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「アフターマーケットの成功者たち」『第 15回 オークネット』
国内製造業の屋台骨たる自動車産業。国内 11 社の自動車メーカーの動向は毎日紙面を賑わしている。
しかし、消費者にとって、より身近な存在であるはずの自動車流通業界のプレーヤーについては、あまり多く知られていないのも事実である。
群雄割拠の国内の自動車流通・サービス市場において活躍する会社・人物を、この業界に精通する第一人者として業界内外で知られる寺澤寧史が、知られざる事実とともに紹介する。
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第 15 回『オークネット』
この 10年間でオートオークション市場への出品台数は倍増し、2004年暦年の総出品台数は 682 万台まで拡大している。2005年は 700 万台到達はほぼ間違いないものと業界関係者は想定している。
今回ご紹介するのは、衛星通信を利用したバーチャルオートオークションに特化し、業界の先端を走り続けるオークネットである。
オークネットは、創業 16年目の 2000年 5月に東証 1 部に上場を果たしている。
オークネットは 7,000 社余の取引会員数を有しており、一度でも利用したことがあるという自動車関連事業者の方も多いのではないかと思われる。
【オークネットのビジネスモデル】
オークネットは、1985年に設立された衛星通信を利用したオークション事業者のパイオニアである。現車会場のように出品車を会場に持ち込むのではなく、中古車販売店の展示場で出品車の検査を行ない、検査結果と出品車の映像をオークネットのホストに取り込み、その情報を通信衛星に電送し、衛星から会員各社の専用端末に事前に送信し、バーチャルでオークションを実施するという仕組みになっている。
オークネットの課金システムは、出品者から徴収する出品料、成約料と落札者から徴収する落札料と会員が負担する専用端末使用料から成っている。 各料金体系は以下の通りである。
オークネット TVAA 手数料
. 出品料 成約料 落札料
軽自動車 5,000 円 7,000 円 7,000 円
コンパクト車 6,500 円 8,000 円 8,000 円
国産車 7,500 円 8,000 円 8,000 円
輸入車 9,500 円 9,000 円 9,000 円
リユース車 3,000 円 9,800 円 8,000 円
TVAA 会費 39,500 円/月額(ライブ中継 1 メンバーシップ 5,000 円が TVAA会費に加算)
TVAA 専用端末周辺機器購入費 55 万円
ライブ中継手数料・・中継料(提携先オークション会社) 100 円/台、
落札料 7,000 円
Web 入札手数料・・・落札料 18,500 円、Web 会費(1 メンバーあたり)
6,800 円/月
autoBank System ・・ソフト代金 72 万円、情報料 9,800 円/月
2004年のセグメント別売上高、営業利益を見ると TVAA が 76 億円(*26 億円)、ネットワーク AA が 40 億円(*9 億円)、情報販売が 9 億円(*△0.6 億円)とこの 3 セグメントで全売上高の 9 割を占めている。本業ともいうべき TVAA の売上高の減少をネットワーク AA 会場の拡大でカバーしている図式となっている。
注;* 営業利益
オークネットの業績推移
. 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 当期純利益(百万円)
2004年 12月期 13,597 1,722 671
2003年 12月期 13,836 1,696 743
2002年 12月期 13,613 1,650 407
2001年 12月期 13,696 1,949 971
2000年 12月期 12,815 2,948 1,541
出品台数の推移
. TVAA出品台数 ライブ中継台数
2004年 12月期 295,660 1,957,209
2003年 12月期 282,629 1,324,290
2002年 12月期 315,200 804,345
2001年 12月期 377,097 348,036
2000年 12月期 391,342 2,948
【顧客に対する価値提供:Customer】
オークネットの衛星通信を利用した TVAA の顧客である中古車販売業者への価値提供は次の 4 つに大別できる。
1)地理的制約要因の除去
バーチャルオークションの特性として、従来の現車オークションのような地理的な制約を受けることなく、どこからでも出品、落札が可能であり全国の中古車販売事業者の参加を可能とした。
2)コスト削減の実現
従来の現車オークションでは、出品車両をオークション会場まで搬入する必要があり輸送コストが掛かり、流札すると車両引取の輸送コストが発生していた。
バーチャルオークションでは、自社の展示場から車の移動が起こらないため輸送コストが掛からないという利点が生じた。またオークション場まで出向く経費を削減することも可能とした。
3)商談機会の最大化
バーチャルオークションでは、オークション開催当日まで展示販売することが可能となり商談に集中できる時間の提供に繋がった。
4)成約確率の向上
落札者にとっては、エンドユーザーが希望する車種、購入価格を事前に打ち合わせしておくことで、バーチャルオークションに出品されている中古車の中からエンドユーザーが希望する車種の選択が可能となることから、成約確率を高めることが可能となった。
【競合現車会場に対する優位性:Competitor】
オークネットのバーチャルオークションは現車オークション会場と比較すると、次の点で優位性があるものと考えられる。
1)オークション開設コスト
現在では、3,000台規模のオークション会場の建設コストは最低でも 30 ~ 40 億円かかるとされており、土地、建物、設備などへの投資が不要であるバーチャルオークションの方がコストパフォーマンスに優れているものと考えられる。
2)オークション開設までの時間
現在のオークション場は大型化しており、用地も 4~ 5 万坪という広大なものとなっている。用地確保、地域住民の合意の取り付け、開発許可申請から認可がおり、オークション会場の建設、開業までのタイムスパンは数年がかりとなり、バーチャルオークションのシステム開発にどれ程時間をかけるかにもよるが、総じて現車オークション場開設の方が時間がかかるものと考えられる。
3)フレキシビリティ
現車オークションの場合、土地という物理的制約をうけ短期間で次から次へとオークション会場を増やすフレキシビリティに欠けている。その点ではバーチャルオークションは場所の制約を受けず、情報処理量の増大に伴い利用回線数の拡大、チャネル数を追加することで比較的容易に拡張が可能といえる。
【オークネットの強み:Company】
バーチャルオークション事業を本業とするオークネットの強みは、上記の優位性の 1)~ 3)に加えて、高額車両=高年式の国産車、輸入車分野で絶対的な強みを維持し続けていることである。
2004年の平均落札価格は 146 万円と全国 150 会場の中で最高落札価格のオークション会社となっている。
もとより高年式車であれば、中古車そのものの品質レベルが高く、現車を見ないでも落札できるという安心感が中古車販売業者の考えにある。高額車両にはエンドユーザーの購買と紐付いている可能性も高く、この 2 つの分野でオークネットが高成約率を維持できている要因となっている。
一方でオークションのボリュームゾーンを形成している中年式車以降の車両では、現車会場の独擅場を許している。
これは、未だに中古車販売業者にしてみると、どこか不具合が発生していると直感し、現車を触ってみる、臭いをかいで見るなどを通して確認する作業を必要としているためであると思われる。
この辺りがモノを見ないで買うことの限界といえるのかも知れない。
【創業当初のとんがりをどこで生かすのか】
オークネットのこれまでの事業戦略から学べることは何であろうか。 3C (Customer、Competitor、Company)分析からは、オークネットの比較優位性があるように思われるが、実際の新車市場の成熟化や平均車齢が伸長し続けていることなど外部環境要因を考慮すると、高額車両でのオークネットの優位性は維持できる可能性は高いものの、得意とする高額車両の出品台数そのものが年々先細りをしていくことは目に見えている。
その打開策として、オークネットでは、ライブオークションでの平均落札単価が 56 万円と中・低年式車の成約が活発なことから中期計画で中・低価格車を対象とした第二オークション創設を打ち出している。
計画では、2007年 6 万台、2010年には 13 万台まで拡大するとしているが、筆者としてはやや残念である。
オークネット自身が、「今までの常識を打破し、常にイノベーションに挑戦し続ける」ことであるならば、第二オークション創設は現車会場に擦り寄ることよりも、独自路線を徹底的に追求して欲しいものである。
これまでに蓄積した中古車査定情報をもとに将来価値の算定システム(残価システム)の開発や中古車取引における先物市場の創設など、オークネットにしか出来ない事業を開拓していくことこそが、期待されているのではないだろうか。
【お詫びと訂正】
上記掲載記事で誤解を招く表現がありました。
関係者の方にご迷惑をお掛けしましたことを紙上を借りてお詫び申し上げます。
掲載記事を以下のように訂正させて頂きます。
ライブ中継手数料 中継料(提携先オークション会社)
100 円 /台→ 100 円/台(接続会場によって異なる)
落札料 7,000 円→正会員 9,500 円、準会員 12,000 円
AutoBank System
ソフト代金 72 万円、情報料 9,800 円/月
→導入費用 7 万円、月額費用 29,800 円
<寺澤 寧史>