新陳代謝のご挨拶

【成長戦略は、自由市場における志と行動の有機物である法人の役割】

一昨日、2009年 10月 4日付日本経済新聞に、社長 100 人アンケートと称して、新政権に期待する経済対策のランキングが掲載されていました。一位は全体の 67.2 %を占める「産業育成など成長戦略」でした。

そもそも、マスコミが(政府による)成長戦略という言葉を堂々と使う時点でも不思議なのですが、経済界を代表する社長 100 名でも政府に成長戦略を期待すると言われている時点で、筆者は資本主義国における一経済人として座りの悪さを感じています。

GDP に占める官の割合が諸外国と比して極めて高い日本において(政官間の主導権争いは、国民の権利を付託している政治に軍配があがることを大前提とすれば)政治家が経に与える影響力が極めて大きい現実はあります。

ただ、この官僚から政治への主導権の移行という当たり前の議論と戦いのみに焦点を当てすぎることと、その政府に経済界として「産業育成などの成長戦略」を期待することは、本当に大切なことから目をそらすことに繋がります。

権力を誰が握るのか?国民主権であればその代表である選挙を通じて選ばれた政治家が権力を一義的には握るべきである、という手段の話は大切ですし、政府として税収を元にどの成長分野に補助金を付けたり税率を下げたりといった優遇を行うか?というのも上述現実面からすれば勿論大切です。

しかし、自由市場における最適な財やサービスの最適な相手への提供と、その結果として行われる富の最適分配という資本主義経済の大原則に基づけば、一番大切なのは「自由な発想と高い理念 ・ 志に基づいて組成される(た)法人」がより良い明日を創り出す為(成長するために)どのような行動をしていくかです。

我々住商アビーム自動車総合研究所では、日本におけるナンバーワン産業である自動車産業が如何にイノベーションを自ら発生させていくか、その行動が大切であるという主張を一貫して行って参りましたし、少しでもこうしたイノベーションの主体を担う企業の支援をすることが出来るよう、カタリスト(触媒)としての行動をして参りました。

【新陳代謝は経済成長の必須条件である】

筆者が住商アビームの代表に就任したのは 2008年 1月ですが、その後今日に至るまでの間、時代は正に地球単位で激動の時代に入りました。リーマンショックで(特に自動車)生産・消費は前年比 30 %というこれまで考えられなかった単位で落ち込みました。これに伴い、政治の世界では、米国で初の黒人大統領が誕生し、日本では自民党政権に NO が突きつけられました。欧州でも同様に大きな動きが見られます。

時代は変化を望み、変化に基づく企業や組織の新陳代謝を求めていると言えます。新陳代謝が増加すればするほど、経済成長率は高まるとも言われていますので、正に生き物における自然の摂理のような感覚でしょうか。この度の衆議院選挙に伴う政権交代は、日本の政治における初めての新陳代謝であると言えますし、代謝促進そのものが成長に繋がるという意味で大きな期待をしております。

そしてまた、我々住商アビーム自動車総合研究所としても、本日大きな変化・新陳代謝のご挨拶をさせて頂きたいと存じます。

私、長谷川博史は 10月 1日付で住商アビーム自動車総合研究所の代表を退き、今後は経営の根幹を後任の本條聡に託すことと致しました。

私自身は、引き続き取締役のメンバーとして会社全体の意思決定への参画や、一部のファンクションを、本條体制の下で引き続き担っていく所存でございます。これまで、このメールマガジンを通じて私に対して幾多もの叱咤激励を戴いて参りました読者の方々やコンサルティングを通じてお付き合いさせて頂いてきましたお客様、その他弊社をご支援戴いて来た皆様に、この区切りを使って改めて感謝の気持ちを表明させて頂きたいと存じます。こうしたコラムを週末の喫茶店で必死に書き続けてこられたのは、特に、読者の皆様のご支持を戴いて来たおかげでございます。本当に恵まれていました。

本條聡は住商アビーム自動車総合研究所の設立以来のメンバーでありながら、私よりも若くバイタリティに溢れ、当社の社是とも言うべき「アクション重視」を体現している人物で、本コラムでも執筆を続けていますので読者の皆様もご存知かと存じます。

時代の変遷に合わせ組織における世代交代(新陳代謝)を積極的に行っていくことで、より多くの皆様に対してより良いサービスを提供していけるように自らを変革していくことが目的ではありますが、交代のタイミングでは当然に移行に伴う混乱が伴います。皆様におかれましては、本條聡および住商アビーム自動車総合研究所にこれまで以上のご厚情をいただければ幸いです。

激動の時代に新たな体制で臨む住商アビーム自動車総合研究所を、是非これからも宜しくお願い致します。

<長谷川 博史>