 10 社、地場系 12 社という内訳である。
スバル以外の系列でもこのような動きは見られ、日産が 2007年 3月に全国を10 のブロックに分け、それぞれ統括会社を設立することを発表し、順次進めているほか、三菱は 2007年 4月から 7月の間に連結販社 29 社を北海道、東日本、関東、中部、西日本の 5 社に統合している。
スバルもより広域での統合を目指したが、販売現場の混乱を懸念して、現在の区分に落ち着いたということである。
これらの動きにはいずれもメーカー主導でコントロールを一元化して、市場規模の縮小にあわせて拠点数を最適化しやすくする、また間接部門を集約して管理コストを削減、店舗に対し車両販売、サービスといった直接業務に注力してもらうという狙いがある。
【昨日の強みが今日の弱みに、昨日の弱みが今日の強みに】
また、もう一点、上記系列に共通するのは、元々、メーカー資本の販社の割合が多く、それらを広域統合している点である。販社の中には主に地場の名士がオーナーとなっている地場系販社もあるが、そもそもの資本の違いもあって調整が難しい。
メーカー資本の販社が多いのは日本市場ならではの特徴ではあるが、かつては、国内ネットワークにおいて、地場系販社が多いほうが有利というように言われていた。メーカーはあくまで自動車製造のプロであり、自動車小売のプロではないからである。
しかしながら、環境が変化し市場が縮小している局面において、販売ネットワークの最適化を一元的に行っていくためには、メーカー資本の販社が多いほうが進めやすいという面もある。
環境の変化に伴い、不利な条件と思っていたものが有利な条件に変わるという一つの例である。
このような国内販売ネットワークの例に限らず、昨今の急激な環境の変化に伴い、業界内のルールが変化を始めている。
例えば、かつては利益率のよい大型車を商品ラインアップ内に有していないことは弱みであったが、現在のような状況においては、逆にそれが強みとなる。
また、スズキの鈴木修会長が 2008年 4月~ 12月の 9 カ月累計の業績発表の場で「他社のように欧米などの先進市場に打って出られなかったから、しかたなくインドで事業を展開していたのが幸いした」とコメントしているように、市場においても同じことがいえる。
まさに昨日の強みは今日の弱みであり、昨日の弱みは今日の強みであるというような状況が起こりつつあるといえよう。
【環境の変化を注視する】
一般的に企業戦略論の書籍などを見ると、自社の弱みを強みに変えるような戦略、つまり自社の特徴をいかした戦略がよい戦略とされるが、外部環境が変わらない状態のままだと、なかなか発想の転換というのは難しいものである。
しかしながら、環境が急激に変化する状況の場合、当事者もそれほど意識しないうちに、いつの間にか弱みが強みに変わっていることがある。
現在のような環境変化のスピードは異常だと思われるが、概して言うと、今後、環境の変化のスピードがこれまでより遅くなるということは考えにくいだろう。
上位メーカーは旧来のルールのうえでは強みを有しており有利だったかもしれないが、環境が変化した場合も、旧来の強みが強みとして維持されるとは限らない。
現在のような状況においては、下位メーカーほど環境の変化を注視しつつ、旧来の弱みが強みに変わる機会はないかという視点をもって企業活動に取り組むべきだろう
<秋山 喬>