自動車業界ライブラリ > コラム > くるま解体新書第8弾『求められる部品メーカー像(2)』
くるま解体新書第8弾『求められる部品メーカー像(2)』
弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。
アビームコンサルティング ウェブサイト
http://www.abeam.com/jp/
第 8 弾は、弊社副社長の秋山喬が、求められる部品メーカー像について 5 週に渡って紹介する。今回はその第2回にあたる。
——————————————————————————–
第8弾『求められる部品メーカー像(2)』
(日刊工業新聞 2005年02月16日掲載記事)
部品メーカーと自動車メーカーの関係において、進展してきた主要な変化を概観すると、従来、日系自動車メーカーは系列取引を重視した部品調達を進めてきたが、トヨタ、ホンダが、これまで通り系列を維持していく一方で、日産、マツダ、三菱自動車は事業再構築の過程において系列の枠にとらわれない調達を進めており、結果として自動車メーカーと部品メーカーとの間での取引のオープン化が進行している。
また、業界全体として部品の外注化、モジュール化、開発機能のアウトソースといった動きは今後も進展していくことが予想される。加えて、ITS(Intelligent Transport Systems)、燃料電池といった次世代の技術開発においても、部品レベルでの技術革新が求められている。一方、自動車メーカーは中国を始めとする新興市場攻略に向けて、海外での現地生産を推進しており、部品メーカー側でもグローバルレベルでの部品供給が求められている。
このような状況の中、部品メーカーは自動車メーカーに対し、従来通りの QCDに留まらない新たな価値を提供し、より重要な役割を果たすことが望まれていることは間違いない。そういった観点から、自動車部品メーカーが現在注力して行なっていると思われることと、今後いっそう強化すべきことに関して自動車メーカーに質問した。
現在、注力して行っていることとして回答が多かった「ブランド力・商品力を高める先端技術力や R&D」は、今後いっそう強化すべきことという質問でも最も回答が多い結果となり、今以上に部品メーカーに対しては開発力の強化が求められていくと言える。
また、今後いっそう強化すべきとの回答が、現在注力して行なっているとの回答を大きく下回っている(即ち、今後の期待度が現在より低い)ものとしては「グローバル展開を支えるグローバルな供給力や設備投資」、「既存製品・技術の QCD を高めるための主として生産技術」が挙げられる。
グローバル供給力がここに挙げられるのは少し意外な感もあるが、現在拡大を続ける中国市場の影響等で過熱気味となっている部品メーカーの海外進出が、部品分野別に見た場合の格差はあるものの、全体としては一旦、落ち着く形となるかもしれない。
逆に、今後いっそう強化すべきとの回答が、現在注力して行なっているとの回答を大きく上回っているものとしては「自動車メーカーのリスク負担を軽減できるリスクテーキング力」が挙げられる。
これは単なる取り纏め役としてのシステム、モジュールサプライヤーでなく、従来自動車メーカーが行なっていた業務、役割(システムの全体最適の視点、ティア 2 以下の部品の技術・性能に関する理解、部品メーカーの QCD マネジメント、PL 責任、開発費負担等)を、責任をもってアウトソースすることができる真のパートナーが求められているということを示唆している。
<秋山 喬>