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think drive (10) 『フランクフルトモーターショー ~後編~』
新進気鋭のモータージャーナリストで第一線の研究者として自動車業界に携わる長沼要氏が、クルマ社会の技術革新について感じること、考えることを熱い思いで書くコーナーです。
【筆者紹介】
環境負荷低減と走りの両立するクルマを理想とする根っからのクルマ好き。国内カーメーカーで排ガス低減技術の研究開発に従事した後、低公害自動車開発を行う会社の立ち上げに参画した後、独立。現在は水素自動車開発プロジェクトやバイオマス発電プロジェクトに技術コンサルタントとして関与する、モータージャーナリスト兼研究者。
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第10回 『フランクフルトモーターショー ~後編~』
前回に引き続きフランクフルトモーターショーを取り上げる。
前回取り上げたDCXとVWに続き取り上げたいのは、やはりAUDI、BMWといったドイツのカーメーカーだ。
AUDIからはA4とRS6が初公開された。
A4は一足先に発表されたクーペモデルであるA5とプラットフォームをともにするセダンで、フロントのオーバーハングを短くして前後の重量バランスを改善する等スポーティな方向へ向かっている。これはM.Benz Cクラスと同様にライバルとなるBMW3シリーズのスポーティーさに影響を受けているといえるだろう。ガソリンエンジンも新開発のバルブリフト機構を搭載し、スロットルレスまではいかないが、ある運転領域ではかなりの燃費改善が行われている。これで Dセグメントでの役者が揃うことになり、日本でもおそらく来春には発売開始されるだろうから、これからの展開に注目だ。
AUDIからもう一台の世界初公開は、RS6。
もちろんA6の超スポーティバージョンだが、なんとAUDIがもつエンジンラインナップのなかでもっとも大きい最高出力を誇るという。5.2L V10ツインターボのエンジンは最高出力580ps、最大トルク66.3kgmというとてつもない力をもち、0-100km/h加速が4.8秒という超高性能で、来週発売予定だという。
そしてBMW。
BMWは”Efficient Dynamics”というコピーのもと、走りの楽しさは決して忘れずに持続可能なモビリティ社会を目指していくという。展示ブースで一番目立ったエリアでは、全車両のCピラーに、そのクルマの燃費とCO2排出量を表示するほどの気配りがされていた。 BMWは他社に先駆けバルブトロニックを開発するなど、ガソリンエンジンの効率アップには積極的だった。 その BMWが今回のショーで推し進めていたのが、車両トータルとしての燃費向上、効率向上。オートスタートストップシステムによる信号待ちなどでのエンジン停止機能、減速時に積極的に行う回生エネルギー、そしてパワステ、冷却ポンプの電動化、冷間時にラジエータグリルを閉じて空気抵抗を減らすなどなどのアイテムだ。これらのアイテムを搭載する事で、 2008年に1995年比でCO2を25%削減しようとしている。すでに22モデルが 140g/kmを下回っていて、苦戦をしいられているドイツメーカーのなかでは優れた状況だといえる。
そのBMWからはX6コンセプトが世界初公開された。
X3、 X5、 の流れをくむこのモデルはスポーツアクティビティクーペというSUVの一つと言える位置づけのクルマ。 このX6コンセプトももちろんEfficientDynamicsのコンセプトに基づいているが、その代表がハイブリッドだった。こちらのハイブリッドシステムはGM、DCX と共同開発提携を組む流れで、先に紹介した2モータタイプの2モードフルハイブリッドシステムだ。このX6コンセプト、来年には発売され、じきにハイブリッドも追加されるだろう。
残るドイツカーメーカーと言えば、ポルシェだろう。
いまやVWの筆頭株主であり、プレミアムスポーツカーメーカとして揺るぎないポルシェからは、911GT2がワールドプレミアとして登場した。 480psというハイパワーのターボモデル用エンジンをさらに50psアップして、 530psという最高出力を誇る。この大パワーをAWDではなくRWD、つまり後輪駆動で路面へ伝える。そして PSM(車両安定制御装置)を装備しないという割り切りのよさ。来月発表される日産 GT-Rはニュルブルクリンクで911ターボを目標にして開発を進め、それを越えたとされているが、この GT2に対してはどうなのだろうという期待がつきない。なお、このGT2、燃費が8km/Lと前モデルから 15%も向上しているということをしっかりアピールしていることからも時代背景を感じる。
ポルシェGT2やAUDI RS6を紹介したところで、500ps越えのワールドプレミアを3台紹介する。
まずはM.シューマッハの登場で大混雑したフェラーリ。 F430をベースに200kgもの軽量化を行い、F430よりも20ps大きい510psを誇る。 随所のF1のテクノロジーを詰め込み、圧倒的なオーラを放っていた。そして同じくイタリアからはランポルギー二。いまではVWグループの一員だが、やはりランボルギーニというブランドはきちんと引き継がれている。ムルシエラゴをベースにより個性的にデザインされたエクステリアは戦闘機のイメージ
だという。650psで0-100km/hが3.4秒という速さ、値段もお高くて 100万ユーロ(約1億6000万円)だそう。
もう一台は、アストンマーティンDBS。このところDB9, V8 Vantageと好調なアストンマーティン、今年の春に PAGグループから売却されブランドオーナーが変わったが、アストンらしさは何も変わりがなく安心した。 DB9をベースにレーシングエンジンと同じく手組されるV12は517psの最高出力を誇る。とにかくこのクルマカッコ良くてエレガント。ポルシェGT2、フェラーリ F430スクーデリアにそれぞれ独自のオーラがあるように、アストンマーティン DBSには、また独自のオーラがあり、とても素敵な競演だった。
さて、このメルマガが配信されるのが9月25日。 ということは、あと一ヶ月で東京モーターショーだ。今回のフランクで日本勢は少々地味だった、というより来月の東京モーターショーを前にして”嵐の前の静けさ”とも感じれられた。地味ながらも数台紹介した日本のカーメーカーからの出展車があるのだが、東京でのバージョンアップも期待して来月の紹介としたい。
<長沼 要>