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自動車ディーラー店舗再編戦略に織り込む中古車販売ネットワーク構築の可能性
◆自販連「国内自動車販売の現状と課題」発刊
会員ディーラーでは新車販売の効率化や付加価値向上策など経営改善に取組んでいるものの、新車販売台数の減少が経営を圧迫する状況が続いている。
<2006年02月02日号掲載記事>
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日本自動車販売協会連合会は 05年版「国内自動車販売の現状と課題」を発刊した。これによると、国内市場の成熟化がディーラー経営を圧迫するという状況に大きな変化は無く、新車販売粗利率が近年では最低水準の 9.2% になるなど、厳しい状況が続いている。
新車販売は数年に一度需要が発生するスパイク需要と言われているが、乗用車の平均車齢は 1995年 3月末の 4.88年に比べ、2005年 3月末では 6.77年(出所:財団法人自動車検査登録協力会)とこの 10年間で 2年近くも延びており、新車の代替サイクルも拡大していることが伺える。
このような環境下において、ディーラーは新車売上高の伸びが期待出来ないため、収益力の向上に取組んでいる。具体的には店頭販売の効率化や新車以外の領域のサービス・部品、中古車、金融商品等の販売強化である。こうした領域への注力は、結果として買い換え時の顧客の流出を防ぎ、新車の領域においても安定的に収益を得る構造を構築する一助となる。
【新車販売の領域】
新車販売では販売台数の増加が期待できないことから、販売の効率化が求められる。より少ないマンパワーで 1台でも多く売る為には、訪問販売から店頭販売へのシフトが不可欠となる。今回のレポートにおける店頭販売比率は 48.5% と前回 46.4%、前々回 43.4% に比べ順調に増加している。また店頭納車比率は 51.6% と前回 48.8%、前々回 44.3% に比べ店頭販売比率以上に高い成長を示している。
しかし、営業スタッフ 1 人当たりの新車直販台数は年間 38.4台と過去 3年で最も低い水準となっており、コスト削減という観点からも店頭販売比率を更に加速させていくことが望ましい。
【新車販売以外の領域】
新車市場の拡大が望めないことから、あらたな収益基盤として強化しなければならない領域である。粗利率は、サービス・部品部門で 37.8%、中古車部門では 13.9% となっており、新車販売よりも高い。また、経営安定性を示す指標である「新車販売以外の領域の粗利益による固定費カバー率」では、77.6% と前回 75.1%、前々回 72.2% に比べ年々向上しており、着実に新車販売に依存しない収益構造へと変わりつつあることが伺える。
サービス・部品部門のセグメントはメーカーワランティ、点検、車検、その他整備に区分けされ、ディーラーにとって顧客の新車購入後の収益源となるが、ここ数年で粗利額が増加している部門である。
しかしながら、中古車部門は収益が伸び悩んでいるようである。本来中古車は新車に比べ収益率(台当り粗利ではなく、粗利率)が高いことから取り扱い台数を増加させればその分利益増に直結するはずである。しかし、日本のディーラーにおける新中比率(中古車販売台数÷新車販売台数)は米国におけるそれのまだ三分の一の規模となっており、ディーラーが収益性を高める上では、まだ改善の余地が残されている部門であると考えられる。
【中古車販売の難しさ】
日本の中古車市場規模はここ数年 820 万台前後で推移しており、大きな変化はない。こうした環境下において、新車ディーラーは自らが扱うブランドの中古車を販売する際に、新車のブランドレバレッジを利かせることが可能となる。即ち、所謂中古車専業店と言われる中古車事業者に比して有利なポジションにあるはずである。
しかし、前述の通りディーラーにおける中古車販売は未だ発展途上にあると言っても過言ではないだろう。
元来、ディーラー店舗は新車販売を目的としているため、新車を展示する店舗と整備を行うためのバックヤードで構成されているのが一般的である。しかし、中古車販売の収益を高めるためには、ある程度の在庫スペースを確保することが望ましい。当然、改築工事や店舗拡張には新たなコストが発生するが、中古車のみのためにこうした投資を実行するのは、慎重な判断が必要であろう。
しかし、折角、顧客を新車販売からサービスへと囲い込み、買い替えの際に発生する下取り車を確保しても、小売する場所が無ければ手放さざるを得ず、結果的に収益を向上させるような施策を追求することは困難になる。
【時代の波を捉える】
一方で朗報もある。昨年末から各自動車メーカーが主導で国内販売網の再編を相次いで発表していることである。各社は国内需要の鈍化に伴い需要発生エリアにおける大型店舗投資と需要の少ないエリアにおける過剰店舗の絞込みを目的とする形で、ディーラーチャネルの統合やディーラー網の再編を実行する発表をしている。この波を上手くディーラーによる中古車販売網の構築に繋げることは出来ないものであろうか。
再編が進めば近郊エリアで競合している別ディーラーとの統合は避けられないため、片方の店舗の閉鎖や売却が起こり得る。そこで一方の店舗を中古車販売の店舗に衣替えすることでインフラを構築するのである。
同じ販売網の中で中古車を取り扱えることになれば、オークションや中古車専売業者への流出が減少し、買い替え顧客に対しては、競争力のある下取り条件を提示することが可能となり、結果として新車販売の向上にも効果を発揮することになる。
新車販売の強化もさることながら、中古車販売網を構築することがディーラーの全体収益向上という目的を達成するために効果的な施策となる可能性は高いのではないか。
<大谷 信貴>