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think drive (21) 『 クルマに関わる税金 』
新進気鋭のモータージャーナリストで第一線の研究者として自動車業界に携わる長沼要氏が、クルマ社会の技術革新について感じること、考えることを熱い思いで書くコーナーです。
【筆者紹介】
環境負荷低減と走りの両立するクルマを理想とする根っからのクルマ好き。国内カーメーカーで排ガス低減技術の研究開発に従事した後、低公害自動車開発を行う会社の立ち上げに参画した後、独立。現在は水素自動車開発プロジェクトやバイオマス発電プロジェクトに技術コンサルタントとして関与する、モータージャーナリスト兼研究者。
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第21回 『クルマに関わる税金』
自動車税が排気量による区分けではなく、CO2排出量により区分けされるという噂が飛び交い始めたので、今月はクルマに関わる税金をテーマにしてみる。
まず、現在日本ではクルマに関わる税金がどれくらいあるかをみてみよう。
購入時、保有時(ナンバーを取得した状態)、使用時、に分けてみる。
購入時には、自動車取得税と消費税がある。消費税はいわゆる消費税で、コンビニに買い物をする場合と同じく、購入価格の5%となる。取得税は、新車購入の場合、中古車購入の場合に分かれるが、概してクルマのグレードに至るまで細分化されて課税されている。おおよそでいえば車両価格の5%程度で、中古車のほうが少なく、古い中古車などは非課税となる。
保有時には自動車税がある。これは毎年4月1日時点での所有者または使用者に納税義務が発生するもので、地域、車種、排気量などで課税額が決められている。また、車両の車種と重量で課税額が決められている重量税も保有時にかかる税金だ。重量税は、いわゆる車検時に納付する仕組みとなっている。
そして、使用時には、燃料への課税がそれに当たる。ガソリンにはガソリン税(揮発油税+地方道路税)、軽油には軽油取引税だ。そして、消費税も加算され、ガソリンの場合は二重課税になっている。
と、このように実に様々な形態で、徴収されているのだが、みなさんは納得しているでしょうか?
もっとも全て法律により定められていて、しかるべき手続きを経てきたものなのだが、個人的には、制定された時代背景から大きく社会が変化してきている現在、根本的な見直しが必要なのではないかと思う。
冒頭に書いた自動車税の見直し議論は大歓迎だが、そもそも、クルマというものへの価値が大きく変わってきている今、多くの税金の成り立ちは既に概念として成り立たないだろうし、クルマに関わる課税体系の見直しは、タイミング的にも丁度よいのではないだろうか?
今年の4月には暫定税率が期限切れで一瞬廃止されたが、すぐ継続された。
この際も、CO2削減を目指す現在の社会において、ガソリンの末端価格が低下するのは筆者も反対したが、暫定税率を継続させるべきという事ではなく、抜本的な見直しを行い、課税する意味とその税金の使い道を見直し、環境負荷低減に貢献するような課税によって末端価格を維持、場合に寄っては上昇させるべきだと考えていた。
しかし、環境負荷を考えると末端価格を下げるべきではないという、主張だけが聞こえてきてその手段には暫定税率の維持、という極めて、ちぐはぐな結果となったのが非常に残念である。
もっとも、暫定税率だけでなく、クルマに関わる税金は道路特定財源の見直しにも繋がり、ようやく一般会計になったこちらも、再び、道路特定財源へなるかもしれない、という噂もあり、しばらくは混乱がつづくかもしれない。また、同様に冒頭に書いた自動車税についても見直しも、軽自動車という日本特有のカテゴリーをどうするか?という議論とも重なり、一筋縄では行かないだろう。
ところで、高度経済成長とともに増加の一途をたどってきた自動車も、今年に入って保有台数が減少へと転じた。このことからもクルマというものの価値が変わっている事が窺える。前述した、道路特定財源見直し議論、揮発油税の暫定税率期限に関する議論、そして、自動車税の課税対象区分の見直し、と、クルマに関わる税金に関心が集まっている今、時代背景にあった課税になるように願うばかりだ。
最後に、もはやクルマは贅沢品ではなくなったと思うが、環境負荷を与える存在としてクルマは否定できなく、いかに環境負荷をかけているかによって課税されるべき、という論理で考えてみると、
・消費税は引き続き、課税対象とする。
・取得税は、クルマを製造する際に使うエネルギー、CO2排出量から課税額を算出する。
・自動車税、重量税というただ保有するだけで必要となる税金は廃止。すくなくとも一本化する。
・使用時に発生する環境負荷は、ほぼ燃料消費に比例するので、ガソリン/軽油等の燃料に課税。
・これらの取得税と燃料に課金される税金は、環境負荷低減につながる投資に用いる。
と、すっきりする。
<長沼 要>