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中国で生き残る(3)
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第 3 弾は、アビームコンサルティングリサーチ担当の土方三千代シニアマネージャーが、中国のアフターマーケットについて 4 週に渡って紹介する。今回はその第3回にあたる。
第3弾『中国で生き残る(3)』
(日刊工業新聞 2004年07月21日掲載記事)
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現在、中国事業を展開している部品メーカーがどんな課題に直面し、今後の改善はどう進むのか。それらを明らかにするため、想定される課題点について個別に質問し、現在と 3年後の問題度合いを 5 段階で評価、3年後の問題度の平均から現在の問題度の平均を引くことで、今後改善に向かうであろう課題を調査した。
その結果、大きな問題として浮上しているのが「模造品の横行」。アフターマーケットに参入および計画中の企業では、現在そして 3年後も模造品を課題として強く認識している。
自動車の補修・市販部品市場では、零細部品メーカーによるコピー製品、粗悪製品が氾らんしており、純正メーカーの悩みの種となっている。中国政府は世界貿易機関(WTO)加盟以降、法整備を進めて取り締りも強化しているが、中国全体で流通している模造品の多さから、その成果が不十分であるととらえていることが分かる。
また低付加価値製品でもコピー製造することで次第に実力をつけ、競争相手となることへの懸念とも読み取れる。
アフターマーケットに参入・計画中の企業が、今後 3年間に最も改善される項目としてのは、「部品・部材調達先の品質・技術・開発力」 (-0.73 ポイント) だった。自動車メーカーからの原価低減要求に対応するために中国国内のサプライヤーを育成し、部品、部材や素形材の供給能力を強化することを重要視していることが分る。
また「IT 網の整備・構築」 (-0.64 ポイント)、「物流網の整備・構築」 (-0.55 ポイント) などサプライチェーン網や IT 化などインフラ網の整備・構築の改善が目立っている。現在、中国事業の体制固めを進めている日系自動車メーカーは、生産・販売にかかわる物流・ IT などのインフラ網整備に積極的に取組んでいる。
トヨタ自動車では補修部品販売のため物流センターを構築し、豊田通商など物流のノウハウに精通した日系企業による部品物流事業の強化が進んでいる。ホンダは今年 10月に施行されるリコール制度への対応を念頭に入れ、部品メーカーから販売店の顧客情報までの一元管理を目標とする IT インフラ網の構築に着手している。
部品メーカーが供給先自動車メーカーの生産・販売の強化に対応することは最優先課題だが、自動車メーカーからの原価低減要求と、自動車メーカー間の競争激化が予想される中、それら関連費用を低減することを視野に入れていると考えられる。
一方、アフターマーケットに参入計画のない企業では、今後 3年間で目立って改善される項目はなかった。
部品メーカーがアフターマーケットへ取組む状況は製品のポジションや中国進出動機などにより異なる。次回は、アフターマーケットを視野に入れた中国事業への提言をする。
<土方 三千代>