中国フラッシュニュース(29)『中国自動車メーカーの自主…

アップダウンを繰り返しながらも、今後数年以内に日本を上回るとされる中国自動車市場。

住商アビーム自動車総研の提携先であり、中国自動車業界に精通したコンサルティング会社オートビジョン有限公司の総経理である張浩群が、中国自動車業界のホットな話題をお伝えするコーナーです。

第29回『中国自動車メーカーの自主開発が進まない原因』
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最近、著名な中国自動車産業のアナリストが、「中国自動車メーカーの自主開発が進まない原因」をテーマとした論文を発表し、反響を呼んだ。同氏が指摘するその原因として、以下ポイントが挙げられている。

1.情熱の欠如
ほとんどの中国自動車メーカーが「国有企業」という背景を持っており、その経営陣も「任命制」である。そのため、経営者陣は、各自の「功績」をあげるため、任期内の「収益」を最重視する。

収益を上げる近道としては、合弁相手である海外自動車メーカーの魅力的な車種を導入するのが一番手取り早い。自主開発は期間を要する上に、リスクも大きく、ほとんどの経営陣は自ら推進する情熱はない。

2.人材集積の欠如
中国自動車メーカーでは、国有企業、合弁企業に関わらず、人材流出が激しい。待遇が良い外資との合弁企業において、「英語やドイツ語の通訳・翻訳ばかりさせられて、全く創造的な仕事をさせてもらえない。」と嫌気をさして、流出することも多い。国有企業では、全般的に、待遇、人事に不満を持つ人が多く、人材の定着率も悪い。

このような企業から流出した人材の受け皿になっているのは、新興勢力である民営自動車メーカーである。たとえば、奇瑞汽車だけで、第一汽車や東風汽車から百人単位でエンジニアを受け入れているという。

3.未熟な部品メーカー
一般的に、中国の部品メーカーは、技術力が弱く、多くの外資合弁自動車メーカーのニーズに応える能力がない。加え、多くの海外部品メーカーが中国に進出してきており、中国の部品メーカーを取り巻く環境は更に厳しいものをなっている。

4.政策面における支援の欠如
海外との合弁自動車メーカーに比べ、中国自動車メーカーはあまり優遇されていない点も少なくない。例えば、現行税制面では、外資合弁自動車メーカーの所得税は 17 %であるに対し、中国自動車メーカーには 33 %の所得税が適用されており、それだけでも不利な立場に立たされている。

これらのポイントを勘案すると、中国自動車メーカーの自主開発に向けての道のりは、極めて厳しいものとなっている。世界に通用する独自モデルの開発までには、まだまだ時間が掛かりそうである。

<張 浩群>