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仏ダッソーシステムズ、今年上半期(1~6月)の純利益22%…
仏ダッソーシステムズ、今年上半期(1~6月)の純利益22%増の6500万ユーロ
自動車や航空機向けの3次元CADが好調。売上高は5%増の3億6800万ユーロ
<2004年7月30日号掲載記事>
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フランスのダッソー・システムズといえば、その社名以上に「CATIA」と「ENOVIA」という商品名の方が有名なアプリケーションソフトウェアメーカーである。前者の商品(最新版は第 5 世代の「CATIA V5」」)は、三次元 CAD/CAM/CAE (コンピューター支援による製品・工程・性能設計) の分野で業界標準の地位にあり、後者の商品も PDM (プロダクト・データ・マネジメント)の領域では相当な浸透度で、自動車業界にもユーザーは多い。
「CATIA」や「ENOVIA」は、業界では性能的にも価格的にも高いハイエンドモデルの位置付けにある。誰にでも操作できるほど単純な製品ではなく、専門の教育が必要なので、導入しても使いこなすまでに時間を要する。にもかかわらず世界的に人気がある理由は、(使いこなせるようになれば)設計開発業務の単純化・標準化と設計情報の共有が可能になり、コンカレント・エンジニアリング(CE)と呼ばれる同時設計が可能になる結果、開発リードタイムが短縮され、費用の節約と市場ニーズの変化への対応スピード向上が可能になるからだ。
そういうメリットは昔から言われていたのに、日本では 3 次元 CAD/CAM や、デジタル・エンジニアリングには冷ややかな見方をする人も多かった。
というのも、欧米に比べて日本では設計業務の三次元化は遅れており、ずっと二次元が主流で来ているが、開発リードタイムは日本の方がずっと短かかったし、設計品質も日本の方が高いとされてきたからである。
そのことから、「ケイレツを使った日本のモノづくりの擦り合せ能力と、擦り合せプロセスの効率の高さ」が指摘され、逆に「三次元 CAD に頼った設計や、デジタル・エンジニアリングには限界がある」と批判されることも多かった。
それがここに来て、3 次元 の設計・解析ソフトや、PDM 等デジタル CE ソフトが急速な普及を見せ始めた原因は何だろうか。考えられる背景は 3 つである。
(1)製品が改良されたこと。
(2)全体最適追求の動きが強まったこと。
(3)開発工数が不足してきたこと。
このうち、一番目の要因は、ソフト自体の改良や、操作を簡易化・標準化させるミドルウェア型製品の登場により、製品自体が使いやすくなったことを指している。文句なくいいことである。
第二の、全体最適追求の動きも正常な進化だといえる。従来は、ブレーキならブレーキ、サスペンションならサスペンション、タイヤはタイヤと、別々に開発されてきた。それぞれの製品群ごとのモジュール化も進んできたし、安全性、環境適合性、利便性、快適性の追求も進んできた。
だが、もう一段上の機能や性能を求めるのであれば、そうした部分最適の思想だけでは限界で、より大きなシステム全体を見渡した全体最適の視点が必要になってくる。
内装部品や外装部品等の分野でも、コストダウンや生産性向上のみを目的にしたモジュール化だけでなく、電子的な車両制御技術を取り込む動きが強まっているが、そこでは 強固な機械設計と微細な高密度電子回路の両立(いわゆるエレメカ協調設計)が必要になってくる。
こうした製品や業種を跨った開発需要が増してくると、複数の部品分野を束ねる共通言語として 3 次元デジタル設計やコンカレント・エンジニアリングの必要性が増してくるのは当然といえるかもしれない。
第三の、開発工数の不足に関しては様々な見方がある。
開発系エンジニアの数が量的に不足しているのではなく、カリスマ主査や熟練開発者等の不在など、質的な不足が起きている結果、擦り合せの能力や効率が低下し、システムに依存した開発が必要になってきたと嘆く声もある。
確かに「匠の喪失」は、技術戦略上極めて重要な問題である。
本誌 Vol.11 (https://www.sc-abeam.com/sc/library_s/column/3689.html)でも触れたように、技術のデジタル化だけでなく、技術が人から人にアナログ的に伝承される仕組みを、人事制度や組織構造の中に用意しておかなければならない。
しかし、昨今の開発系エンジニア不足は、純粋に開発需要に対して開発工数が追い付かないという開発需給の逼迫が原因であろう。しかも、二つの理由から来ていると思われる。
一つは、「需要のあるところで開発、生産する」という思想の日本のクルマ作りが世界各地で受け入れられ、急速なグローバル化が進行している結果、国内のエンジニアに対する開発工数が急増していること。
もう一つは、顧客需要の変化が大きく早くなっていることを踏まえて、開発業務にも需要変化への対応の柔軟さと速さが求められるようになってきていること。
これらが原因である限り、今後も開発需要が増加することはあっても減少することは考えにくい。それが少子化と工業高校衰退の中で起きているのだからどうしても開発工数は不足しがちである。
いい悪いや、匠の技術への郷愁は別として、設計技術者、解析技術者の能力の補完や、開発効率の向上に結びつくものであれば採用していく以外にない。
設計のデジタル化を盲従することは論外だが、それが避けられない潮流である以上、批判するだけでは建設的ではない。設計現場は、使い勝手のいい設計業務、顧客の利益になる製品開発が実現されるように、積極的にその知見を提供していくべきである。
<加藤 真一>