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中国ビジネスの達人(7)『いざの時のために、保険はどうし…
今や自動車業界にとって避けて通れないテーマの一つである中国進出。住商アビーム自動車総研のアドバイザーであり、過去 15年の中国駐在・ビジネス経験を経て現在も浙江省杭州にある日産ディーゼルの製造会社に出向中の三木辰也が、中国進出に携わる方々に対して中国ビジネスのヒントを伝授するコーナーです。
第7回 『いざの時のために、保険はどうしたら良いのだろう?』
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中国での企業経営には事故発生のリスクが多く存在しています。例えば、火災、盗難、交通事故等の発生リスクは日本よりも一般的に高く、万一の場合、生命の危険や企業倒産に至る恐れもあります。
また、昨今欧米の影響を受けて、PL 問題がクローズアップされており、PL 法が施行され、裁判所も厳しく企業の製造責任を追求する事例が増えて来ています。
今回は、そうしたリスクに備えて中国で保険をかけるための留意点についてコメントします。
(1)火災、盗難保険
工場経営の場合、火災、盗難事故の発生リスクを考えて、ほとんどの企業が損害保険に加入し、万一の事態に備えています。
日系企業が保険会社を選ぶ際に最初に考えるのは日系保険会社でしょう。最近では上海、大連等大都市では日系保険会社が現地法人を設立しており、保険引受けを始めておりますが、実際には従来の関係や中国側パートナーの要請で中国の保険公司と取引きせざるを得ない場合も多いようです。
中国には中国人民保険や太平洋保険等大手保険公司以外にも多数の中小の保険公司があり、それら中小保険公司の場合は損害規模が巨額になると本当にすぐ全額支払ってくれるのかどうか、支払い能力が懸念があります。大手保険公司を選んだ方が無難でしょう。
それでも不安な場合は、再保険を検討しては如何でしょうか。中国の大手保険公司と日系の大手保険公司は多くの場合、取引関係があり、中国の大手保険公司との契約条件の中に一定の割合で日系の保険会社への再保険を要求することが可能です。
(2)PL保険
冒頭の通り PL 問題に対する消費者意識はかなり高揚しており、政府や司法も消費者の権利保護に熱心になっています。
従って PL 保険の出番ですが、日系企業の中には日本の本社で付保しているPL 保険で中国での PL 問題にも対処できると考えている企業が少なくないようです。しかし、中国製部品を採用したり、中国独自開発の製品や独自工法の場合に、内地で掛けている PL 保険が実際にどれだけ PL リスクをカバーしてくれるのかの判断は簡単ではありません。
企業ごとにリスクの大小は異なり、弁護士等と相談し、十分に検討した上で、PL 保険の加入の要否、加入する場合の契約条件等を慎重に決定する必要があります。
(3)その他の保険
従業員を対象とした「身元信用保証保険」というものがあります。従業員が不正を行った際にその損害を保険にてカバーすると言う内容で、日系企業での加入は非常に少ないようですが、欧米の中国進出企業は加入しているところが少なくありません。 日系企業と欧米企業のものの考え方の違いでしょうか。
(4)おしまいに
自動車保険や傷害保険は一般的な保険ですので、今回は取り上げませんが、必要に応じて掛けておく方が良いでしょう。
中国の保険公司も WTO 加入で海外の保険会社の中国進出に危機感を覚え、レベルアップが進んでおり、保険商品の種類が増加し、対応やサービスも向上しています。
しかしながら、リスク分析や保険の提案面では日系や欧米の保険会社に比較するとレベルに差があり、中国の保険公司の実力不足は否めません。
自社の保険加入状況や保険契約の中身を見直すと同時に、企業によってリスクの種類や大小が異なりますので、必要に応じて、日系の保険コンサルタント会社や保険会社等に依頼し、自社のリスク調査を行い、未加入保険の加入の必要性につき十分に検討すべきと考えます。
<三木 辰也>