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カヤバ工業、自社ブランドのショックアブソーバーを拡販&…
◆カヤバ工業、自社ブランドのショックアブソーバーを拡販&
カルソニックカンセイ、フランスに開発拠点を新設
<2004年 10月 21日、22日(昼)号掲載記事>
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カヤバ工業は 2005年 1月から、メルセデスベンツ、ジャガー、BMW など高級輸入車に専用に取り付ける自社ブランドのショックアブソーバー(緩衝器)を市販する。後付け緩衝器の高級品を普及させてブランド認知度を高め、主力である OEM (相手先ブランドによる生産)供給の拡大につなげる。
一方、カルソニックカンセイは海外での研究開発体制を強化する。2005年をメドにフランスに開発拠点を新設、同社の主力取引先である日産自動車が提携する仏ルノーへの売り込みを強化する。11月に開設する中国拠点も人員を増強する計画。生産に加えて開発も現地化を加速することで、各地域の自動車メーカーのニーズに即応できる商品開発を進める。
今回紹介したカヤバ工業、カルソニックカンセイのニュースはどちらも自動車メーカーへの OEM 供給を目的とした戦略的施策と位置付けることができる。
カヤバ工業の場合はアフターマーケット向けの製品でブランドを確立し、それを武器にして自動車メーカーへ売り込もうとするものであるし、カルソニックカンセイの場合は自動車メーカーの主要開発機能がある本国の近辺に、開発機能を持つことで自動車メーカーへの売り込みの強化を狙ったものである。この場合、本国で開発した世界戦略車への採用が決まれば、その後の世界展開に合わせてグローバルレベルでの受注のチャンスが広がる。
では上記以外で、自動車メーカーへの納入を実現させるための戦略的施策としては他にどういったものが考えられるだろうか。
当然のことながら、正攻法で技術、製品開発を自社内で行い、自動車メーカーに対し売り込みを行なうという方法がまず想定される。
また、資金面で余裕がある部品メーカーなどの場合は、ターゲットとしている自動車メーカーに既に何らかの製品を納入している部品メーカーを買収した上で、そのルートを活かし新たな製品の供給につなげるというのも考えられる選択肢の一つであろう。欧米ではこのような部品メーカー間の再編事例が頻繁に見受けられる。
日本においても 2000年前後、自動車メーカーの再編の影響を受ける形で、部品メーカーの再編も進んだが、今後もそういったケースは増加するものと思われる。
一般的に、自動車業界における部品納入は競争環境が厳しく、自動車メーカーからのコストダウン要求も激しい。それは自動車メーカーが圧倒的な交渉力を握り、裾野に広がる多数の部品メーカーから部品を購買するという業界の構造に起因している。そして、その業界の構造は自動車自体の製品特性による部分が大きい。
それはつまり自動車が相当数の部品から構成されるということと、摺り合せ型のプロダクトであるということである。その商品特性ゆえに、その取り纏め、摺り合せを行なう部分で最も付加価値が増加し、その過程を担当する自動車メーカーの交渉力が強まったのである。
そういった環境の中で、自動車メーカーに供給するため上記のような施策が展開されているわけだが、これはあくまで既存の自動車業界の構造上での施策であるということに留意する必要がある。
現在、外部環境の変化、技術の進展により自動車というプロダクト自体が大きく変わりつつある。環境対応への必要性が高まりハイブリッド車等、新たな駆動方式が採用され始めたのに加え、快適性、安全性向上を目的に車両の電子化も進んでいる。一方で、これまで車両単体としてのプロダクトであった自動車がテレマティクスによりネットワークの一部と位置付けられるようになりつつある。
そして前述したように、プロダクトの変化は業界構造の変化を引き起こす。実際、ハイテクメーカー、通信事業者等も自動車業界とのつながりを深めており構造変化の胎動が既に見られる。
今後、部品メーカーが施策を展開していく際には、そういった業界構造の変化を予測した施策、例えば電子、通信分野で技術を有するベンチャー企業を買収する等、を展開していくべきであろう。
<秋山 喬>