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くるま産業”次代”への羅針盤 『開発費の透明化(4)』
弊社親会社であるアビームコンサルティングが、自動車業界におけるモノづくりから販売、マーケティングに至るまで、“次代”への示唆をさまざまな角度から提案していく。
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第 1 弾は、アビームコンサルティング製造/流通事業部の川本剛司が開発費の透明化について 5 週に渡って紹介する。今回はその第 4 回にあたる。
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第 1 弾『開発費の透明化(4)』
前回、車両メーカ/部品サプライヤそれぞれの視点から、車両開発費管理の利点を述べた。今回は、車両メーカにおける開発費管理にフォーカスし、開発費管理の利点を享受する為の代表的な切り口を、「車両開発軸での観点」、「部品 (技術)開発軸での観点」から考察する。
【車両開発軸での観点】
新規開発車両には通常、開発コードが割り当てられる。新規開発車両に対する開発費総額を把握する為にはまず、当該車両開発に伴う費用をこの開発コードに対して計上する事が重要となる。
複数車両の開発が同時並行している車両メーカにおいては、どの車両開発に対して発生した開発工数なのか?発注部品費なのか?等を詳細に現場レベルで管理する事が重要である。
また、開発規模によって差異はあるが、車両開発にはいくつかのフェーズ(企画フェーズ、試作フェーズ、量産準備フェーズ等)が存在し、各フェーズでの費用を“見える化”する必要もある。
車両開発に伴う種々多様な作業に対する費用を、膨大な関係者が、フェーズ毎に計上・集約して初めて、一つの車両・対象フェーズ毎の開発費を算出する事が可能となる。
開発費の予算や実績を月/年毎に計上するだけでなく、車両開発の各フェーズにも計上することで、車両開発スケジュールが変更しても、フェーズ毎での開発費変動把握や予実管理が可能となる。
但し、特定車両・フェーズに対して計上する事が不可能な業務形態や業務内容も存在する。これらの業務に対する予算や費用に関しても精度の高い管理を行う為には、対象予算や費用を特定業務として単独で管理するのか?対象車両で按分するのか?等の、詳細なルール決めがまずもって重要となる。
例えば、車両グレード別(即ち標準ではなく、オプション部品)の開発費や、複数車両で使用される部品の開発、設計変更等の業務が挙げられる。
さらに、前回述べた「次期投入車両の開発費の予測」のためには、開発車両特性と合わせた管理のルールも必要となる。新規開発車両での膨大な開発費が次期車両では”流用技術”となり、開発不要となる部品(技術)領域もあるからだ。
この場合、実際にどれだけ“開発費がうく”事になるのか?という具体的な数値の把握も可能となり、直接的ではないが「コスト削減額」の一部として捉える事も出来る。
【部品(技術)開発軸での観点】
開発費を部品(技術)開発軸で捉える場合、まずはどの部品(技術)の開発費を管理対象とするのか?を考える必要がある。これは、部品単価や量産時の需要量、調達方法(内製か外製か)等、様々な内部・外部要因を考慮して決定する必要がある。
部品の開発には、車両の開発のフェーズとは異なるフェーズが存在する場合があり、このような部品の場合、部品特有の開発フェーズのみで費用管理を行うと、車両のフェーズとのつながりが見えない等の問題が生じる。これを解決するためには例えば、費用を一旦部品の開発フェーズに計上し、そのフェーズを車両の開発フェーズに割り当てる、といった方法が有用である。
また、部品開発軸での管理方法の重要な前提として、類似開発部品のグルーピングが挙げられる。車両メーカが管理する部品点数(過去開発車両含む)は、内外製含め数百、数千万という膨大な数となり、このため各社では類似部品をグルーピングして管理をしている。
グルーピングの目的は、部品のシリーズ化や共通化であったり、特性や原価のシリーズ別一括把握であったり、不具合時の対策横展の為であったりと様々であろうが、開発費管理にも利用する事が出来る。
新規部品の開発には多大な費用が発生するが、既存部品をベースとした派生部品の開発の場合、流用出来る項目(設計/評価項目等)があれば、費用(工数や試作費等)はその分抑えることが可能となる。これを、グルーピングという概念を外して全く異なる部品として管理してしまうと、類似部品であるにも関わらず開発費に大きな差が出てしまう結果となる。
新規開発時の部品開発費と、それをベースとした派生部品開発費をグループ毎に管理する事で、車両開発時の部品特性に基づく、より詳細な開発費予測と実績比較が部品軸で行えるようになるのである。
但しこれも、各社のグルーピング基準(対象類似部品群の選定)や、グルーピング情報の管理方法(部品番号に含める、属性情報として管理する、など)等のルール決めが、まずは必要となる。
車両や部品の開発は 1 つの大きなプロジェクトである。プロジェクト管理でもっとも肝要なものには日程管理、フェーズとフェーズ内の作業(タスク)管理、そして予算とその実績管理がある。つまり、今回述べてきた切り口はプロジェクト管理という視点から見ると、一般的な切り口なのである。
更に、各切り口に対して、詳細化レベルや管理スパン、管理体系も考慮しなければならない。より精度の高い分析や予測のために、より詳細かつ頻繁に管理を行おうとすると、現場の開発担当者の負担が大きくなってしまう。また専任の担当者を置いたとしても、膨大な情報量となってしまえば、処理しきれない可能性もある。
各社にとって必要不可欠な情報と管理工数との最適な落とし所を見つける事は難しいかもしれないが、管理を容易にするための一つの方法として、IT ツールの活用が有効である。
そこで最終回となる次回は、弊社において実現した「車両開発費の見える化」に対する具体的なソリューションを御紹介したい。
<川本 剛司>