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米国トヨタ、競売サイトの米イーベイと自動車会社としての…
◆米国トヨタ、競売サイトの米イーベイと自動車会社としての独占広告契約
2004年中は他メーカーのネット広告を掲載せずに、トヨタ車だけを宣伝へ。
<2004年02月23日号掲載記事>
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イーベイ(http://www.ebay.com)という会社をご存知だろうか。
米サンフランシスコ・「ベイ(湾)」エリアが発祥の地の、世界最大のオンラインオークションサイトである。
出品アイテム数は常時1,275億アイテム、’03年の流通総額(GMS:Gross Merchandise Sales・ネット上で取引が成立した金額)は317億ドル(3兆円以上)の巨大マーケットプレースで、日本で言えばヤフオクや楽天フリマ、ビッダーズなどに相当する。
ここまでは一般的に知られている範囲内であるが、それでは現在のイーベイにとって、ネット上での自動車売買による収益が大きな柱になりつつあるのはご存知だろうか。
日本の自動車メーカー、オートオークション事業者、インターネット関連事業者の皆さんにとって、イーベイの現状を知ることは、今後の事業を構想するうえで大きな参考になるであろうと考え、ここに紹介したい。
イーベイにおける自動車流通総額は2003年現在年間約60億ドル(約6,450億円)。流通総額とは前述の通り、取引が成立した金額のことであり、日本のオートオークションで言えば、落札車両単価x落札台数と考えれば間違い無い。
自動車の流通総額はイーベイ全体のそれの27%を占め、過去2年間の流通総額増加額の実に38%を占めるシェア/成長率ともにNo.1の商品となっている。
平均落札価格は、7,500ドル(約80万円)。
簡単な算数をすれば、落札台数は年間約80万台ということが分かる。
イーベイによると、全米の自動車流通市場規模は約6,250億ドル(部品、用品含)で、市場シェアは未だ1%弱・これからが成長の時である、としている。
規模感を把握する為に、これを日本のオートオークション事業者と比較してみよう。
(株)ユーエスエスの出品台数は155万台。落札台数は84万台(2002年度)。
即ち、落札台数で言えば、イーベイの自動車部門(以下、「イーベイモーターズ」という)とほぼ同規模と言える。
また、イーベイモーターズの売上高は明らかにされていないが、Lehman Brothersの試算では売上高の10%強とのことなので、2.9億ドル(約311億円)程度だろうか。
これまた、ユーエスエスの売上高である約340億円と同レベルである。
(尚、イーベイモーターズの収益モデルは、台当たり固定で出品料が40ドル・落札料も同じく40ドル)。
ユーエスエスなどの日本のオートオークションとイーベイとの差は、実車を集めて保管したり査定を行ったりという作業を行うか否かである。
イーベイでは、こうしたリアルな作業を行わないことから、所謂オークション運営に関わる固定費は殆ど発生していないと考えられ、損益的にはユーエスエスを上回るレベルと思われる。
これまで日本のインターネット事業者やオートオークション事業者にとって、個人も参加する形での自動車のネット売買は、特に中古の場合一物一価と言われるように、1台ずつの状態が異なる実物の確認をせずに売買する行動様式が定着していないことから、必ずしも成功モデルとなっていないが、
(1) 昨今の業者間オークションにおけるB2Bでの現車確認無しでの取引の活発化(会場によっては、現車確認無しのネット取引が50%に近づきつつある)
(2) 米国におけるイーベイモーターズの成功は、日本におけるユーザー参画型のネット上での自動車売買の方向性を示唆しているのではないか(但し、個人間のみに限定したマーケットプレースということではないと思われる)。
尚、本日取り上げた、「米国トヨタがイーベイと自動車会社として独占広告契約を締結した」との記事だが、米メディアによると、イーベイは2004年中は他メーカーのネット広告を掲載せずにトヨタ車だけを宣伝する代わりに、400万ドル(約4.3億円)を受け取るとのこと。
実は、イーベイモーターズの月間ユニークユーザー数はオートバイテルやケリーブルーブックドットコム(価格指標を発表している歴史ある会社)といった総合自動車情報サイトや、フォード、GMなどの自動車メーカーのウェブサイトのそれを上回り、自動車サイトとしてNo.1になっている(因みに、イーベイモーターズの月間ユニークユーザー数は約9百万人に対して、GMのそれは約5.4百万人)。
トヨタにとって、イーベイモーターズ上の広告を1年間トヨタで埋め尽くすことを考えれば、安い買い物であろう。
<長谷川 博史>