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くるま解体新書『SCM改革の難しさ(3)』
弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。
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第 6 弾は、アビームコンサルティング戦略ビジネス事業部マネージャーの櫻田敦史が、SCM 改革の難しさについて 4 週に渡って紹介する。今回はその第3回にあたる。
第6弾『SCM改革の難しさ(3)』
(日刊工業新聞 2004年10月27日掲載記事)
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サプライチェーン・マネジメント(SCM)は「プル型」か、「プッシュ型」かという議論がある。プル型を目指すのが一般的だが、自動車においてはどうだろうか。今回はプッシュ型、プル型という視点で販売方式と需給計画について考えてみる。
見込み生産が避けられない自動車の製造・流通ではプッシュ型販売も必要だ。
しかし、それはメーカー側の論理による在庫の押し付けではない。
数千の仕様の組合せから、顧客が本当にほしい仕様を選び出すのは大変。顧客のライフスタイル、価値観に合った仕様の乗用車や、顧客企業のビジネス形態に見合った商用車を提案するプッシュ型販売の仕組みが必要となる。将来的、この販売スタイルは仕様の組合せの提案から、サービスや関連商品との組み合わせ提案へと発展し、顧客ロイヤルティーを高めていくために不可欠な仕組みとなるだろう。
提案型営業において有効な支援ツールがコンフィギュレーターだ。顧客のニーズを聞きながら入力すると、適合する仕様の製品を選択してくれる。これにより、販社や営業担当者によって売れ筋モデルが違うといった問題も解消できる。今後、自動車販売においても活用事例が増えるだろう。現状では入力項目はオプションなどの仕様そのものだが、将来、顧客のライフスタイル、車の使用状況などに変わっていくかもしれない。
プル型、プッシュ型の議論でいうと、サプライチェーン計画は両者のすり合わせ型が良いと考える。需給計画の難しさは販社販売計画の供給サイドへの影響や、逆に供給サイドの持つ制約条件の販売側への影響を可視化できないという点にある。そこから製販間の不信感が生まれ、在庫を生む。
不信感を排除するには、互いの計画情報を出し合い、すり合わせながら需要計画、在庫計画をつくっていく必要がある。このコンセプトは食品やグロッサリー業界をはじめとして、CPFR (コラボレイティブ・プラニング・フォアキャスティング・アンド・リプレニッシュメント)として注目されている。自動車業界においても精度の高いサプライチェーン需給計画を立てていく上で有効だ。実際に同様のコンセプトを導入した自動車メーカーもある。
この方法で、需給パイプラインの透明度を高められる。その結果、販社は精度の高い納期情報を得たうえで、顧客と商談を進められる利点がある。一方で従来、販社内で閉じていたキャンペーン計画や、個々の営業担当者が持つ商談情報などもメーカー側に開示する必要がある。また、透明度の高い需給パイプラインにより、サプライヤーへの精度の高い内示情報の提供も可能になる。
CPFR 導入の最初のステップは製販間の 「 合意書の策定 」 と 「 共同ビジネスプランの作成 」 と定義されている。自動車業界において、CPFR 型の需給計画を目指す為には、メーカーと販社間で、ボリュームコミットや計画変動時の対応範囲など、従来、あいまいだったビジネスルールを明確化していくことが課題となる。
<櫻田 淳史>