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車好き以外のホワイトスペースを取り込むためには
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『車好き以外のホワイトスペースを取り込むためには』
◆アンケート調査「女性の視点でのカー用品」、CBTカプトブレーントラスト
<2006年05月10日号掲載記事>
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主婦マーケティングを展開する CBT カプトブレーントラスト社によると、「一般的なカー用品売り場は好きですか?また、カー用品売り場にどのようなイメージを持っていますか?自由な言葉でご記入下さい」と自動車を所有する家庭の主婦、OL に質問したところ「好き」が 28 %、「嫌い」が 21 %、「どちらでもない」が 51 % という結果になったという。
「好き」派は「色々な物が揃っていて楽しい」「意外と面白いものがある」と答える一方、「嫌い」派は「ごちゃごちゃしていて見にくい」「芳香剤、ゴム、オイルなどのにおいが強い」「車の好きな男性向け」と答えた。
「どちらでもない」派は「わからないものが多い」「男の世界。マニアックな世界」という意見が見られ、『カー用品売り場がいかに女性の嗜好や視点から外れている事がわかります』と同社は分析している。
日本におけるカー用品市場はここ数年、需要が停滞し、伸びが見込めない状況が続いており、自動車用品小売業協会がまとめた統計によると、04年度の売上高は前年度比マイナス 0.2 %となっている。
この背景には、主要顧客である若年人口の減少や若者のライフスタイルの変化などが考えられ、オートバックスに代表されるカー用品チェーンでは雑貨や書籍も扱う大型店舗を展開するなど、女性やファミリー層といった新規顧客層の開拓に取り組んでいる。
しかし、今回のアンケート結果を見ても、未だカー用品店は車好きのための場所の域を脱しきれてはいないようである。
今、まさにモータリゼーションを迎えている中国等と異なり、日本は車社会として成熟の段階に入っており、自動車を所有することは多くの消費者にとって極めて一般的なこととなっている。その結果、自動車は多くの消費者にとって数ある欲しいものの中の一つに留まることとなり、これはこれまでカー用品店が対象としてきたいわゆる車好きの数が昔に比べて相対的に減少してきていることを意味している。
このような状況の中、減少しつつある車好きセグメントで競いあうのではなく、それ以外のホワイトスペース(車好き以外の自動車ユーザー)をいかに取り込むかはカー用品店に限らず、自動車に関係するビジネスを展開するプレイヤー全てにとって重要なテーマになりつつある。
そして、このようなホワイトスペースを獲得する取り組みに関しては、やはり、自動車本体を開発、生産する自動車メーカーが現在、最も進んでいるように思う。
例を挙げると、軽、コンパクトカーセグメントでは、どの企業も明らかにそれほど自動車に詳しくない女性をコアカスタマーと位置づけた商品開発を進めているし、日産などはモダンリビングというキャッチフレーズを使用し、自動車本来の走行性能とは無縁ともいえる洗練したインテリアを消費者に対し訴求している。また、トヨタの bB もクルマ型 Music Player というコンセプトで若年層を取り込もうとしている。
一方で、カー用品店を含むアフターマーケット全般は店舗、及びそこで提供される商品、サービスが車好きに焦点を当てる形で設計されたままになっており、それ以外のホワイトスペースへの対応は未だ不十分なように思える。
これはカー用品店に限った話ではなく、中古車販売店などにも該当するであろう。自動車に対してそれなりの知識を持った人でないとなかなか訪問しづらく、自動車を中古で購入することに抵抗を感じない女性も増えてきていると思われるものの、店舗設計などまだまだ女性が一人で訪問できる状態になっているところは少ないだろう。(そういった取り組みを既に始めているところもあるにはあるが。)
また、カー用品チェーン各社も冒頭で紹介したようにホワイトスペースを取り込むべく大規模店舗など様々な施策を展開してはいるものの、商品、サービスといった根本的な部分を変えていかないと、集客数は多くなっても、実際にカー用品を手に取り、購入するというところまではなかなか至らないのではないかと考える。
そんな中、ホワイトスペースを取り込むための一つの視点としては、いわゆる車好きとは異なる目線で、自動車にこだわる層を狙うというのが考えられる。自動車本体と異なりやはりカー用品の場合は、自動車を単に移動のための足として捉えている層よりは、自動車に何らかのこだわりを持つ層のほうが取り込みやすいだろう。
そういう意味では、あくまでも私見であるが、自動車を自身のファッション、ライフスタイルを構成する一つと考えている層は有望だろうと思う。この層は自分の持ち物に対するこだわりがあり、自動車もその一つと位置づける。日頃のファッション同様、自動車でも自分を表現したいと考えるだろう。
そのような観点からすると株式会社良品計画が展開する無印良品的なカー用品などはあったら面白いのではないかと思う。機能的に特に優れているというわけではないが、シンプルなデザインでさりげなくおしゃれであり、自動車本体でのインテリア重視の流れともマッチするだろう。
いずれにしても、これまで対象にしてきた顧客層と全く異なる顧客層を獲得しようと思ったら、サービスを提供する側もこれまでとは全く異なる発想、価値感で臨む必要がある。
そして、そのような全く異なる発想、価値観で臨もうとした場合、異業種とのアライアンスは有効な手段となりうるだろう。また異業種企業の持つイメージを活用することで、消費者に対して提供する新たな価値がより明確になりやすいという利点もある。
車社会として成熟してきた今こそ、業界活性化のために、業界をあげて車好き以外のホワイトスペースをいかに取り込むかを模索すべきだと考える。
<秋山 喬>