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勝手にホームページ診断 (8) 『輸入車のホームページを見てみる(3)』
自動車の販売・マーケティング活動におけるホームページの重要性は今後、更に高まっていくことが予想されます。
SE のキャリアを経て、現在は自動車好きの中小企業診断士、Web コンサルタントとして活躍する遠藤康浩が、その商品の持つ特徴や魅力が適切に消費者にコミュニケーションされているか、という視点から車種別のホームページを診断していくコーナーです。
【筆者紹介】
中小企業診断士。住商アビーム自動車総合研究所アドバイザー。(株)NTT-ATテクノコミュニケーションズでSEとして勤務後、経営コンサルタントとして独立開業。現在、中小企業向けホームページのコンサルティングを中心に活動。
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第8回 『輸入車のホームページを見てみる(3)』
3回にわたって診断してきた輸入車のホームページであるが、今回が最終回である。
前回同様、各社のホームページを個別にみていく。前回はドイツ車を取り上げたが、今回はフランス車と韓国車のメーカーを取り上げてみたい。
【人気の上昇もうなずけるプジョー】
プジョー・ジャポン
http://www.peugeot.co.jp/index.html
日本市場でじわじわと人気が出てきて、最近では一定の存在感を示しているプジョーであるが、ホームページを見て何となくその理由が分かるような気がする。
まず、今売りたい(お勧めの)車種が一目瞭然である。207を買ってください、というメッセージがかなり強烈に伝わってくる。ページの構成も非常にシンプルで、すべての車種のページにトップページから容易に移動できるようになっている。
207や307といった車種それぞれにハッチバックやオープン、ミニバンなどの色々なバージョンの車種があるのだが、それを前面に出さないことでシンプルでわかりやすい構成になっている。
前回紹介したフォルクスワーゲン
(http://www.volkswagen.co.jp/index2.html)では、「Polo」で2車種「Golf」で4車種など、派生車種も一つのメニューとして用意していた。
自分が欲しいのが「Golf」なのか「Golf Plus」なのか「Golf Touran」なのか、それぞれのページを開かないと分からないという作りであった。
一見するとフォルクスワーゲンの方が親切にも思えるが、実際に閲覧してみるとプジョーの方がナビゲーションしやすい。例えば207を選択すると、6種類の派生車種を選択する画面になる。車種名の上にポインタを合わせるだけでその車種の写真と特徴が表示される。非常にシンプルかつ見やすいメニュー構成だと思う。
もう一つプジョーの特徴的なのは、価格が見やすく明示してあることである。派生車種のところまで行き着くと、価格が表示される。他のメーカーでみると、フィアット(http://www.fiat-auto.co.jp/)とボルボ
(http://www.volvocars.co.jp/)が価格を見やすくしている。今まで国産車に乗っていた人が輸入車を買う時に、やはり一番気になるのは価格(というよりも相場観)であろう。購入を検討している人の立場に立ったデザインと言えるだろう。
ちなみにトップページのナビゲーションが一番素晴らしいと思ったのはボルボである。 各車種名にポインタをかざすと、その車種の概要と価格帯が表示される。しかし、どこにもポインタがあたっていない状態では何も表示されず、お勧めの車種がなんなのかも分かりにくい。総合的に見ればプジョーの方が優れたデザインと言えるだろう。
他の要素を見てみても、キャンペーンの案内にオートローンの案内、カタログ請求や試乗へのナビゲート、などソツがない。惜しむらくは、メニューの日本語化がされていないことと、ディーラーの一覧が見やすい箇所に配置されていないことである。
前々回も述べたが、輸入車を買う時に心配になるのはメンテナンスである。
ディーラーが身近にあるのかないのかは、購入時に気になることの一つである。
デザイン的にも余裕がありそうなので、ぜひわかりやすいリンクをトップページに追加していただきたい。
【デザイン文句なし!でもモノ足りないヒュンダイ】
ヒュンダイ・モーター・ジャパン
http://www.hyundai-motor.co.jp/index.html
ペ・ヨンジュンが「ソナタ」のCMに出演したことにより、主婦層に一気に知名度の上がった感のあるヒュンダイだが、セールスにはなかなか結びついていないようである。しかし、日本市場で売っていこうという心意気はホームページの力の入り方からも伝わってくる。
まずトップページには、車種のラインナップがあるが、三角形のデザインを巧みに取り入れたことにより、車格順に並んでいることが視覚的に分かる。このデザインはとても素晴らしいと思う。
そして、各車種のところにポインタをかざすと、Flashでその車種の写真や排気量、特徴が端的に紹介されている。閲覧者は自社のクルマのことを知らないという前提で用意されたコンテンツであると思われ、知らない人に知ってもらうという意図が十分に伝わってくる。
価格はプジョーのように明示していないが「韓国車は安い」というイメージがあるためだろうか。実際に同排気量の日本車と比較するとかなり安いので、すべてを見終わったあとに「これだけついてこの価格です」と見せる戦略なのかも知れない。
そして忘れてはならないのがトップページの一番目立つ場所に置かれている「10年10万キロ保証」のバナーである。 やはり「韓国車は安いが品質が・・・」という懸念が日本人の間であるのは事実だろう。それをしっかりと自覚しているということであろう、品質を第一にアピールしているのは適切である。
メニューの日本語化もきちんと出来ているし、アフターサポートやディーラー検索もわかりやすい位置にある。カタログ請求と見積もりもきちんと配置している。トップページのデザインだけであれば(僭越ながら)「ホームページ・オブ・ザ・イヤー」をあげてもいいくらいの出来だと思う。
しかし、良くできてはいるのだが、見れば見るほど何か物足りない気がしていた。
数日間悩んで分かったのだが、このホームページからはヒュンダイという会社のクルマ作りの姿勢なりメッセージがほとんど伝わって来ないのである。他の輸入車メーカーは、この点のメッセージにおいては比較的明確であった。新興メーカーゆえの歴史や文化の問題なのかも知れないが、このメッセージに乏しいのが残念である。
世界一の品質を誇る自動車を作っている国の人が輸入車を買うのは「あえて」である。なぜ「ヒュンダイ」がいいのか、なぜ「ヒュンダイ」じゃなきゃダメなのか。ここを明確に伝えることが、重要ではないかと思う。
とは言え、よく考えられているホームページであることには違いない。素直に拍手を送りたいと思う。
筆者が沖縄に行った時に、レンタカーのTBに乗る機会があり初めて韓国車に乗ったのだが、思っていた以上に乗りやすいいいクルマであった。今後、ヒュンダイテイストをうまく表現できるようになれば、日本市場へのさらなる進出も可能であろう。
【輸入車のホームページ診断の成功のカギ】
3回にわたって検証してきた、輸入車のホームページ診断も今回で終わりである。
改めて各メーカーのホームページを見比べてみると、お国柄であったり、ブランド力の有無であったり、日本市場をどれだけ重視しているかであったりと、色々な要素でホームページの作りも違っていることを再発見し、とても興味深かった。他にもツッコミを入れたいメーカーはあるのだが、これは次の機会にとっておくことにする。
先述したとおり、日本人が輸入車に乗るのは「あえて」だと思う。日本車にはない何か、これをうまく表現することが輸入車のホームページにとって必要不可欠な要素であり、成功のカギであると思う。
<遠藤 康浩>