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エコドライブの新たな楽しみ方
◆ホンダ、「インサイト」オーナーがエコ運転を競う「エコグランプリ」Web サイト上で県別 / 血液型別などの燃費ランキング
ホンダは、ハイブリッドカー「インサイト」のオーナーがエコ運転技術を 競う「エコグランプ」を、同社 Web サイトで 6月 12日から開始する。
<自動車ニュース&コラム 2009年 06月 11日号掲載記事>
◆レクサス、エコドライブでポイントを貯めて寄付できるサービス「HS250h」に搭載、「ハーモニアスドライビングナビゲーター」
レクサス (トヨタ自動車) は 6月 10日、利用者がエコドライブを楽しみながら継続でき、さらにその成果が社会貢献活動への寄付にもつながるサービス「ハーモニアスドライビングナビゲーター (Harmonious Driving Navigator)」を発表。2009年 7月発売予定のレクサス初のハイブリッド専用車「HS250h」に採用すると言う。
<自動車ニュース&コラム 2009年 06月 10日号掲載記事>
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【エコドライブの新たな楽しみ方】
昨今のハイブリッドブームを先導するトヨタとホンダが、環境意識の高い消費者の心をくすぐる新たな取組みを始めている。ともに、クルマの中に留まらないネットワークを活用することで、エコドライブの新たな楽しみ方を提案するものとなっている。
これまでも、エコドライブによる燃費向上を促すための機能として、エコドライブインジケーターや燃費計などの装置が、ハイブリッドに限らず導入が進められている。こうした機能は、ユーザーの燃費削減への意識につながるであろうし、ニーズも高い。
そこに、エコドライブの目的として、燃費向上によるガソリン代節約だけではなく、ユーザーが楽しめる新たな機能を提案することで、エコドライブを継続したくなるように促す今回の両社の取組みは、単にハイブリッドブームの加速やエコドライブの普及だけでなく、将来的なユーザー囲い込みにもつながるのではないかと考える。
今回は、こうしたエコドライブを活用した新しい取組みについて考えてみたい。
【ホンダの「エコグランプリ」】
ホンダは先週からホームページ上にて、「エコグランプリ」というサービスを始めた。同社のハイブリッド車「インサイト」に搭載されているエコアシスト(エコロジカル・ドライブ・アシスト・システム)とインターナビ・プレミアムクラブのサービスを活用し、ネット上でユーザーの燃費情報を収集し、個人や県別の平均燃費等のランキングを公開するものである。ドライバーの低燃費運転を支援するエコアシストから燃費情報を取得し、同社のテレマティクスサービスであるインターナビ・プレミアムを通じて、ネット上に各ユーザーの燃費情報を収集する仕組みになっている。
ユーザーは、純正カーナビを装着し、インターナビ・プレミアムクラブを契約しているインサイトオーナーに限定されており、先週の時点で既に約 1,500名が参加登録している。「エコグランプリ」の機能自体も今後拡張させていくことを発表しており、ユーザーへの認知が高まれば、参加者も拡大していくと思われる。
【トヨタの「ハーモニアスドライビングナビゲーター」】
一方、トヨタは、7月に発売予定のレクサス初のハイブリッド専用車「HS250h」に搭載予定のハーモニアスドライビングナビゲーターを発表した。エコドライブインジケーターやハイブリッドシステムインジケーター、エコモードスイッチ等の機能は従来も導入されていたが、これらのエコドライブ支援機能を通じて収集したユーザーのエコドライブの習熟度をポイント制度で評価し、そのポイントを社会貢献活動に寄付することができる、というのが新たな取組みである。
ポイントの導入により、エコドライブ度を定量的に評価するという特徴はあるが、ユーザーのエコドライブ状況を収集し、オーナー専用ホームページに公開することで、継続的なエコドライブの促進とユーザーの囲い込みを図るという構図は、ホンダのものと類似している。
一歩進んでいるのは、このポイントを、外部の社会貢献活動に寄付することができるという点であろう。自分自身のエコドライブによって稼いだポイントが社会貢献につながるという仕組みは、環境意識の高いユーザーのモチベーションを高めるものになりそうである。
【エコドライブを浸透させるために】
加減速を緩やかに行う、タイヤ空気圧を適正に維持する、等々、燃費に良い走り方自体は、以前から広く知られている。とはいえ、これまで現実的に誰もが意識的に実践するものに至らなかった理由は、単純に知識を伝えるだけでは、ドライバーのエコドライブに対するモチベーションを高め、継続させることが簡単ではないからだと考えている。
これを目に見える形で表示することで、ドライバーにエコドライブを意識させたものとして、エコドライブインジケーターや燃費計の意義は大きく、定番の商品として普及したこともうなづける。こうした機能により、ドライバーがエコドライブを意識的に行うことができる環境は整った。
それに加え、今回の取組みは、このエコドライブを継続的に取り組むことを可能にする取組みだと考える。前述の単調な表示装置の類では、ドライバーが飽きてしまう可能性もある。エコドライブの成果をポイント等により定量化し、ネットを活用してそのランキングを公表したり、ポイントを社会貢献に寄付するというこれらの仕組みにより、ドライバーが継続的にエコドライブに取り組むモチベーションを高められるはずである。
こうしたネットの活用は、新たなコミュニティを生む可能性もある。既にネットを通じて集まったプリウスのオーナークラブでは、区間平均燃費を競うような遊びも始まっているという。こういうコミュニティが生まれ、広がりだすと、新たなクルマ文化が生まれる可能性もある。
こうした取組みは、クルマを持つ目的やクルマで移動する目的にさえ、なりうると考える。例えば、この社会貢献の形として、エコドライブで貯めたポイントの分だけ植林されて、そこのユーザーの名札が付けられるような仕組みを作ったとする。ネットを通じて集まった新たなコミュニティの中で、「今年は●本に貢献した」と同じ趣味・クルマを持つ仲間と語るためにクルマを所有するかもしれないし、そうしたコミュニティの中で、「今度の週末に、自分の木が植えてある場所に行こうかな」といったやりとりがされるかもしれない。
環境のためには、CO2 を排出するクルマを減らすべきという意見もあるだろうが、クルマ社会がサスティナブルなものであるためにも、業界各社には、こうした新しい取組みを積極的に提案してもらいたい。
<本條 聡>