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中古車競売会場でスペアキー入手、落札者を追跡し盗み出す…
◆中古車競売会場でスペアキー入手、落札者を追跡し盗み出す、ロシア人窃盗団
車台番号をもとに登録事項証明書を申請し、所有者の住所を割り出す手口
◆大阪陸運協会が開発した「サードナンバー」、知名度不足で普及せず
2003年2月から1枚1500円で発売開始。今年3月末までの販売実績は約2000枚
◆自動車盗難防止の「窓ガラス用ステッカー」、兵庫県で2003年2月から導入
ナンバーを偽造しても、元のナンバーが分かる「サードナンバー」
<2004年05月06日(GW特別号)掲載記事>
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最近、自動車の盗難が何かと話題になっており、私の知っている自動車ディーラーの間でも、先週は在庫車がx台盗まれた、といった話が仲間内で囁かれている。
警察庁によれば、平成元年以降の10年間の自動車盗難件数は年間約35,000件。これが、平成11年には43,092件と、20%近く急増。盗難場所としては、駐車場52%、道路上24%*となっているが、今回の事件は少し異なる。
中古車オークションで競り落とした車がある日突然、持ち主のもとから消えるというのだ。
*(以上、統計の数字は、社団法人日本自動車工業会ホームページを参照しました)
犯人の手口は以下の通りと想像される:
1.オートオークション会場で、スペアキーを盗む(ワイヤーなどで外れないようにしていることが多いが、何らかの手法を用いてスペアを盗んだらしい)。
2.エンジンをのぞき込むふりをして車台番号をメモ。
3.オークション開催日から一定期間を置いて、メモした車体番号をもとに運輸支局(陸運局)で登録事項証明書を申請。
4.登録事項証明書には、自動車の所有者名、使用者名から住所に至るまでの情報が記載されている為、ここから最終的な自動車の購入者の住所を割り出す。
5.住所に基づき、車を特定。スペアキーを用いて開錠。乗り去る。
逮捕時に押収されたスペアキーは850本を超え、入手した証明書の写しは111通に上るとのこと。
さて、こうした犯罪を防ぐ方法として考えられるものとしては、以下の3つが考えられる。
1)公的機関による登録事項証明書の発行制限
以前は、陸事に行くと誰でも簡単な手続き(OCRシートへの記入など)を行うと、正確な値段は覚えていないが数百円程度の支払で、車体番号や所謂ナンバープレートから所有者の住所を含めた情報を入手することが出来た。
しかし、今は(実際の運用がどうなっているかは別にして)この情報を入手する為には、身分証明書などの提示が必要となっている。
2)ユーザー自らが防犯に取り組む
2つ目の記事にある、サードナンバーを含め、ユーザー自身が防犯装置などを取り付けることも効果的だろう。サードナンバーとは車のナンバーと同じ数字などを印刷したカードサイズのステッカーで、特殊な加工が施されているため、剥しても窓ガラスに数字などのあとが残るものらしい。
車を盗んだ犯人がナンバープレートを取り換えて転売しようとしても、元のナンバーが分かり、売りさばくことが難しく盗難防止の効果があるとされる。
3)やはり、オートオークション会社
現在、中古車の小売台数に関する正確な統計は無いが、推定すると凡そ年間300~400万台と言われる。
一方、オートオークション会社を経て流通する自動車の数は600万台を越える。小売を行う企業数は20,000社を超えると言われるが、オートオークション会場は150会場弱。
多くの中古車が、数少ない(とはいえ、100を超えるものの)会場に集中しているのだ。特に今回のケースは、オークション会場でスペアキーを盗まれたことにより発生している。大量の車両を1日で捌く会場として管理を強めることは実務的にも難しい課題ではあるが、しっかりとした対応が望まれよう。
官、個人、事業者の3者がそれぞれ対応することが望ましいものの、特にオートオークション事業者に認識戴きたいのが、「自分達は営利目的の事業者であると同時に、業界・ユーザーに与える影響からすれば、半分公的な責任をも考えねばならない立場に居る」ということである。
会場によっては、車検証のコピーが鍵の無いボックスに入れてあったり、安全面を考えると更なる運用面での改善が必要なところもあるが、前述の通り、小売台数を遥かに上回る台数が行き交う「流通の要」であるオークション会場が、「安心」と「信頼」を売りにしないで、他に何を売りにするというのだろうか?
その意味では主要オークション場が加盟する、日本オートオークション協議会の「走行メーター管理システム」など*は、オークション事業者が協力して不正行為に対処している、良い例である。
*オークション会場に出品された中古車の走行距離のデータを蓄積し、データベースとして集中管理することにより、オークションに出品される中古車から走行メーターに関する不正車両を排除することを通じて、不正行為を未然に防止することを目的としている。 (社団法人自動車公正取引協議会ホームページより)
安心と信頼が揺らぐ世の中だからこそ、益々事業者にとっては「安心」が売りになる時代である。
<長谷川 博史>