中国フラッシュニュース(56) 『BOSCHの中国におけるビジネス展開』 

アップダウンを繰り返しながらも、今後数年以内に日本を上回るとされる中国自動車市場。

住商アビーム自動車総研の提携先であり、中国自動車業界に精通したコンサルティング会社オートビジョン有限公司の総経理である張浩群が、中国自動車業界のホットな話題をお伝えするコーナーです。

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第56回『BOSCHの中国におけるビジネス展開』

BOSCH が中国に進出してから 20年経った。その BOSCH が、最近中国におけるビジネス展開のスピードをあげ、その存在感を増している。

8月 31日、Member of the Board of Management の Colm 氏が、無錫に行き 6 億ユーロを投資してディーゼル燃料噴射装置関連部品事業の合弁企業を設立することと、5 億ユーロを投資して R&D センターを設立することを発表した。

この背景には、BOSCH が事業戦略の転換を迫られていることがあると考えられる。

これまで、BOSCH の中国ビジネスは上海 VW、一汽 VW という二つの大きな顧客をベースに展開してきた。しかし、この二つの客先は相次いで業績不振に陥っている。そのため、これらの自動車メーカーは、キーパーツは依然 BOSCH から調達するものの、汎用部品は、他のサプライヤー、とりわけ中国系サプライヤーから安く調達しようと動き出している。

中国の自動車市場では、ドイツ系メーカーの不振を尻目に、日系、韓国系メーカーが急激に販売台数を伸ばしている。一方、BOSCH は日韓メーカーへの足がかりをつかめない状況が続いている。そのため、BOSCH は以下の戦略を取り始めていると見られる。

(1)汎用品の中国現地生産の強化、中国企業への委託生産の強化により、コストの削減を図る。
(2)噴射システムなど得意分野の強化。
(3)アフターサービス市場の展開拡大。

BOSCH は、自動車補修チェーン(BCS)をすでに中国で 345 店舗を展開しているが、2013年までに 1500 店舗まで増やす計画がある。しかし、アフターサービス市場でも、すでに先駆者が存在している。2002年、デンソーが中国中汽汽配貿易有限公司と協力し、「中聯汽配」ブランドのフランチャイズ展開をはじめている。これだけで差別化を図ることは難しいであろう。

中国自動車部品業界をリードしてきた BOSCH の抱える課題は、多数の自動車メーカーが熾烈な競争を繰り広げる中国自動車市場において、既に中国で事業展開している日系自動車部品メーカーにも起こり得る課題である。BOSCH の今後の事業展開を注目すべきであろう。

<張 浩群>