三菱自動車の再建問題、再生ファンドで1000億円の調達を…

◆三菱自動車の再建問題、再生ファンドで1000億円の調達を検討

三菱自動車の再建問題で、三菱重工、三菱商事、東京三菱銀行の3社は、東京三菱銀出身者が2002年に設立した独立系の企業再生ファンド『フェニックス・キャピタル』を通じて一般の機関投資家から最大1000億円規模の出資金を調達する方向で検討に入った。
<2004年04月14日号掲載記事>
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三菱自工の再建では、筆頭株主のダイムラーと三菱グループが総額約5,000億円規模の増資を二段階に分けて引き受ける方針が固まっている。
これに融資などを加えた7,000億円規模の再建資金を元手に、各種リストラクチャリングを実施すると伝えられているが、今回取り上げられたフェニックスキャピタルの最大1,000億円という金額はこの内訳と考えられる。

フェニックスキャピタルは東京三菱銀行出身者が2002年に設立した経緯があることはよく知られているが、当然三菱グループ主導での支援策の一環であるのは間違い無い。即ち、「一部でも外部機関投資家の資金を活用しよう」という趣旨に加えて、グループからの資金も一旦ファンドという形で纏めることにより、表面上の金額は抑えられる(再生ファンドへの資金の出し手次第ではあるが)。

フェニックスによる資金調達・投入の真偽の程は別にして、もし事実であるとすればどのようなファンクションを果たすのであろうか。

三菱自工の増資は、一括払込であった日産の時の6,400億円と比べると、ダイムラーの台所事情もあり二段階に分かれることから、その間の資金供給という機能はある。

一方、通常投資ファンドは、複数の機関投資家から資金を調達。非上場企業の50%以上の株式を取得し、経営権を握った上で、財務リストラやオペレーション改善により企業価値を高め、同企業を運営するのに最適なオーナーに株式を譲渡したり、IPOに導いたりする。

即ち、複数の企業の再生に携わった経験を生かして
(1)資産 / (2)負債
/  (3)資本
のうち、

1.優良な資産(1)を有しているにも関わらず、それを活用出来ていない場合は、その理由の特定と、改善案の立案。改善実施と更なる改善案の立案。
2.事業内容に最適な資金調達方法を模索し、(2)、(3)の最適な負債資本比率の実現
3.そして、(1)、(2)、(3)の全てを司る経営陣及び従業員のモチベーションを高める為に、インセンティブプランの導入や必要に応じて不要な人員の整理を行う。

手っ取り早く実施が一番簡単なのが2.。大変だが全ての企業に共通する手法は3.。企業毎に事業内容が異なり、収益獲得手段も異なることから、テイラーメードが必要なのが1.。そして、1.が企業の継続的な成長には最も重要な要素である。

今回、もしフェニックスキャピタルがファンドを組成して増資の一部を受け持つとした場合、投資銘柄は上場株で、しかもマイノリティ出資となる。
上の1~3を実現する為には、企業に対するある程度のコントロールを株式を通じて有していることが前提となるが(小規模な企業であれば、一部株式保有とその他出資者からのプロキシ入手などにより実現可能なケースもあるが、これだけの規模と多数の利害関係者を有する企業の場合、その方法は難しいと考える)これを実現するだけの株式の保有には至らないわけだ。

よって、再生ファンドの果たせる役割は今回のケースではかなり限定的にならざるを得ないだろう。

それでは果たして、今回の三菱自工再生において1.を担うのは誰だろうか?

重工、商事、銀行からそれなりの支援はあるだろうが、それは主に、2.3.が前提となるだろう。上述の通り、ファンドも力不足だろう。

やはり、優良資産の活用、構築、収益獲得手段の創造を司るのは、役職員、特に社員であろう。今までのやり方を変えていきながら、自社の良いアセットをフル活用することが可能なのは社員でしかない。

今の混乱がある程度落ち着いた時点で、社員の方が率先してダイムラーや、その他支援者の有する資源をもフル活用しながら、企業再生の為に立ち上がった暁には、我々コンサルティング会社としても助力可能な限りのことをさせて戴きたいと切に願う次第である。

<長谷川 博史>