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富士重工、社長直轄の「スバル原価企画管理本部」を新設
◆富士重工、社長直轄の「スバル原価企画管理本部」を新設
2005年3月までに2002年3月期比で、企業運営コスト30%減を必達へ
<2004年05月11日号掲載記事>
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「組織構造は戦略に従う」と言ったのは、チャンドラーである。
また、バーンズ、ストーカーは「環境に応じて機械的システムと有機的システムとがある」とした。
富士重工の新組織は、それら経営学における伝統的な組織理論の実践とも挑戦とも言える取組みであり、その成果に注目したい。
富士重工は、創立50周年を控えた2002年5月に発表した中期経営計画「FDR-1」(Fuji Dynamic Revolution-1)を実行中である。
それは、「存在感と魅力ある企業」、即ち「プレミアムブランドを持つグローバルプレイヤー」をビジョンに掲げ、2010年に企業のありたい姿を「カテゴリーNo.1」、「モノ先行技術ではなく人の心に響く技術」、「バリューチェーン全体でのプレミアムブランド」に置いた2007年までの各分野での実行計画である。
特に同社の売上の9割を占める自動車事業については、「世界1%シェアの主張」として「量より質」、ユーザーベネフィットと革新におけるプレミアムブランドの追求がテーマである。
その実現のために同社はAWDなど独自のコア技術に一層磨きをかけるとともに安全や環境等の技術的課題の解決やプレミアム商品の開発を強化する必要がある。マンガンリチウム電池の開発もその一貫である。
それには当然研究開発や設備投資を要し、そのリソースが求められる。同社がGMとのアライアンスや生産システムの柔軟化に加えて総合コスト構造の抜本的改善活動である「CSR-1」(コストストラクチャーレボリューション1)を打ち出し、04年度の企業運営コスト01年度比30%低減を目標としたのはそうしたところからである。
当初は直材費の低減が進み、1999年の79.0%から、00年74.8%、01年74.8%と低下し、FDR-1初年度である02年には72.9%まで下がった同社の原価率が03年に73.7%に再び上昇する。一方で、販管費率は99年以降一貫して上昇を続けてきた結果、03年度の営業利益率は4.9%、04年度は3.5%まで落ち込む。「カテゴリーNo.1」「人の心に響く技術」メーカーとしては寂しい。
そこでCSR-1の追加策として投入したのが今回の社長直轄組織である。正にトップの戦略コミットメントの実行のために新たな組織が生れたということ。収益目標の立案、商品企画、開発、購買、製造までの全原価に対して責任を負う部門で、現場と経営企画の両方の責任、権限を持つ。
従来の部門ごとの原価低減活動だけでは不十分として、戦略立案段階から抜けもダブりもない原価低減活動を行ない、CSR-1を完遂させるという。
興味深いのは、この組織が生産技術系のヘッドのもとに、購買のスタッフが結集し、さらに商品企画、設計開発、購買、生産技術の各部の部長が兼務で加わって構成される混成組織で、しかも社長直轄だということだ。
プロジェクトチームに似ているが常設組織でよりコミットメント性が高く、マトリックス組織にも似ているが同じ人間が縦軸にも横軸にも登場し、しかも通常マトリックス組織の弊害とされるツーボスシステムに敢えて企業の最高責任者が来ることで混乱を助長しかねない組織設計である。
原価低減活動は難しい。購買的な見地だけから大ナタを振るおうとすると製品や企業のDNAを殺し、ユーザーベネフィットと革新の面でのプレミアム性が失われる恐れがある。他方、開発、購買、生産技術など部門の利益と部分最適だけでは企業としての全体最適が達成できないことが結果に現われている。
そうした背景からこのような挑戦的な組織が生れてきたものと思われる。
しかし、考えてみれば同社にはこのような有機的な組織構造が向いているのかもしれない。レガシィ、フォレスター、インプレッサ等、限られた製品群と、水平対抗やAWDなどのコア技術に経営資源を集中特化した同社のビジネスモデルはいわば単品生産に近いからだ。
その意味では伝統的組織理論の実践ともいえ、また挑戦でもあるともいえる富士重工の実験の成果に注目したい。
<加藤 真一>