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新・業界ニュース温故知新 『構造変化の予感が異業種企業を惹きつける』
過去の自動車業界のニュースを振り返り、新たな気づきの機会として紹介していたこのコーナーですが、新たな形態にリニューアルします。
過去の記事で取り上げた内容を振り返り、現在の自動車業界と照らし合わせ、新たな視点で見直していきます。
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『構造変化の予感が異業種企業を惹きつける』
【参照記事】
『顧客と同じ目線に立つことが自動車シフト成功の鍵』
◆三菱化学、顧客企業との共同開発拠点「カスタマーラボ」を開設
<2007年03月18日号掲載記事>
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【異業種企業による自動車シフト】
今から 約 4年前の 2007年 3月期決算を振り返ると日本自動車業界の業績が最高潮に達するまさに一歩手前の年であった。
トヨタは販売台数が 832 万台と首位の座が目前に迫り、営業利益段階で約 2 兆 2300 億円、純利益で約 1 兆 6400 億円という利益を叩き出している。
そして、当時はそのような自動車業界の好業績の恩恵にあずかるべく、異業種のさまざまな企業が自動車事業拡大を狙っており、特に電気・電子系、素材系の企業に強くその傾向が見られた。
というのも、自動車業界は特に環境、安全対応として、車両の軽量化や電子化といった取り組みを当時から推進しており、高機能素材や電気・電子技術といった異業種が持つ知識、知見を自動車に導入する必要に迫られていたからである。
4年前のコラムでは、自動車事業拡大を狙う三菱化学が成形メーカーを支援するためにカスタマーラボを設置しそこに試作のための大型の射出成形機や試験設備などを導入した事例を紹介している。
また、その事例からは、顧客と同じ目線を持つパートナーとして顧客である成形メーカーを支援してあげることが自動車業界におけるビジネス拡大にもつながるという示唆が得られた。
(4年前のコラムはこちら)
『顧客と同じ目線に立つことが自動車シフト成功の鍵』
【金融危機下での停滞】
しかしながら、こののち、2008年夏の金融危機によって異業種企業の自動車シフトは一時停滞することになる。
かつて全社を挙げて自動車事業強化を表明していた日立製作所も、構造改革の一環として、 2009年 7月にオートモーティブシステムグループを分社化し、日立オートモーティブシステム株式会社を設立した。
厳しい業界環境に対応するため、収益責任体制の一層の明確化を図るとともに、意思決定の迅速化、生産拠点の整理・統合や人員規模の見直しなどによる事業の効率化を行わざるを得ないという状況であったといえる。
また、実際、以前であれば弊社にも頻繁に持ち込まれていた素材メーカーによる自動車事業参入の相談もこの時期には減少した。
最も金融危機の影響を受けた 2009年 3月期のケースを見てみると、トヨタの世界販売台数は既に世界首位にはなっていたものの 756 万台まで落ち込み、営業利益は約 4600 億円、純利益も約 4400 億円の赤字に転落した。
このような状況下では、異業種企業にとって自動車業界の魅力が下がって見えたのもある意味仕方がないといえるだろう。しかしながら、金融危機、ならびにその後の復調を経て、業界環境、業界構造は大きく変貌しつつある。
具体的には、地軸の観点からは中国に代表される新興国が中心になり、製品の観点からはハイブリッド車、電気自動車等の環境対応車市場が本格化してきている。
【構造変化の予感】
そして、業界の変化に伴って、以前とは異なる意味合い、目つきで異業種企業が自動車業界に注目、注力するという動きが出てきつつある。
かつての動きは、言うならば、既存の業界秩序の中に上手く入り込もうとするもので、そのために顧客目線が必要とされたが、現在の動きは単なる顧客目線ではなく、むしろ顧客にない目線の提供を通じて、自動車業界の新秩序の中でより大きく重要な役割を担おうとするものである。
例えば、電気・電子系ではパナソニックはトヨタに引き続き、 2010年 11月にテスラモータースへ 3000 万ドルを出資し、EV 用リチウムイオン電池の共同開発を加速させている。また、日本電産などでは自動車の電子化や環境車の普及を受け、今後 5年間で 400 億~ 500 億円を投じ、車載モーターを大幅増産することを表明している。
また、素材系でいくと、2011年 1月に東レはダイムラーと合弁、マジョリティを取る形で炭素繊維複合材料 (CFRP) 製自動車部品の製造・販売合弁会社を設立することを発表しており、自動車業界への注力度を高めている。
つまり、現在は自動車業界が変革期にあり、構造変化の予感が異業種企業を引き寄せている状況といえるだろう。
今後、異業種企業の知見が改めて注入されることにより、自動車業界が更なる進化を遂げることを願っている。
<秋山 喬>