双日、廃車リサイクル事業に参入。第1弾として解体業の青…

◆双日(ニチメンと日商岩井が4/1に合併した会社)、廃車リサイクル事業に参入
第1弾として解体業の青木商店と共同出資で、新会社「CRS埼玉」を設立。
<2004年4月7日掲載>
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今週は2004年4月6日、日本経済新聞に報道された双日(そうにち、4月1日ニチメンと日商岩井の合併会社)が使用済み自動車のリサイクル事業に参入するという記事を取り上げたい。
埼玉県新座市にある解体事業者の青木商店と合弁企業を「CRS埼玉 」を設立、資本金3億4千万円で青木商店51%、双日49%出資と報道では伝えている。
2005年1月の自動車リサイクル法の完全施行を控えて、使用済み自動車の再資源化率を高める需要が拡大すると想定し事業化に踏み切ったもので、ASR(シュレッダーダスト)を排出しない処理工場を全国展開するとしている。
青木商店との合弁会社は、約10億円を投じ年間2.4万台処理できる解体工場を5月末に稼動させるとしている。
双日の自動車リサイクル事業への参入には、次のような外部環境変化が背景にあってのものだと想定される。
(1) 自動車解体事業を規定する法律が自動車リサイクル法に一元化され、明確になったこと、

(2) 自動車リサイクル法の施行とともに、自動車解体事業は都道府県知事の許認可事業となり、法規定に即した施設要件を満たす企業しか生き残れなくなっていること、
(3) フロン、エアバック、ASRの処理は自動車メーカーの責務となり、解体事業者が少なくともこのうちフロン、エアバック処理を担うことで費用請求できるようになったこと、
(4) さらに使用済み自動車の主な排出者の新車ディーラー、自動車整備工場経営者は、実際に適正処理を行う自動車解体事業者の選別を始めていること、
(5) 鉄スクラップ価格(H2市中価格)が主に中国の急激な経済成長に伴う旺盛な需要で、高値で取引されるようになりこれまでのような逆有償解消されつつあること。
自動車解体事業の市場規模に関して公式の数値はないものの、全国で排出される使用済み自動車数は年間5百万台程度と、台あたり収益3~5万円から推計すると1500~2500億円と見られる。
そこに既存業者が約5千社あることを勘案すると新規参入の対象として必ずしも魅力ある市場とは言えないと思われる。
それでもこのところ、自動車解体事業への新規参入が相次いでいるのは、何故なのだろう。
最大の理由は収益安定化の目処が立ったという認識が生まれつつあることだろう。
従来、使用済み自動車の引き取り時の対価は、鉄スクラップ市況次第で有償、逆有償と振り子のように行きつ戻りつしていたため、収益を安定させることが困難であった。
自動車リサイクル法では、先にも述べたフロン、エアバッッグ、ASRの引き取り責任を自動車メーカーに求め、その処理費用として新車販売時にユーザーから預かって自動車リサイクル促進センターで管理・運用した資金(自動車メーカーの裁量に任されているが、おおよそ2~3万円程度となる見込み)の一部が、マニフェストと引き換えに自動車解体事業者に対して支払われることになる。

従来に比べて収益基盤が安定化する可能性が大きいのである。

さらには、自動車の使用年数の伸長により、低年式車の補修部品への中古部品やリビルト部品利用などの周辺ビジネスの拡大という要因も見逃せないと思われる。

しかしながら、それだけの理由で異業種からの事業参入者が短期間で事業採算を確立できるほど、甘いビジネスでないことも事実である。
大手のルネサンスや西日本オートリサイクルのケースでも新日本製鐵の資本力に加えて、その転炉を利用でき、かつ良質な鋼板を使用している自動車から主要な製鋼原料である屑鉄を親会社に供給するというシナジー効果 が期待できることが事業進出の背景にあるはずで、リサイクル事業単体で収益を確保出来ているのかどうかは微妙である。
今後リサイクル事業者には設備投資やコンプライアンスの遵守が求められるが、既存事業者でこの条件を満たすことができるのは全体の3~4割程度と言われる。異業種からの新規参入組が成功するための鍵は正にそこにあると思われる。
また、既存業者の側はこの点を考慮に入れたうえで自動車産業とともに100年の歴史で培った強み(きめ細かい顧客対応や解体技術等)を最大限に発揮することが求められよう。

<寺澤 寧史>