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ヤナセ、1992年に販売を打ち切ったVW車の販売を13年ぶり…
ヤナセ、1992年に販売を打ち切ったVW車の販売を13年ぶりに再開へ
ヤナセが設立するVW車専門の販売子会社「ヤナセ ヴィークル ワールド」が来年春、東京都新宿区の副都心地区に専売店を開設へ。
<2004年7月26日号掲載>
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ヤナセは、1990年に販売戦略を巡って VW と決裂し、同社のインポーター事業のみならず、1992年には VW の小売事業からも完全撤退している。
その後、同社はベンツや GM のインポーター業務からも撤退して、輸入車の小売事業に経営資源を集中するとともに、取扱ブランドのマルチ化戦略を強力に推進してきたことはご承知の通りである。現在は、主力ブランドであるベンツ、GM 以外にアウディ、BMW / MINI、クライスラー / ジープなども取り扱っている。
今般、VWグループジャパン(VGJ)は 13年ぶりにそのヤナセと和解して同社にVW 車の小売の一部を任せる決断をした。マルチ化戦略を進めるヤナセにとっては(感情的なしこりを除けば)現在の戦略の延長線上にある話だが、VGJにとっては どうなのか、今回はその点について考察してみたい。
VGJ は今回の決定にあたり、おそらく以下の点を考慮したのであろう。
1)トゥアレグ(Touareg。2003年 9月日本市場投入)やフェートン(Pheaton。日本市場投入時期は未発表)など、高級車拡充、ブランド・ポジションの上級移行戦略が決定している。
2)今後、トヨタがレクサスチャネルを構築して本格的に高級車市場に参入してくることに備えて、VGJとしても強力なチャネルを構築しておく必要がある。
3) 既存のファーレン、DUO チャネルは小型車主体のブランドで、高級車の販売にあたっては、能力や顧客リストの点で万全とはいえない。
しかも、トヨタ系の DUO は、2) との関連で VW の高級車戦略に力が入らないおそれもある。
4)かつて小型車の販売戦略を巡ってはヤナセと意見が合わなかったものの、高級車の販売においては、ヤナセのネットワークと顧客リストは依然として魅力的である。
5)マルチブランドの小売チェーンで展開することには異論もあるが、競合のベンツ、BMWもヤナセに小売を委託して成果を上げている。
グループの AUDI もこの点でのコンフリクトはない。
しかし、それでもヤナセとの販売契約の締結には、VGJ 内部でも異論があったに違いあるまい。主に二つの点が考えられる。
(1)既存チャネルとのコンフリクト
上記で触れた通り、VGJ は現在デューオ、ファーレンの二つのチャネルを持ち、ヤナセは 3 つ目のチャネルになる。
既存 2 チャネルは、254 店舗まで拡大しており、その間、AUDI を分離させてVW専売化のために追加投資もさせている。
さらにVWの 2002年度、2003年度の国内販売台数は夫々 59,257台、54,498台と輸入車市場の 22.5 %のシェアを占め、トップブランドの地位を守り続けている。2004年の上半期実績を見ても 新型ゴルフ投入もあって 29,332台と、2003年度の販売台数を上回る勢いを示している。既存チャネルからしてみれば、十分以上の働きをしているにも拘わら
ず、なぜヤナセなのかという不満が出てきてもおかしくない。特にヤナセのポテンシャルについては誰もが承知しており、危機感は相当なものであろう。
(2)数ある輸入車の一つへの埋没
ベンツも BMW も AUDI も皆ヤナセチャネルを通じて成功しているのは事実だが、VGJ はこれまで専売チャネルに拘ってきた。その最大の理由は、VW が日本で存在感あるブランドであるためにはVW の思想と戦略を理解、共感し、VW に最大の経営資源とロイヤリティーを注いでくれる販売チャネルが必要だったからだと思われる。
DUO はトヨタグループではあるが、トヨタとの棲み分けがあって大きな問題はなかったはずだ。ところが、ヤナセと組むとなると、仮に小売店舗は専売であっても、経営レベルで、ベンツ、BMW、AUDI他のブランドを傘下に持つ中で、どれだけ VW に注力してくれるのかは未知数である。
VGJでもこれらの問題点を懸念しなかったはずはない。そのうえでの今回の決定であるから大きな経営判断である。この決定の結果、ブレーク・スルーして VW が成長していくのか、混乱を助長して停滞してしまうのか、推移を注目していきたい。
<寺澤 寧史>