ニッセイ同和損保、自動車販社向け総合経営支援ツールを取…

◆ニッセイ同和損保、自動車販社向け総合経営支援ツールを取引先に無償提供
経営分析と業界の課題解決などを支援する「ディーラー経営サポートくん」

<2005年03月04日号掲載記事>

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ニッセイ同和損害保険(株)は、業界初となる自動車ディーラー向け総合経営支援ツール「ディーラー経営サポートくん」を開発。今年 3月より取引先の自動車ディーラー代理店に対し無料で提供する。

同ツールは、(1)経営生産性向上支援、(2)顧客とのコミュニケーション強化支援、(3)業務効率化支援、(4)社員教育支援―――の 4 つの観点から、自動車ディーラーが抱える経営課題の分析と課題解決を総合的にサポートするというもの。

ディーラーは保険の代理店を兼ねているケースが多く、新車販売時に自動車保険(任意保険)を車両に付帯して販売することにより代理店販売手数料を獲得している。これはディーラーにとっては、年に一度の契約更新時の定期的収入が見込めるものである。

一方、損害保険会社は収益性を強化する為、業界再編が進んでおり、個社レベルでの合理化も進めているが、依然として自動車保険(任意、強制)は各社の注力セグメントとなっている。

今回のニュースにある「ディーラー経営サポートくん」も数多くのディーラーを保険の代理店として囲いこむために開発されたツールだと思われる。

しかし、このようなディーラーの経営をサポートするツールを損害保険会社が開発し、無償で提供するという点には多少違和感もある。むしろ自動車メーカー側でこの種のサポートを提供してもよさそうである。

自動車メーカーにとってディーラーは商品の流通チャネルと位置付けられる。世の中にある様々な商品、例えば家電製品など、が様々なチャネルを通じて消費者の元に届くのと比較すると、ディーラーは新車流通の唯一のチャネルともいえ、その意味で重要な顧客接点である。(ウェブを通じての販売もあるものの、まだまだ一般的にはなっていない。)
ゆえに、自動車メーカーはディーラーに対し、販促ツールの提供やインセンティブなど様々な販売サポートを行なっており、近年は顧客管理の共有化等も推進されつつあるが、今回のニュースにあるような経営面でのサポート活動も必要だろう。ディーラー自体の経営状況が芳しくないと、新車販売を増加させるための投資なども捻出ができないこととなり、結果として新車販売台数も落ち込む結果になりかねない。

但し、数年前、複数の日系自動車メーカーの事業再構築時に批判があったような自動車メーカーとディーラーの馴れ合いの構図に回帰した方が良い、といっている訳ではない。あくまでも自動車メーカーはディーラーの自立、自活をサポートするという立場であるべきである。

そのための施策としては、例えば、自社の系列ディーラーの中で、経営状態がよく、販売台数も好調なディーラーがあったならば、それをベストプラクティスとしてメーカーが取り纏めをする形で、フォーマット化し、それを系列内の他ディーラーにも展開していくということも考えられるだろう。

自動車の製造業者であるメーカーと販売事業者であるディーラーではビジネスモデルは異なるため、メーカーからは経営面にまで口出ししにくいということもあるかもしれないが、重要性を鑑みてもサポートしていく価値、余地はあるのではなだろうか。

また、違った観点からもディーラーの存在が注目されている。それは、現在、新聞の紙面を賑わせている金融の規制緩和における「銀行代理店」としてのものである。

これは銀行の委託を受けて預金や融資の仲介をする「銀行代理店」業務を一般企業にも解禁するというものであり、今は銀行の 100 %子会社だけが代理店業務を手がけられるが、さまざまな形の店舗を認めて銀行、利用者双方の利益につなげるというものである。その中で自動車ディーラーは銀行の自動車ローンの代理店という役回りである。

現在、ディーラーが取り扱っている新車ローンの多くは自動車メーカー系列金融会社の商品であるが、金利では勿論、消費者から直接資金を調達する銀行系のほうが安く設定できる。ディーラーの中には、そういったローン商品に魅力を感じ、取り扱いたいと考えるところも出てくるかもしれない。

また、これまで、自動車ローンという商品を持ちながらも、自動車購買客との接点が弱かったため、商品力を活かしきれていなかった銀行は今後、代理店としてディーラーの取り込みを進めていくのは間違いない。

無論、自動車メーカー系金融会社が新車ローンという意味では依然として有利な立場におり、ディーラーに対しても他社の商品を取り扱わないように一定の影響力を行使してくることも考えられる。

いずれにしても、自動車を購入する顧客との接点を実際に有するディーラーが、今後、メーカーのみならず様々な分野から重要視されてくるのは間違いなさそうである。

<秋山 喬>