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三菱商事、ITS/DSRC技術を用いた異業種間連繋ロードサイド…
◆三菱商事、ITS/DSRC技術を用いた異業種間連繋ロードサイドサービスを開始
<2004年11月22日号掲載記事>
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私事で恐縮だが、先日車で旅行に行き料金所にて渋滞に巻き込まれた。ETC を装着していない我々をよそに ETC を 搭載している車両はすいすいと料金所を通過していった。その際、我々同様に渋滞に巻き込まれていた車両の大半にとって ETC は便利で魅力的なものに映っただろう。
だが、料金所を通過してしまうと大抵そんなことは忘れてしまうように、年に 10 回未満の旅行でのみそういった渋滞に遭遇する人にとって、ETC はあったら便利で欲しいけれども実際にお金を払ってまで買うまでには至らないというような商品ではないだろうかと思われる。よく言うウオンツではあるがニーズではない状態である。
定期的に ETC の利用状況をモニターしている国土交通省道路局によると 11月 5日~ 11月 11日の間の調査では利用状況の全国平均の割合は 22.6 %となっている。
それほど普及しているのかと驚いたがそうではなかった。この利用状況の数字は調査期間中に、全国の料金所を通過した車両のうち ETC を利用して通過した車両の割合を示した数字であった。
国土交通省道路局の発表では上記の利用状況とともに普及台数というものも発表されておりその数字は約 410 万台とある。日本における自動車の保有台数が 7000 万台超ということを考えると、まだまだ台数的に見ると普及は進んでいないということになる。
ETC 導入の効果としては渋滞の緩和は勿論、料金支払のためのストップ&ゴーを繰り返さなくても良くなるため環境に優しい、また料金を支払うための幅寄せや窓の開閉が不要なため快適に通過できるといったことがよく言われているが、これらは果たして一般消費者に十分訴求できるものとなっているだろうか。
そもそも主たる目的は渋滞の緩和なのだから、料金所を頻繁に通過する車両のみが対象で何も日本国内の全ての車両を対象にしているわけではないのだとと言われてしまえばそれまでだが、ETC の機器をつくるメーカーなどにしたら、より多くの台数を販売できたほうがよいに決まっている。
そしてより多くの車両に対し販売しようと考えたら大半の消費者が感じているウオンツをニーズに変える必要があるだろう。
そんな折、今回のニュースが目に付いた。
三菱商事の全額出資子会社である「ITS 事業企画」は、多機能型 ETC 車載器を搭載し、街中でも ITS 技術を用いた新しい異業種間連繋ロードサイドサービス (IBA サービス) を稼動する。
第 1 弾としてサービスを提供する店舗は、「日本ケンタッキー・フライド・チキン」の 4 店舗 (ドライブスルー利用時にお得な情報を携帯メールでお届け。キャッシュレス決済サービスは未対応)、「ダイヤモンドシティ」の駐車場のハンズフリー&キャッシュレス (駐車料金もお得に)、「出光興産」の新大宮バイパス戸田SS、「すかいらーくグループ」など。
これはいわば ETC の活躍の場を高速の料金所だけでなく街中へも広げようという試みであり、それにより普段それほど高速の料金所を利用しない人に対しても利便性を訴求することが可能となる。これまで高速を頻繁に利用する人が主たる販売ターゲットであったとすれば、これはその周辺のホワイトスペースを埋める、といったことになるであろう。確かに街中の様々な場面で利用する機会が出てくるのであれば、必要性を感じる人もこれまでより増加する可能性がある。
そして街中の様々な場面で利用できるようにするにはどうしても業種横断的な働きかけが必要となるため、それを全業種的なネットワークを持つ総合商社が手がけるのももっともといえる。
また、上記の試みと並行する形で、一部高級機種では既に進んでいるカーナビとの一体化、連携を更に推し進めていくのも効果的ではないかと考えられる。
そうすることでカーナビで飲食店、ガソリンスタンドといった各種店舗や駐車場を探しつつ、キャッシングは ETC で行なうということも可能となり、消費者に対して利便性を複合的に訴えることができるようになる。
このように今後の展開は様々考えられるが、いずれにしても新たな技術を利用していかに消費者に対し価値、利便性を訴えるか、というのが重要なポイントとなるであろう。
<秋山 喬>