中国フラッシュニュース(47)『南京汽車が MG Rover を買収』

アップダウンを繰り返しながらも、今後数年以内に日本を上回るとされる中国自動車市場。

住商アビーム自動車総研の提携先であり、中国自動車業界に精通したコンサルティング会社オートビジョン有限公司の総経理である張浩群が、中国自動車業界のホットな話題をお伝えするコーナーです。

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第 47 回『南京汽車が MG Rover を買収』

7月 23日、南京汽車が 英 MG Rover を正式に買収したというニュースが流れた。既に明らかになった情報によると、買収金額は約 5,000 万ポンド(約 96億円)で、買収内容は、2 つのガソリンエンジン工場、1 つのディーゼルエンジン工場、3 つの車種製造技術・設備およびトランスミッション工場などが含まれるという。

南京汽車は 1947年に創業した中国自動車業界の老舗の一つである。1958年、旧ソ連から技術導入して小型トラックのライセンス生産を始め、現在、躍進トラック、南京 IVECO (伊 IVECO との合弁)、南京 Fiat (伊 Fiat との合弁)、新雅途(自主ブランド)などの 4 つの工場を保有し、年間 10 万台の生産能力を誇る。2003年には売り上げが 100 億元(1300 億円)を突破している。

その南京汽車が、MG Rover を買収し、新しい合弁会社をつくり、一年後を目処に、新しい ROVER 車を生産する計画があると発表した。

南京汽車の今回の発表に最もショックを受けているのは上海汽車であろう。
上海汽車のスポークスマンは、買収結果に残念との意を表明しながら、すでにMG Rover から購入した Rover75、Rover25 の知的財産権を断固として守る決意を示した。

南京汽車の MG Rover 買収は、上海汽車の自主ブランド戦略にも大きな影響をもたらすと見られている。上海汽車は中国自動車業界一の資金力を誇るといわれるものの、その収入の 9 割以上が合弁会社の上海 GM、上海 VW に頼っている。上海汽車にとって、自主ブランド車の開発・発売は緊急課題となっている。

2002年以降、上海汽車は自主開発に 40 億元を投入しているが、自主ブランド車の開発は一向に進まない。そこで、上海汽車は「自力成長」路線から外国メーカー、車種の買収により、自主ブランドの開発を進める路線に徐々にシフトしてきた。そのターゲットが、韓国の双竜自動車と今回の MG Rover であった。

昨年 MG Rover が倒産したため、上海汽車の全面買収の線は消えたものの、依然、上海汽車は同社のブランド、技術、設備に強い関心を持ち、水面下で個別買収の交渉を進めていた。しかし、その矢先に、南京汽車に先を越されてしまったものである。

南京汽車は英国の工場を継続するほか、R&D センターも新設し、英国で生産する自動車は欧州で展開予定という。パソコン、石油に続き、自動車業界でも中国企業の本格的な海外進出が始まった。

<張 浩群>