中国ビジネスの達人(8)『知財流出はほんとはどのくらいひど…

今や自動車業界にとって避けて通れないテーマの一つである中国進出。住商アビーム自動車総研のアドバイザーであり、過去 15年の中国駐在・ビジネス経験を経て現在も浙江省杭州にある日産ディーゼルの製造会社に出向中の三木辰也が、中国進出に携わる方々に対して中国ビジネスのヒントを伝授するコーナーです。

第8回 『知財流出はほんとはどのくらいひどくて どのくらい政府は本気?みんなどうしてるの?』
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日本や欧米の場合、意匠権や登録商標等知的財産についてはかなり厳密に管理、運用され、その登録者の利権保護に大きな役割を果たしていますが、中国の場合も WTO 加盟が転機となり、ここ数年でようやく知的財産に関する法律が整備されてきました。

中国メーカーの中でも、商品開発に力を入れ、種々新商品を投入しマーケットを開拓し、ブランドや企業の知名度をアップするために広告宣伝を行っているメーカーが増えてきていますが、残念ながら、そのようなメーカーでも「良いものをちょっと拝借」という考えがいまだ存在しているところもあるようです。

中国では至る所で有名ブランドやメーカーの模造品や模倣品が売られており、買う方の人も余りその意識がなく商品を購入しています。中国の関係部署や行政機構は取締りや行政対応を行っていますが、その数が限りないことから、その効果は限定的のようです。

日本メーカーが中国メーカーを相手取って、日本メーカーの技術を使用したという広告に対し、また、そのメーカーのバッジが日本メーカーのものと酷似しており違法と中国にて裁判を起こしたが、結果として、日本側が敗訴したのは記憶に新しいところだと思います。

中国での知的財産についての法律やその運用面では未整備の点もあること、中国国内の企業に有利な判断や判決がなされる可能性が高いことから、種々関係機関を巻き込みながら慎重に対応する必要があり、対応を間違えると逆に提訴され、自身が中国市場から締め出されるリスクが存在することも十分に考慮に入れる必要があります。

先ずは自社の製品や商標が中国において法的に保護されるよう、関係機関に知的財産に関する出願をしておく必要があります。

また、万一、模造品や酷似品を発見したら、現物を証拠として押さえ、弁護士や弁理士と相談し、自社が不利益を被ると判断されれば、対応策を検討する必要があります。その上で、行政機関に取締りの要請、法廷に提訴、公安局に刑事告発等の対応するかどうか判断するべきでしょう。

JETRO (日本貿易振興会)や日中投資促進機構も日本企業の中国における知的財産権保護については強い関心を持っていますので、問い合わせてみては如何でしょうか。

<三木 辰也>