くるま解体新書 第10弾 『中国で生き残る(4)』

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第 10 弾は、中国自動車メーカーの調達戦略を 5 週に渡って紹介する。今回はその第 4 回にあたる。

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第 10 弾『中国で生き残る (4)』

(日刊工業新聞 2005年06月22日掲載記事)

今回は低得点グループ(車体・外装部品、内装部品、用品・その他)の部品群について考察する。

調達方針の特徴は、「調達の原価低減要求」が進み、かつ「中国固有の設計」が求められる一方、「一層の技術革新」が進む傾向は低いということである。
この部品群は、コスト競争力が重要視される部品で、汎用品も多く、また主に大量生産することにより価格競争力を強める傾向にある。生産規模の大きい外資系自動車メーカーは、その規模のメリットを活かした価格交渉により、部品メーカーに圧力を掛けることが想定される。

この部品群は、技術力で差別化を図ることが難しいため、部品メーカーは地場サプライヤーからの原材料の調達比率を引き上げてコスト削減を図ることが重要である。しかし、既に中国系部品メーカーが競争力を蓄積している部品も多く、国内市場において価格競争力で優位性を確保するのは困難である。中国固有の設計が求められるため、魅力あるデザインが商品の差別化要因の 1 つである。

「調達」への期待度が高まるということは、下位サプライヤーの開拓や管理能力を部品メーカーに求めていることが分かる。一部の日系部品メーカーは、自動車メーカーの中国進出を見据えて 90年代半ば以降中国に生産拠点を立ち上げたが、日系自動車メーカーの中国進出が遅れ、外資系・中国系自動車メーカーとの取引を独自に開拓したところもある。

しかし、多くの日系部品メーカーはその主たる供給先が日系の、しかも特定の自動車メーカーであることが多い。一方、品質を落とさず、原価低減を目指す日系自動車メーカーは、地場企業の育成にも取り組んでいる。

しかし、日系自動車メーカーは自社のディーラー網などもまだ少なく、取扱い車種も限定的で、顧客情報の収集などはまだ不十分である。部品メーカーが地場サプライヤーとの取引を拡大し、原材料の国内調達率を引上げて調達コスト競争力を高めるとともに、ローカルニーズを熟知した地場サプライヤーを活用し、例えば「派手好き」、「内装重視」などの中国独自の顧客ニーズを製品開発に繋げることなどが、中国系や外資系自動車メーカーへの販路拡大の決め手になる可能性が高い。

日系部品メーカーが中国事業で成功するためには、製造コストの一層の削減により部品の価格競争力を高めることは勿論、自動車メーカーの戦略を見据えた上で中国ならではのニーズに対応できる部品開発を進め、積極的に付加価値を高め、差別化を図っていくことも重要である。

また、安い労働力を活かして日本の製造拠点を中国に移管し、日本への輸出や外資系自動車メーカーの世界部品調達戦略への取込みを狙うことも検討すべきであろう。

<土方 三千代>