勝手にホームページ診断 (4)  『マツダ デミオ』

自動車の販売・マーケティング活動におけるホームページの重要性は今後、更に高まっていくことが予想されます。

SE のキャリアを経て、現在は自動車好きの中小企業診断士、Web コンサルタントとして活躍する遠藤康浩が、その商品の持つ特徴や魅力が適切に消費者にコミュニケーションされているか、という視点から車種別のホームページを診断していくコーナーです。

【筆者紹介】
中小企業診断士。住商アビーム自動車総合研究所アドバイザー。(株)NTT-ATテクノコミュニケーションズでSEとして勤務後、経営コンサルタントとして独立開業。現在、中小企業向けホームページのコンサルティングを中心に活動。

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第2回 『マツダ デミオ』

【今回の診断ホームページ:マツダ デミオ】
http://www.demio.mazda.co.jp/

概要: マツダ最大の販売台数を誇る主力モデル。居住性を重視した先代のスタイルから大きく転換し、スタイリッシュなイメージを強調し、大型化傾向にあるライバル車との差別化を図ると同時に、軽量化を追求し、低燃費も実現している。

ターゲット層: 独身の若い女性。

診断のポイント:待望の新型車にかけるマツダの期待は大きく、新型デミオは思い切ったイメージチェンジを図っている。新型デミオは、市場、特に同社がターゲットと掲げる独身女性に受け入れられるのかが勝負になる。白のシート、ハンドバッグを置けるセンターコンソールなど、女性好みの装備を備え、”NEW TARGET”にアピールしている。

【トップページの使い方がうまい】

今回のお題はマツダ・デミオである。今回のフルモデルチェンジで、大幅にデザインを変更しており、マツダが狙う”NEW TARGET”に対して、どれだけ訴求できるホームページになっているかがポイントになる。

まず、ホームページを開いてみると、私の環境(1024×768 IE7.0)必要な情報が一画面にすべて表示されている。特に「カタログ請求」や「販売店検索」のような次のアクションを促すメニューが画面下方にぴったり収まる形で、しかも違和感なく(デザインされた状態でと言った方が適切か)表示されている。

このトップページの使い方はとてもうまいと思う。
Webサイトにおいてトップページの役割はきわめて重要である。いかに閲覧者が必要としている情報を簡素にかつ的確に見せるか、言い換えれば「このホームページにはあなたの役にたつ情報がありますよ」ということを伝えるかが勝負になる。

クルマのホームページを見る閲覧者は、テレビCMや雑誌の広告などでそのクルマの存在を知り、アクセスする人が多いと思われる。彼らのニーズはテレビや雑誌ではわからない「何か」(これは人によって様々だろう)をチェックして、次の行動をおこす準備をするためである。

デミオのホームページは、知りたい「何か」と今後の行動を起こす入り口が違和感なく配置されている点で、とても良い構造になっていると思われる。敢えて改善点を挙げるとすると、トップページの左側にクルマの大きな写真が配置されているが、一言でこのクルマを表すコピー、例えば他のページでも使われている「コンパクトカーのすべてをもう一度作り直しました」のようなコピーが入った方がより、閲覧者に「役立つ情報があるんですよ」ということをアピールできるのではなかろうか。

【閲覧者のことを考えているサイト構成】

新型デミオのホームページをじっくり見てみると、閲覧者に「気を遣っている」点が随所に見られる。

まずは色遣いである。
サイト全体がグリーン基調で統一されている。メインに使用しているクルマの写真ももちろんグリーンであり、枠線や現在選択されているメニューの色などもグリーンになっている。
細かい話のようであるが、色を統一することによって、閲覧者は不安を感じずにホームページを見ることができる。ネットサーフィンをしていると、たまに自分がどのページをみているか直感的にわからなくなってしまうことがあるが、このサイトに関してはそのような心配は無用であろう。

そしてRSSでホームページの変更情報をアップしている点が挙げられる。RSSはホームページが更新されたことを、登録してある人が知ることができる仕組みである。これにより、再閲覧の頻度を向上させることができる。他の車種でもやっているところはあるが、RSSの登録が容易であるという点で、親切な設計と言えるだろう。

最後は「ショートカット」である。
「イントロダクション」→「デミオの魅力」を選択すると、8つのデミオの魅力についての、「ショートカット」が現れる。それぞれのリンク先は「インテリア」や「走行性能」のメニューに配置されているコンテンツである。

閲覧者は「走行性能」や「快適性能」を知りたいのではなくて、「低燃費であること」や「小物入れが充実していること」を知りたいのである。それぞれをカテゴリーに分類するのは、ホームページ制作者側の都合でしかありません。

このショーカットを置くことによって、制作者側の都合ではなく、閲覧者側の都合でコンテンツを見せることが可能になっている。ショートカットを用意することによって、必要な情報まで到達する時間も短くなっているはずである。

残念なのは、ショートカットを押すと1枚目は「デミオの魅力」にすぐに戻れるようになっているのだが、2枚目以降は戻れないようになっている。せっかくショートカットを用意したのだから、どのコンテンツからも戻れるようにした方が、よりユーザビリティが増すと思われる。

【ホームページの出来=ヒットではないが・・・】

今回の新型デミオのホームページは、細かい点はいくつかあるにせよ、全体的によく出来ていると言うのが私の印象である。しかし、現時点でホームページの出来=ヒットとならないのもまた現実である。大ヒットの車種のホームページが、全然ダメであるというケースもあるくらいである。

やはりホームページの重要性というのは各社、あるいはプロダクト毎によって温度差があるのが実態であろう。ホームページは広告媒体の一手法に過ぎず、他のマーケティングの要素によって、販売台数も大きく変わっていく。それは重々承知しているが、今回のような閲覧者の立場に立ったホームページの存在の有無が販売に無視できない影響を与える日が、近い将来に必ず訪れるのではないかと思う。
なぜなら、平成生まれの、子供の頃からネットに慣れ親しんでいる世代が、普通自動車免許を取れる年齢に達しているのですから・・・

<遠藤 康浩>