中国フラッシュニュース(50) 『困難な舵取りに直面するVW』

アップダウンを繰り返しながらも、今後数年以内に日本を上回るとされる中国自動車市場。

住商アビーム自動車総研の提携先であり、中国自動車業界に精通したコンサルティング会社オートビジョン有限公司の総経理である張浩群が、中国自動車業界のホットな話題をお伝えするコーナーです。

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第50回『困難な舵取りに直面するVW』

8月 8日、上海 VW はサンタナ、サンタナ 3000、GOL、パサートなど全車種を大幅に値下げする「旋風行動」を発表した。最上級のパサート 2.8V6 に至っては、一気に 4 万 6 千元(約 60 万円強)の値下げとなり、世間を驚かせた。これに対し、翌 8月 9日、一汽 VW は記者会見を行い、同社は値下げの予定はないと慌てて宣言する一幕があった。

これらの光景を独 VW は苦々しく見ているに違いない、と業界有識者は指摘する。こうした動きは、独 VW が徐々に上海 VW と一汽 VW をコントロールする権力がなくなりつつある象徴とも言える。

これまで 独 VW は、上海 VW と一汽 VW のバランスを考慮し、車種投入・技術供与をしながら、両社をコントロールしてきた。しかし、近年、VW 車の不振もあり、独 VW、上海 VW、一汽 VW 三者間のバランス関係が崩れつつある。

上海汽車集団の中には、上海 VW に加えて上海 GM がある。急激に業績を伸ばしている上海 GM に対し、上海 VW は不振に陥っており、上海汽車と VW との関係も昔ほどの緊密さがなくなっている。一方、独 VW は一汽 VW への新車種の投入を次々と発表した。アウディ A6 のモデルチェンジを行ったことに加え、アウディ A4 のモデルチェンジ計画、開発コード「Forture6」と呼ばれる新車導入計画も発表されている。

独 VW のコントロール力の低下を象徴する一つが、上海 VW と一汽 VW の部品共同購買計画である。コスト低減のために、三者(独 VW、上海 VW、一汽 VW)による合弁部品会社の設立を呼びかけているものの、上海 VW、一汽 VW 両社からの反応は鈍い。

VW ブランドは、このままでは、中国において分裂してしまう恐れさえ出てきている。独 VW の中国事業は、進出以来の危機に面していると言える。

<張 浩群>