Jエナジー、「行ってみたくなる」新コンセプト店舗を本格…

Jエナジー、「行ってみたくなる」新コンセプト店舗を本格展開へ

昨年から一部のJOMOステーションで新コンセプト店舗「Value StYleステー ション」を4月から本格展開し、3年後を目途として1000店舗程度に拡大へ。

外部のディレクターに、2003年の日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」でヒットメーカー部門賞を受賞した柴田陽子氏を起用。「行ってみたくなる」「入りたくなる」「また来たくなる」をコンセプトとし、特に20代から30代の女性に支持されることを主眼に、スタイリッシュで統一感のある店舗デザインや内外装を取り入れる。セールスルームでは家具や香りで心地よい安らぎを演出。無料のマッサージチェアなども設置する。

<2005年03月28日号掲載記事>

——————————————————————————–

ジャパンエナジーは、系列のJOMOステーションを新コンセプト「Value Style」店舗に転換し、2008年に 1,000 店舗まで拡大することを表明した。

コンセプトは「行ってみたくなる」 SS であり、系列 SS の 1/4 を新コンセプト店舗に変える大胆な試みである。

【ジャパンエナジーの事情】

ジャパンエナジーによるこうした思い切った打ち手の背景には、石油元売業界において同社が売上 6 位と必ずしも高水準を維持出来ていない状況下で、傘下 SS の店舗数を絞り込む必然性と店舗当りの売上高(ガソリン販売量とほぼ比例)を維持・増加していく必然性が挙げられれる。

【元売業界企業規模ランキング】

2003年度の国内ガソリン販売量は約 6,200 万 kl(前年対比 2.7 増) であり、主要石油元売各社の販売状況は以下の通りである。

.                        ガソリン販売量  シェア 傘下SS拠点数 1拠点販売量
1.新日本石油(ENEOS)    1,407万kl  22.7%  12,036  1,169kl
2.エクソンモービルグループ  1,190万kl  19.2% 7,049   1,688kl
3.昭和シェル石油                874万kl  14.1%  5,274   1,657kl
4.出光興産                        855万kl  13.8%  5,500   1,554kl
5.コスモ石油                      682万kl  11.0%  5,042  1,352kl
6.ジャパンエナジー              620万kl  10.0% 4,400  1,409kl
7.その他              572万kl  9.2%  10,766    432kl

出所:燃料油脂新聞社、平成16年3月調べ

ご覧戴ける通り、業界 6 位のジャパンエナジーは、1 位の新日本石油に較べて実にガソリン販売量で 2/5、SS 拠点数では 1/3 の規模に留まっている。

通常の企業努力により同社がガソリン販売量を増やしていくことは、1974年以降ガソリン需要そのものは拡大しつづけていることを考えると「可能」であると考えるが、市場成長率を上回るスピードでの成長を実現する為には新規出店賀必要となる。しかし、これを続けるだけの企業体力は、日本国全体での石油精製能力そのものが 2 割程度過剰とされる事実に象徴されるように、同社にとっては難しい。

そのため、ジャパンエナジーでは傘下 SS 拠点数を絞り込むことでコストの最小化を図りつつ、一拠点当りのガソリン販売量を維持・拡大する必要に迫られている。

【SS業界の収益構造】

上記では、ガソリンの販売量のみに注目をしたが、実は SS の売上の半分はガソリン以外の製品・サービスで占められている。

しかもガソリンの粗利益は約 3 割に止まっており、ガソリン以外の粗利益に占める割合は 7 割にも達している。

即ち、SS 業界の定説ではあるが油外取引の拡大に注力しないと SS 経営の安定化が困難なことを示している。

【油外取引拡大には、車から降りてもらうことが重要】

これまでの SS 店舗は、ガソリンがなくなったから給油しにいくというもので、SS での滞留時間も数分、洗車を行なったとしてもせいぜい 10分程度というものであった。

また、給油スペースは油で汚れている、ガソリン臭いことから車から降りないユーザーが多く、特に女性はその傾向が強い。

油外取引の拡大には、ユーザーが車から降りてもらい店舗内に誘導し、その時に車のコンディションチェックを短時間で行なう必要がある。

点検・整備など必要なサービスを提案できる技能や説明能力を持つことで、初めてユーザーの財布の紐を緩めてもらうことができる。

そのためには SS 従業員の高品質な接客サービスが提供できるための教育が必要不可欠なのである。

【Value Styleステーションとは】

ジャパンエナジーが 2005年 4月から本格展開させる Value Style ステーションには、ユーザーを車から降りさせる様々な仕組みが施されている。

1.特に 20 代から 30 代の女性ユーザーを意識し、店舗内は、JOMO のロゴに使用されている 4 色 (レッド、ブルー、イエロー、グリーン) の中から 1 色を基調にしたインテリア、デザインで統一されており、寛ぎの空間を演出した店舗設計となっている。

2.また、女性がゆったりとした時間を過ごしてもらうために家具や香りで安らぎを提供し、マガジン片手にカフェを楽しむコーナーが設けられている。

3.さらに幼児連れのユーザーがゆっくりと過ごしてもらうために塗り絵が楽しめるキッズコーナーも設けられている。

このように、顧客の視点から SS 拠点を全面的に見直し、女性層を取り込むことで他社との差別化を図ろうとしているのである。

さらにターゲットをこれらの年代層としているのは、新コンセプト店舗を利用した彼女らが流行や評判に敏感であり、オピ二オンリーダーとして、その評判を口コミで宣伝してくれるという波及効果も狙っているものと思われる。

【最後に】

ジャパンエナジーの Value Style ステーションは、特に女性ユーザーに車から降りてもらい店舗内で寛いでいる間に、ガソリン及び周辺サービスを提供することで SS1 拠点の収益の最大化を実現するための新コンセプト店舗である。ただし、SS 業界で女性をターゲットとした店舗の立ち上げは先例がなく、2005年度はジャパンエナジーにとって長い一年となろう。

<寺澤 寧史>