海外雑誌・業界記事紹介(4)・米国マツダ販売店

英語でしか発刊されていない海外の雑誌で取り上げられる最新の記事の内容を日本語で解説・海外での最新ビジネストレンドを分かり易くお届けするコーナーです。

第4回 Business 2.0誌 June, 2004
“Let’s Remake a Dealership, BOB PARKS”
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このコラムでBusiness2.0を紹介するのは3回目になるが、今一度米国におけるBusiness2.0の位置付けについて紹介したい。
同誌は、米国でビジネスとITのコラボレーションを模索・新しいビジネスモデルや技術を中心に紹介している先進的な雑誌である。

米国での自動車ディーラーの店舗改装ラッシュについては、911(ナインイレブン)以降の歴史的な超低金利に基づく投資・消費促進政策、及び税制面での各種償却資産投資に伴う損金計上時の優遇などの影響を含め、Automotive Newsの内容を元に以下に詳しく説明したが、
『海外雑誌・業界記事紹介(2)・Automotive News「米国自動…
Business 2.0の2004年6月号に、ディーラー店舗改装に伴う各種ユニークな施策をとっている例として、米国におけるマツダの販売店に関する興味深い記事が掲載されていたので紹介したい。

~~~~~~~要約~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1.米国マツダは他ブランドのディーラー同様、ディーラーショールームの改装に多額の投資を行っている。
・改装予定店舗数は、2008年までに200店。
・記事では、1店当りの改装費を約81万ドルとして、内マツダが30万ドルを負担するとしている(ディーラーが専売店の場合)。
・改装を担当するのはDesign Forum社(10年前にSaturnディーラーの立上げを担当した企業)。

2.しかし、その方法は他ブランドとは以下の3つの形で異なっている。
1)ディーラー店頭に4~8台のインターネット接続端末を準備。
・一般的に自社のホームページ以外へのアクセスを禁止することが多いが、マツダは完全開放。ショールームでKelleyBlueBookやEdmunds.comなどの価格比較サイトやEbayなどのオークションサイトを用いてディーラー店頭に置かれた在庫と同様のスペック・オプションの車の価格を比較可能にしている。
・また、販売員にも顧客が調べた価格の内容に基づいて商談を行うよう教育。販売員と話をしながら、お客様がウェブで下取り価格やディーラーへの卸売価格を調べることも可能。

2)試乗用の車を店舗の前面に押し出し、店舗に入る前に試乗が可能なスペースを準備。販売員に対しては「先ずは車に乗ってもらう」ことを優先するように教育。更に、事前にMazda.comのウェブサイト経由で試乗の予約も可能にする。

3)400ft2のカフェを設置することで、落ち着いて次に乗りたい車の在庫をチェックしたり、定期的な整備などに訪れやすい環境を整えた。このカフェエリアは販売員にとって「飛行禁止区域」に指定。販売員によるプレッシャーから開放されたお客様が、寛ぎ易い環境とした。

3.店舗改装とそれに伴う各種販売員への教育やセールス手法の変更により、2004年の第一四半期の売上高は前期と比して32%アップ。利益も平均50%もアップしている。

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上の2の1)のように、自動車本体の価格を店舗で検索しながらディーラー販売員と話ができるようにすることによる効果は以下の3つに集約される:

1)そもそも顧客が不満を感じやすいディーラーセールスマンとの価格を巡る攻防を取り除くことにより、最初から両者間の信頼が生まれる。
2)これにより、ウェブだけで見積を取るのではなく、来店者数が上がる。
3)更に、来店時には自動車本体よりも利益率の高いワランティや各種オプション(ナビやCDROMなど)、部用品の販売が促進される。

元々新車販売による利益よりも周辺ビジネスによる利益や定期的なメンテナンス等の為に来店してもらうことによる利益のほうが大きい、というのがディーラーのビジネスモデルであり、よほど新車販売で損をしない限りは、結局はディーラーの収益は拡大する。また、当該車両が中古車の場合、所謂ウェブで掲載されている価格をベースにしても、それなりのマージンが確保可能である場合が多いことから問題は生じない。

米国では、新車ディーラーにおける収益性を低下させる最大の敵として「インターネットを利用して情報武装をした顧客」の存在を挙げることが多いが、マツダは店舗改装と各種ビジネスメソッドの転換により、インターネット顧客を惹きつける術を模索している。

しかし記事でも結びの文章としているが、「マツダはインターネットを経由した顧客を満足させることに一定の成果を納めつつあるが、その方法はインターネットとは殆ど関係無い方法であった」。

インターネットにはリアルで補完。リアルはインターネットで補完、という考え方がやはりここでも成立している。

<長谷川 博史>