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消費者との今後のタッチポイントのありかたは
◆富山日産モーターと関連2社、民事再生法の適用を申請。負債総額は95億円
<2008年09月14日号掲載記事>
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【日産系販社3社が民事再生法の適用を申請】
日産の系列販社、富山日産モーター(富山市、松村昌彦社長)が 9月 12日、富山地裁に民事再生法の適用を申請した。松村氏が社長を兼務する関連会社の日産サティオ石川(金沢市)と日産プリンス石川販売(同)も同日、金沢地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は 3 社合計で約 95 億円に上る。
当該グループは富山、金沢を中心に日産車を販売しているが、国内自動車需要の低迷を受け、グループ合計の 2007年度の日産車販売台数は合計約 4800台にとどまり、業績が悪化していた。
サティオの東大通り店、プリンスの野々市店、富山日産モーターの城南店の主要 3 店舗は営業を続けるが、中古車販売店を含む残る 14 店舗は顧客対応の処理が一段落した後、閉鎖する方向とみられる。閉鎖店舗の従業員については、日産の支援も得て再就職先を探す。
サティオ石川は 1987年にプリンス石川販売を買収したが、新車販売の低迷に加え、プリンス買収時の金融債務がグループ経営の重しとなっていたという。
【北陸地方という意味合い】
富山、石川の 2 県をまたがる日産系販社グループが民事再生法の適用を申請したわけだが、グループ内 3 社はいずれも松村一族が大株主となっているいわゆる地場系販社である。その内、プリンスは前述のとおり、サティオの資本が一部入る資本構成となっている。
富山県における日産系販社は富山日産モーターの他に富山日産自動車と日産サティオ富山という 2 社が存在する。富山日産自動車は地場資本と日産資本の共同出資となっており、日産サティオ富山は全国のメーカー系日産販社を統括する日産ネットワークホールディングスの 100% 出資となっている。
一方で、石川県における日産系販社は日産サティオ石川、日産プリンス石川販売のほかに石川日産自動車販売が存在し、これは地場系販社である。
整理すると、富山、石川にこれまで存在した日産系販社 6 社のうち、半分の3 社が民事再生法の適用対象となったわけであり、両県における日産車の販売は少なからぬ影響を受けるものと推測される。
また、筆者が今回のニュースに注目した理由の一つには、今回の一連の出来事が北陸地方で起こったということがある。従来、北陸地方というのは自動車の保有に対して積極的な土地柄であった。
実際、2007年 3月時点の世帯当たり保有台数を見てみると、全国平均が 1.112台であるところ、北陸 3 県でいくと富山が 1.737台で全国 2 位、石川が 1.526台で全国 11 位、福井が 1.771台で全国 1 位という結果となっている。
世帯当たり保有台数は自動車の保有密度ともいいかえることができ、なぜ、北陸地方の数値が高いかという理由については、そもそも家計収入が高く、自動車関連支出も高い、また保守的な土地柄であり、家と自動車を保有するのが当たり前というような風土があるため等、言われている。
現在の販社経営においては新車販売で稼ぐ利益よりもサービスで稼ぐ利益が大きな割合を占める。そのため、保有台数や店舗別のサービス管理台数というものが重要になるわけだが、前述の世帯当たり保有台数の数字を見てみると、北陸地方というのは販社経営には適した土地柄であるといえる。
にもかかわらず、今回のような事態が起こったことは、個社事情は勿論あるものの、市場の低迷に伴い、全国規模で販社経営が厳しい状況になってきていることを示唆している。
【今後の販売ネットワークのありかたは】
ストックである保有台数はフローである新車販売台数によって主に形成されるわけだが、昨年来のガソリン価格高騰により、これまで縮小傾向にあった国内自動車市場の落ち込みが更に加速している。
実際、2007年 1月~ 6月の上半期は登録車+軽で前年比 92.6 %(登録車は前年比 89.5 %、軽は前年比 98.3 %)という記録的な落ち込みを見せたが、2008年 1月~ 6月はそれを更に下回り、登録車+軽は前年比 98.0 %(登録車は前年比 99.1 %、軽は前年比 96.2 %)という状況となっている。
また、このような状況に際して、メーカー各社はチャネルの一本化、販社統合、店舗統合といった販売ネットワーク最適化のための施策を展開しており、それは登録車シェア約 45 %を誇るトヨタであっても例外ではない。
トヨタには「トヨタ」「トヨペット」「カローラ」「ネッツ」という 4 チャネルがあり、国内自動車メーカーで唯一、チャネル別販売方式を維持してきたが、昨今の市場環境の変化を受け、チャネル別の販売戦略を一部見直すという。
具体的には、現在 トヨタ店とトヨペット店だけで販売してきた「プリウス」を 2009年春の全面改良から量販車中心のカローラ店とネッツ店でも販売する。トヨタが単一車種を全系列店で販売するのは 1982年の製販統合以来初めてのことである。
また、地方では複数チャネルによる共同出店も進めるとのことである。
以上のような状況を踏まえると、国内での販売ネットワークのありかたそのものを見直す時期が到来しつつあるとも考えられる。また、市場の成熟化という観点でいくと、日本は世界のどの市場よりも先行しており、そういった取り組みは世界に先駆けての先行実験という側面も持つ。
販売ネットワークのありかたという視点から、自動車との販売ネットワークの比較で、よく引き合いに出されるのが家電である。街の電気屋さんからヤマダ電機等、大手家電量販店へ流通の主体がシフトしたことに伴い、消費者は他ブランド間の比較購買が可能になる等、利便性が向上した一方で、メーカーと小売、消費者の力関係も大きく変わることになったのはよく知られるところである。
ただ、販売チャネルの見直しというのは地場資本等、第三者が大いに関係する問題でもあり、急激な変化が難しく、そういう観点からも上記家電のような方向性は時期尚早であろう。
一方で、単独での販売ネットワークの最適化には限界もあり、店舗数削減等により消費者の利便性が低下し、自動車そのものの価値を下げ一層のクルマ離れを招きかねない。
【メーカー、ブランド間提携の可能性】
そういう意味では国内の販売ネットワークにおけるメーカー、ブランド間の提携というのも一つのアイデアとして検討に値するのではないだろうか。
事業者の視点でいくと店舗数を大きく減少させることなく、店舗投資、店舗維持に関わるコストをセーブできることができる一方、消費者の視点では、複数のメーカー、ブランドの商品を一度に見ることができる。但し、自社のブランドをどのように保つかといった検討が必要なのは言うまでもない。
弊社ではメールマガジン上でアンケートを取らせていただいているが、過去のアンケートにおいて消費者のニーズが高く販売台数増加が期待できる店舗形態という問いに対して、複数のメーカー、ブランドの車種を一ヶ所で見ることができる系列横断型の店舗という回答が、38 %と圧倒的な結果となった。
現在、カーシェアリングやレンタカー等の需要が増加しており、自動車の利用形態の変化が注目されているが、消費者とのタッチポイントのありかたについても今後、模索していく必要があるだろう。
<秋山 喬>