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トヨタ、ネバダ州に銀行を設立へ。1月に認可取得、今秋の…
◆トヨタ、米国ネバダ州に銀行を設立へ。1月に認可取得、今秋の開業を目指す
自動車ローンだけでなく、クレジットカードの発行や住宅ローンなども検討
<2004年02月20日号掲載記事>
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銀行と一般の事業会社の違いはどこにあるだろうか。
このニュースでは厳密な法律などに基づく差異の分析ではなく、一般 的な認識としての差異である「他人からお金を預かり、それを貸し出す」という点に注目したい。
銀行の場合、この「預かる」=「資金調達」の手段は、「預金」という方法を用いる。 預金という資金調達は、皆さんご存知の通り、預金者に口座を開設してもらい、その口座に一定の金額を預け入れてもらうことにより行う。
一方、銀行が調達した資金を「貸し出す」ほうは、例えば八百屋さんに対して行う。結果、預金者が取るクレジットリスクは、銀行に対して、となる(八百屋さんに対してではない)。八百屋さんが潰れても、この預金者は銀行により保護される(預金者の取引の相手先は銀行だからです)。
八百屋さんの取引の相手先は銀行。預金者の相手先も銀行。
ということで、預金者は銀行に信頼を寄せて預金をする。
一般の事業会社ではこのような資金調達手段は許されておらず、所謂「借入」と言われる、事業会社や金融会社(含、銀行)との金銭消費貸借契約に基づくローンか、株式を介して出資者を募ることによるエクイティーファイナンスの何れかからの選択となる。
では、銀行が潰れたらどうなるだろうか。
銀行経由のファイナンスは間接金融の一部だが、銀行が潰れるということは即ち、預金者にとって預金の価値がパーになるということだ(今までは預金については全面的に保護されていたものの、ペイオフ解禁により、少なくとも定期預金は既に元本1,000万円+利息までの保護のみとなっている)。
よって、間接金融を効果的に回すためには「銀行」は常に信頼できる存在である必要がある。
記事にある、トヨタによる米ネバダ州での銀行設立は「預金を扱う」という意味でトヨタにとって初めてのケースとのことだが、歴史的に見て信用力のある企業が銀行業を営んできたのが常である。
預金口座の開設は、全米のトヨタディーラーを対象とし、日常的な決済業務の効率化を当面のサービス内容としていることから、トヨタが明日にも個人からの預金獲得を行っていくということではないが、連結ベースで見た当期利益で1兆円を稼ぎ出し、20兆円以上の総資産を運用しながら実質的に有利子負債が限りなくゼロに近い状態の「巨大優良企業・トヨタ」が今後銀行業を営んだとしても、なんら不思議は無い。
<長谷川 博史>