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住商アビーム自動車総研、自動車メーカー社員を対象にした部品メーカーへの意識調査を実施 ~部品メーカーの新たな課題は自動車メーカーに対する「リスク負担力」~
株式会社住商アビーム自動車総合研究所(以下:住商アビーム自動車総研、本社:東京都中央区、代表取締役社長:加藤真一)は、自動車メーカー勤務者を対象に自動車部品業界に関する調査を実施しました。これにより、自動車メーカー側は、部品メーカーに対し、新たに PL 責任や開発費などの「リスク負担」の軽減を望んでいることがわかりました。
今回の調査は、自社で発行するメールマガジン「住商アビーム Auto Business Insight」(読者数 35 千人)を通じて行ったもので、103 名から回答を得ました。
※回答者の属性は、役職別には、一般社員 (60%)、管理職 (25%)、専門職(15%)。職種別には、開発系 (47%)、製造系(16%)、事務系(8%)、企画系(7%)、営業系(7%)、購買系(3%)、その他(12%)と開発系が約半数を占める結果となりました。
1.自動車メーカーが部品メーカーに引き続き期待しているのは開発力の強化 - 新たな課題としてはリスクテーキング力
今回の調査によると、部品メーカーには今後も引き続き「開発力」の強化が求められています。現在部品メーカーが注力して行っている上位 3 項目が、①グローバル展開を支えるグローバルな供給力強化や設備投資(58.3%)、②ブランド力・商品力を高める先端技術力や R&D (52.4%)、③既存製品・技術の QCD (品質・コスト・納期)を高めるための主として生産技術(41.7%)であったのに対し、今後いっそう強化すべきことの上位 3 項目は ①ブランド力・商品力を高める先端技術力や R&D (53.4%)、②グローバル展開を支えるグローバルな供給力強化や設備投資(41.7%)、③製品・技術を束ねるマネジメント力・システム構築力(34.0%)となりました。
また、単なる取りまとめ役としてのシステム、モジュールサプライヤーでなく、従来自動車メーカーが行なっていた業務、役割(システムの全体最適の視点、ティア 2 以下の部品の技術・性能に関する理解、部品メーカーのQCDマネジメント、PL 責任、開発費負担等)を、責任をもってアウトソースすることができる真のパートナーが求められています。今回の調査でも、「自動車メーカーのリスク負担を軽減できるリスクテーキング力」に関し、今後いっそう強化すべきとの回答(23.3 %)が、現在注力して行なっているとの回答(8.7 %)を大きく上回り、部品メーカーへの課題として、リスク負担力の強化を求めていることがわかりました。
一方で、「製品・技術を束ねるマネジメント能力・システム構築力」は今後強化すべき項目としてそれほど伸びを示しませんでした。
図1.自動車部品メーカーが現在注力して行なっていると思われることと
今後いっそう強化すべきこと(複数回答)(図をクリックで拡大)
2. 生産する品目により、求められるリソースの種類と変化の方向性が異なる。
各自動車部品分野を、「成長性」と「開発力要件」という 2 つの観点から検証し、4 つのグループに分類しました。
図2.成長性と開発力要件(図をクリックで拡大)
・ 縦軸は、成長指数(「成長が見込まれない」と回答した人数に対する、「成長が見込まれる」と回答した人数の割合)の偏差値。中央線が平均値。9 つの分野の平均値を基準として、その高低を2つに選別した。
・ 横軸は、「開発力強化が必要」と回答した人数の偏差値。中央線が平均値。「開発力強化が必要」と回答した人数を指標とし、9つの分野の平均値を基準として、その高低を2つに選別した。
・ 円の大きさは付加価値指数。今後、「コスト競争力の強化が必要」と回答した人数に対する、「製品の機能・性能の向上が必要」と回答した人数の割合であ り、その値が 1 よりも大きければその部品分野においては機能・性能重視の傾向が強く、1 よりも小さければコスト重視の傾向が強いということになる。
グループ1(駆動・伝動・操縦部品、電装部品)
成長性と開発力要件が共に高く、成長リソースと開発リソースの双方が必要とされる分野。該当する部品分野においては製品の機能・性能とコスト競争力のバランスが重視されます。(高い、傾向が強い←● ○→低い、傾向が弱い)
グループ2(エンジン部品、懸架・制動部品)
成長性は低いが開発力要件が高く、成長リソースよりも開発リソースが必要とされる分野。該当する部品分野においては高付加価値なものが中心となり、機能・性能の向上が強く求められます。
グループ3(素材)
成長性は高いが開発力要件は低く、開発リソースよりも成長リソースが必要とされる分野。該当する部品分野においてはコスト競争力が重視されます。
グループ4(内装部品、外装部品、用品、金型・治具)
成長性と開発力要件がともに低く、成長リソースと開発リソースの双方がそれほど必要とされない分野。該当する部品分野においてはコスト競争力が重視されます。
上記グループ別に、自動車メーカーとの関係の変化(外注・脱系列化、システム化・モジュール化)、中国進出・中国調達の進展、業界構造の変化といった、自動車部品業界で起こりつつある変化における今後の傾向を質問したところ、下表の通りとなりました。
開発リソース需要が高いグループ 1、グループ 2 の部品分野では業界構造変化の可能性も出てきています。また、コスト競争力が重視されるグループ4 (金型・治具除く)や、グループ 1 の電装部品は外注化、モジュール化、中国進出、中国調達が進展する傾向にあります。一方、グループ 3 の素材では成長のためのリソースとして外部資金の導入も検討されている状況が見受けられます。
図3.自動車部品業界の変化における各部品分野別の傾向(図をクリックで拡大)
3. 自動車部品メーカー、投資ファンドはグループ別の戦略課題を踏まえた対応が求められる。
自動車メーカーからの要求の変化は、自動車部品業界内のポジショニングを変更できるチャンスでもあります。環境変化を踏まえて、有効と思われる戦略的方向性をグループ別に示すと以下の通りになります。
グループ1(駆動・伝動・操縦部品、電装部品)
設備投資等の成長リソースと、製品の効用向上のための開発リソースがともに必要とされるため、最も投資負担とリスクの大きい部品分野です。しかも付加価値指数は 1 前後で機能性向上と同時にコスト削減も要求されます。
投資負担やリスクテーキングに見合う収益性を確保するためには、水平統合による規模の経済や利益率の高い市場に絞った海外進出が戦略課題です。技術革新が速い電装部品は、システム化・モジュール化や垂直統合も検討課題です。
グループ2(エンジン部品、懸架・制動部品)
成長リソースよりも開発リソースが必要とされ、機能・性能が重視される部品分野です。部品分野自体の成長性は低い一方、モジュール化や外注化によるコストダウンも進めにくい領域なので、収益確保のためには付加価値向上に見合う価格設定が不可欠で、それが可能な交渉ポジションの構築が必要です。
グループ3(素材)
大きな開発リソースは不要ながら、設備投資等の成長リソースが必要な部品分野です。付加価値指数は 1 を割っており、コスト削減圧力が強い業界ですが、システム化・モジュール化が馴染みにくく海外進出の期待度も低いため、成長リソース投入の回収効率の向上と、機能・性能向上による競争のルール変更の試みが課題です。
グループ4(内装部品、外装部品、用品、金型・治具)
成長リソースと開発リソースの双方がそれほど必要とされませんが、コスト競争力が重視されます。海外生産や海外調達、水平統合や垂直統合は重要な戦略課題です。比較的付加価値指数の高い用品と、モジュール化期待の高い内装部品は、研究開発力の強化やモジュール化を機に高機能化、高性能化を図って、競争のルール変更を検討する必要があります。システム化・モジュール化に馴染みにくく、規模の経済も働きにくい外装部品、金型・治具については、海外調達や業務プロセスの再構築によるコスト削減が必須の課題です。
自動車業界外の投資家は、グループごとに投資のオポチュニティ、戦略課題が異なることを認識した上で、投入するリソースの性格付け、回収の早さ、水準、方法を見極めて投資判断をすることが肝要と思われます。
住商アビーム自動車総合研究所について
住商アビーム自動車総合研究所は、住友商事とアビーム コンサルティングが共同で設立した自動車業界特化型コンサルティングファームです。500 社以上の自動車部品メーカーとのビジネスネットワーク、自前の自動車ディーラー 90 店舗の経営を始めとする自動車業界で展開している幅広いビジネスモデルにおいて住商が培った自動車業界の知見に、アビームのコンサルティングノウハウを加えて、「経営と現場」、「業界と市場」の双方を結ぶ視点から、業界各社の自動車固有の課題にソリューションを提供しています。
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