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今更聞けない財務用語シリーズ(16)『上場廃止基準』
日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。
第16回の今回は、上場廃止基準についてです。
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ニッポン放送がフジテレビとライブドアの株式取得合戦の結果、上場廃止になる、もしくは西武鉄道の虚偽報告の結果、上場廃止になるなど、昨今上場廃止についての事件が多い。
今回はこの上場廃止について解説していく。
上場廃止基準は各市場毎にルールを定めている。例えば、東京証券取引所の場合では、以下のような上場廃止基準が設けられている。
1.株主の分布状況
(1)少数特定持ち株数
株式保有数上位 10 社の持ち株数を制限している。
上位 10 社合計で 75%に達した場合は 1年間の猶予期間に入った後、改善されなければ、上場廃止。90 %の場合は猶予期間無しで上場廃止。
(2)株主数
上場株式数に応じて株主の最低必要数が決まっている。
例えば、上場株式数が1 万単位未満の場合は、最低400人の株主が必要であり、株主数が足らない場合は 1年間の猶予期間に入り、改善されなかれば上場廃止となる。
2.上場時価総額
10 億円未満の場合は猶予期間 9 ヶ月間に改善されなければ上場廃止。
3.債務超過
債務超過となり、1年以内に債務超過が解消されない場合。
4.連結財務諸表の虚偽記載等
虚偽報告を行い、その影響が重大な場合。もしくは監査報告書に「不適正意見」、「意見の表明をしない」と記載され、その影響が重大な場合。
5.売買高
最近 1年間の月平均売買高が 10 単位未満、もしくは 3 ヶ月間売買不成立。
6.その他
銀行取引停止や再生手続きなど会社の存続に影響を与える事態となった場合。
つまり、一部の株主で独占せず大勢の投資家の興味を引き、情報の開示を誠実に行っていれば、上場廃止とはならない、言わば当たり前の事をルールとしているだけなのである。
では、何故上場廃止となるような事態になってしまうのだろうか。
大きく分けて以下 3 つのケースがあるのではないだろうか。
1.上場企業の買収が行われる場合
2.上場しているにも係らず、一部の株主が株式を手放さない場合。
3.虚偽報告や、企業の存続危ぶまれる事態となった場合
ライブドアの場合は上記 1 の場合であり、西部鉄道の場合は上記2を隠蔽しようとし、結果として 3 になったのである。
1 については前回のメルマガでも書いたが、株主の不利益にならない方法で企業を買収するのであり、且つ株主が買収後も満足できるような買収であれば問題にはならないだろう。
3 については 1、2 の問題を隠すために実施されることがほとんどだと思われ、ここでは議論しない。
最後に 2 である。今回の西武の問題をはじめ、まだ紙上に現れないような一部の株主が独占している企業が多いのではないだろうか。
仮に上場後も上位の株主が上場基準ギリギリの 70 %を保有していたとしよう。当然市場で売買される株数は全体の 30 %が最大限の株数となり、実際にはこの半分も市場で売買されないだろう。
このようになれば、当然流通量が少なくなってしまうので、当然株価は乱高下する。本来の公正な株価からは考えられないような値動きとなってしまうのだ。
この結果、この株式はますます投資家の興味を失い、流通量も減り、結果として上場している意味の無い株式となってしまうのだ。
当初から株式を持っているオーナーや一部の株主は株価が上がった分売却をすれば多額の現金が得られるだけの存在になってしまう。
オーナーや一部の株主も今まで手塩にかけて企業を大きくし、上場させてもすぐに身を引きにくいのは心情的には理解できる。今まで同様の権利行使や主張が通らなくなってしまうからだ。
一方で、上場してすぐに保有している株式を全部放出することも許されない。なぜなら他の株主はその経営者兼オーナーが引き続き経営を委任するという前提で株式を保有している可能性が大きいからだ。
経営者兼オーナーは必要以上に筆頭株主としての権利を行使し過ぎてはならない一方、経営者としての義務は果たさなくてはならないのである。
権利は放棄しながらも義務は果たさねばらない、という立場に立つのが上場。まさに、嫁入り後の娘に対する親の理想像を追求するに同義である。
つまり、娘を嫁に出すことで「娘家族」という単位での独立を実現させることが社会全体として重要であるのと同様に、(家計は最小の経済単位である)会社を上場させて独立単位として世の中に送り出すことは、その企業がより多く社会に貢献し、結果として更なる成長を実現する為には非常に重要なことである。
上場企業のオーナー社長は、こうした前提のもと「オーナー」(株主)としては、会社に常に説明責任に基づく積極的な適時情報開示を求めつつ、「経営者」としては他株主を含むステークホルダー全員が納得出来る経営方針を打ち出す大きな責任を負っているのを忘れてはならない。
<篠崎 暁>