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AYAの徒然草(84) 『相手は自分の鏡なのです。』
仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。
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第 84 回 『相手は自分の鏡なのです。』
私は、会社の帰り道によく本屋さんに寄って帰ります。そこで買った本をその日寝る前に少し読み、続きを翌朝の電車の中で読み、さらにその続きを帰りの電車の中でまた読む、というのがお決まりのパターンなのですが、文庫なんかはそれで 1冊読み終えます。私は、どうしてもすぐに読みたい本はこんなふうに家の近くの本屋さんに足を運んで翌日には読み終えています。でも、そんなにすぐに読みたいという衝動に駆られていない場合は、ネットで注文します。
それでも翌日には届くので、「読みたい本を入手できず待たされる」というような事態は全くありません。
しかし、先日、こんなことがありました。いつものようにどうしてもすぐに読みたくなった本があったので会社の帰り道、家の近くの本屋さんに寄って買って帰ろうと思いました。1 つだけいつもと違うところは、読みたい本がもう絶版になっているもので、ちょっと入手困難な本だったのです。私は、店員のおねえさんに、「この本が欲しいのですがありますか?」とメモを見せながら聞いたところ、案の定、店頭にはないと言われてしまいました。しかし、「でも、もしかしたら在庫が他の店舗にあるかもしれません。ちょっと今、調べてみます。少々お待ちください。」と言われ、私は、内心、多分無いと思うので、家に帰ってネットで探して買うからいいのになぁ・・・と思いながらも、調べてもらうことにしました。
おねえさんは、一生懸命パソコンで在庫を調べてくれているのですが、結構時間が掛かっている様子で、なんだか仕事の邪魔をしてしまって悪いなぁと思い、私は途中で「もういいですよ」と断ろうかと思いました。そうしたらおねえさんは満面の笑みで、「隣の駅にある店舗に1冊在庫がありました!良かったです!早速手配してうちに転送してもらうので、ちょっと待っててください。」と言いながら電話をかけ始めたんです。私は、「えー!今から電話もしてくれるの?本当にごめんなさい。」と思っていたら、おねえさんは、「お客さん、すみませんが、明日の発送がもう間に合わないみたいなので、明後日着になりますがよろしいですか?」と、既に手配する気満々で言うのです。私は、「あ、・・・はい。ではそれでお願いします。」と本の転送をお願いしました。
もう、古本屋さんで探さないとないかなぁ・・・と思っていたぐらいなのに、新品の本が入手できるとわかり、おねえさんのおかげで私は気分良く家に帰ることができました。
そして私は 2日後に、取り寄せてもらった本を取りに行きました。店にはあのおねえさんがいたので、「あのぉ、一昨日手配をお願いした本、届いていますか?」と聞いたところ、すぐに店の奥の方から出してくれて、私は待望の本を手にすることができました。そして、そのとき、こんなことを言われたんです。「お客さん、こないだ来たとき、心底この本が欲しいって顔をしていましたよ。それに、いつもうちに来ていただいているでしょ?だから、仕事抜きでなんとか探してあげたいと思ったんですよ。うちに在庫があって本当に良かったです。」と笑顔で言うのです。
それ以降、私はあの本屋さんの前を通る度に、「あのおねえさん、今日もいるかな?」とか、「あのおねえさん、今日も忙しいのかな。」と少し気になるようになりました。
でも、私は、実はこの出来事がある前までは、あのおねえさんはいつもブスっとした仏頂面でなんだか感じの悪い人だなぁと思っていたんです。あのおねえさんがレジの担当だと、なんとなくこっちまでイヤな気持ちになっていたぐらいです。でも、本当は、私のためにあんなに親切に本を探してくれる良い人だったんだな、と新たな一面に気づいたのです。
ところで、よく、こんな話を聞いたことがありませんか?自分の精神状態が悪くイライラしていたり、ちょっとしたことでいつまでもくよくよしてしまう状態でいると、周りに見えるものもがなんでも悪く見えてきたりするものだ、という話です。逆に言うと、気持ちがいつも明るてなんでも前向きにとらえていると、自分の精神を良い状態で保てることができ、自分の周りで良いことばかりが起きているように思えるのです。しかし、精神状態が悪いと、なんでも悲観的に考えて、全てが自分にとって悪いことのように思えてきてしまうのです。すなわち、同じことがらでも、自分の精神状態次第でものごとの「とらえ方」が良くも悪くも変わる、ということです。
私は、本屋さんのおねえさんの対応も、これに似たようなことなのかなぁと思ったんです。きっと、あのおねえさん、元々は明るく親切でとても良い人なんだと思います。でも、私が仕事帰りで疲れていて、私の方がイライラしながら機嫌悪そうにレジに並んでいたので、そのせいでおねえさんも同じように機嫌が悪く怖い顔になっていたんだと思うのです。そして、前回は私が真剣に本を探していたから、おねえさんも丁寧で親切な対応をしてくれたんだと思うのです。
つまり、日常生活の中で自分が接する人を基準にして、「今日は明るく良い人にたくさん会ったな」と思えることができれば、「その日は自分もプラス思考で明るく過ごせた」ということなのかなぁと思うんです。自分が接する相手は、自分の精神状態の「鏡」なんですね。これって、とても簡単にできる自分の精神状態のチェック方法だと思うんです。また、そう思って人と接していると、自分の機嫌が周りに影響を及ぼしていることも実感できますよね。
あの本屋さんのおねえさんが、これからも私に明るく親切に接してくれるように、私も自分の気持ちをいつも穏やかに保つことを心掛けながら毎日過ごしたいなぁと思います。
<佐藤 彩子>