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高級車は多機能であるべきか?
◆中国での自動車初期品質調査、日本ブランドが5部門でトップ。J.D.パワー
新車購入後2~6カ月経過したユーザー9720人を対象に、経験した不具合を指摘してもらい、100台当たりの不具合指摘件数をスコアとして算出。今回は、不具合指摘項目を前回までの135項目から228項目に増やした。
小型車部門で「天津・シャーリー」、プレミアム小型車部門で「スズキ・スイフト」、エントリー中型車部門で「ホンダ・シティ(フィットアリア)」、中型車部門で「トヨタ・カローラEX」、プレミアム・中型車部門で「現代・ソナタ」、上級プレミアム・中型車部門で「日産・ティアナ」、MPV部門で「ホンダ・オデッセイ」がそれぞれの部門トップに。小型車部門での不具合指摘件数は業界平均の2倍近くにのぼった。
「ユーザーは新車の品質に関して、故障など製造に起因する不具合と同様に、新しい技術や装備品がどのように設計に取り入れられているかが重要と考えている。高級車には様々な最新技術が導入されていることが多いが、操作が複雑になり、平均的なユーザーにはかえって不満を感じさせる可能性がある。設計関連の不具合が不具合指摘件数全体に占める割合は、小型車の30%に対し、高級車では40%近くとなる。 業界全体では34%であることも考慮すると、このことは特に重要と言える」と調査責任者。
<2008年02月18日号掲載記事>
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【中国市場におけるIQS調査】
自動車業界では定番となっている J.D. パワーの自動車初期品質調査(通称IQS)であるが、先週は中国市場での調査結果が発表となった。
この IQS であるが、新車購入後のユーザーを対象に、実際に経験した不具合を指摘してもらい、100台当たりの不具合指摘件数を算出したものであり、世界各国の市場別の調査結果を発表している。数字が少ないほうが初期品質が優秀であることを示している。
中国市場については、2004年からデータが公表されており、今回が 4 回目となる。今回の調査では、従来の「壊れる」や「動かない」といった製造に起因する不具合だけでなく、米国他の調査でも盛り込まれるようになった「使いにくい」や「使い勝手」といった設計に起因する不具合も項目に盛り込まれている。
今回の調査結果でも、昨年同様 7 セグメント中 5 部門で日本ブランドがトップを占めており、中国市場でも日本車の品質・信頼性の高さを示す結果となっている。詳細については、以下 J.D. パワーのホームページを参照して欲しい。
「J.D. パワー 2007年中国自動車初期品質調査」↓
http://www.jdpower.co.jp/
今回の調査結果の中で、特に注目したい点は、高級車の「設計不具合」についてである。J.D. パワーの調査結果によると、設計関連の不具合指摘件数の割合が、小型車の 30 %に対し、高級車では 40 %近くを占める、という。勿論、製造関連の不具合指摘件数が少ない結果、設計関連の不具合の割合が増しているということも影響があるとは思うが、J.D.パワーによると、高級車の様々な最新技術の導入が、操作の複雑化を招き、平均的なユーザーにはかえって不満を感じさせている可能性がある、と問題提起している。
一部の読者の方にはお叱りを受ける内容になるかもしれないが、今回は「高級車」に求められることについて考えてみたい。
【「高級車」は多機能であるべきか?】
日本市場では、「高級車」=「多機能」に近い感覚が浸透しているように思える。販売台数やコスト面も大きな影響を与えているが、最先端の技術はほとんどの場合、高級車セグメントでの新型車から導入されるため、消費者にも高級車は多機能だという印象を与えている。高級車の新型車発表には、「世界初の○○を搭載」といったアピールが不可欠になっているようにも思える。
これは、PC やデジカメ、携帯電話のような電気製品でも長らく同じ傾向であったと考える。近年こうした流れに問題提起する意味もあるのか、シンプルな機能でも高級感、といった内容を訴求する商品も出てきており、自動車業界でも、カーオーディオではその流れも存在している。
一方で、一般的には、消費者の方も、多機能なクルマを好む嗜好があり、高級なものほど、先進技術が導入されていることに違和感はない。先進的な安全技術のような性能面での技術だけでなく、利便性・快適性でも多機能化が進んでいるが、実質的に不要な機能であっても、その機能が入っていることに満足感を感じる部分もあるのではないだろうか。ディスプレイ・メーター等の表示系やスイッチ・ボタン等の操作系も複雑で細かいものが多く、その傾向も高級車の方が多いようにも思えるが、その中で自分に必要な情報・機能を覚えて使う習慣があるのかもしれない。
また、販売面でも、多機能化に伴い、オプションのセット販売が増えているように思える。オプション機能の増加により、販売管理上やむを得ないのかもしれないが、例えば、サンルーフが欲しいのに、セットオプションになっているので、特に必要ではなかった革シートもついてきた、というような状況が結構あるような気がする。多機能なほど高級、という文化の市場だから、これも許されているようにも思える。
【海外でも「高級車」は多機能か?】
一方で、欧州市場を見ると、必ずしも「高級車」=「多機能」ではないように思える。同じ車種のグレードを比較しても、日本車の場合と比較すると、機能面よりも性能面でのアップグレードに力点を置かれているように思える。また、操作・表示系についても、同じブランドのクルマであれば、ほぼ似たような使い勝手になっているように感じる。このあたりには、文化の違いが見える気がする。
オプション設定という点でも、欧州の高級車では、細かく色・仕様等を選べるサービスが普及している。シート皮革の種類であったり、内装の柄であったり、機能よりもこだわりに力点が置かれた内容になっている。
日本でも、かつて三菱自動車が、ユーザーが内装等を自由に組合せられるプログラムが設定されていたが、3年ぐらい前に終了している。当時は、小型車やミニバンで設定されたため、車種の購買層にあってなかったのか、そもそも文化の違いがあったのか、どちらにせよ、わざわざ選ぶのは面倒であるという意見も多かったようである。
こうしたことを考えると、市場によって、高級車の概念が違うことを改めて実感できる。
【新興市場の「高級車」はどうあるべきか?】
そこで、新興市場について考えてみたい。低価格レンジの小型車については、必要最低限の機能に絞った安価な小型車がエントリーレンジとして求められることは、どの新興市場でも似たような傾向がある。だからこそ、各自動車メーカーはこのレンジのクルマの開発に注力しており、某国メーカーの超低価格車が大きな話題になっている。
それらの新興市場でも、経済発展とクルマ社会の普及が進めば、より大きなクルマ、高級なクルマの需要が高まってくるはずである。既に新興市場で先進国の高級車に乗る高所得者層は、これまで先進国から持ち込まれた「高級車」という概念に慣れているかもしれないが、本当にその「高級車」に満足しているかは疑問である。
その市場や文化を把握し、機能・性能面を設計した「高級車」を地場の自動車メーカーが開発したら、いつの日か、先進国から横流しした「高級車」では勝てなくなる可能性だってあるかもしれない。
そのためにも、先入観を捨て、その市場のニーズを収集することが求められる。国内のメーカー・サプライヤの海外 R&D 拠点は着実に増えている。海外での収益に大きく依存している日本の自動車産業にとって、こうしたニーズを把握し、具現化していく機能がまさに重要となっており、海外 R&D 拠点に期待される役割は大きいはずである。
<本條 聡>