中国フラッシュニュース(73)『中国版「NCAP」を巡る動き』

生産台数では既に第 3 位となり、販売台数でも今年には日本をも上回り、世界第 2 位になると見込まれる中国自動車市場。

住商アビーム自動車総研の提携先であり、中国自動車業界に精通したコンサルティング会社オートビジョン有限公司の総経理である張浩群が、中国自動車業界のホットな話題をお伝えするコーナーです。

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第73回『中国版「NCAP」を巡る動き』

最近、中国版「NCAP」(New Car Assessment Program) の創設を巡り、現地で様々な動きが活発化している。

中国民族系メーカーの「江鈴陸風汽車有限公司」が 2005年 9月のフランクフルトモーターショーに出展する予定だった SUV 「陸風」が、Euro NCAP に基づく衝突安全性テストの結果、不合格となったことが、中国版「NCAP」の創設を加速させている。

現在、中国版「NCAP」の創設を巡っては、2 つの企業(団体)が名乗りをあげている状態である。

一つは民間企業の「大陸汽車倶楽部」である。「大陸汽車倶楽部」は元々、日本における JAF と同様に、事故車の救援などを主要な業務としてきたが、オーストラリアの保険会社に買収されたのち、積極的に多様なビジネスを展開するようになった。今回は、清華大学と共同で、Euro NCAP を中国に導入し、「NCAPCHINA」を創設しようとしている。

もう一つの団体は「中国汽車技術研究中心」である。「中国汽車技術研究中心」は、国営で自動車関連の研究・認証を行う機関であり、中国自動車業界に対して大きな影響力を有している。「中国汽車技術研究中心」は、海外の「NCAP」のコンセプトを中国の実情に合わせ、ある程度調整した上で、中国版「NCAP」ともいえる「CNCAP」の創設を目指している。

しかし、現地のアナリストによれば、2 つの企業、団体にはそれぞれ思惑が存在するという。

両者ともに中国版「NCAP」の運営により、年間約 800 万元の収入が見込めるほか、「中国汽車研究中心」にとっては、多くの自動車メーカーから、技術改善コンサルティングの受託が見込める可能性が出てくる。一方で、「大陸汽車倶楽部」にとっては、知名度の向上により、事故車救援ビジネスを全国へ普及させるチャンスが出てくる。

どちらの規格が採用されることになるのかこれからも目が離せない。

<張 浩群>