ディーラーの行方(1)

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

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第 4 弾は、弊社副社長の長谷川博史が、ディーラーの現状、今後について 5週に渡って紹介する。今回はその第1回にあたる。

第4弾『ディーラーの行方(1)』

(日刊工業新聞 2004年08月04日掲載記事)
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企業にとって、すべての価値実現の源泉は顧客にある。自動車業界において、顧客に対する価値の最大化を考えたとき、忘れてはいけないのがディーラーの存在だ。「ディーラーから顧客への価値伝達を最大化するーすなわち収益を向上させるための施策」を提案するとともに、それが自動車メーカーにとってどのような意味を持つのか、5 回にわたり論じたい。第 1 回目はディーラーの現状と課題を抽出してみる。

古典的なマーケティングミックスの考え方に「 4P 」という概念がある。自動車製造販売会社の提供価値を考える際には、プロダクト(商品)やプライス(価格)といった開発・製造面に目が行きがちだが、徐々に効果を発揮するのが、残る二つの P であるプレース(流通チャネル)、プロモーション(広告宣伝・営業推進)だ。これらを実践する際の中心的存在がディーラーである。

ディーラーのコアビジネスは「新車販売」である。当たり前のように思えるが、実際にディーラーの損益計算書を見てみると、今や必ずしも正確ではないことが分かる。10年前のわが国のディーラーは、新車による利益が新車以外による利益を上回っていたものの、現在ではこれが逆転している。(新車 46 %に対し新車以外 54 %)。

この現象は世界各国のディーラーにほぼ共通。米国自動車ディーラー協会の統計によると 02年の新車売り上げ総利益と新車以外の売り上げ総利益の比率は43 対 57 となっている。

わが国の自動車産業におけるディーラーの位置付けは、米国における「独立したビジネス単位」というポジショニングとは異なり、メーカーの商品戦略・バリューチェーンの延長線といえる。事実、わが国における大規模な自動車ディーラーの半分はメーカー系資本である(メーカー資本ディーラー比率が一番低いのはトヨタ自動車)。商品設計や価格決定権などにおけるメーカーの影響力は大きい。

新車を除く最大の収入源は「サービス収入」である。サービス収入は単価的には地味ではあるものの、点検や消耗部品の交換、故障などの際に定期的に発生する。サービス以外では、自動車保険(任意保険)でも顧客サポートをしっかり実施すれば、年に一度の契約更新時に定期的な代理店手数料が期待できる。

割賦販売については通常、新車・中古車販売時に計上されるが、昨今の金利水準低下などにより、その手数料収入は低下傾向にある。そして、サービスの次に収益貢献の大きい中古車販売については専業店との競争が激しいものの、ディーラーの有する経営資源を効果的に用いれば、利益拡大につなげることも可能。各社こぞって力を注いでいる。

新車需要の劇的な成長を期待できない環境下ではディーラーは「新車販売」というプラットフォームを活用しながら、各種「周辺ビジネス」をアプリケーションとして展開することで収益の多様化を図っている。次回はこれらプラットフォーム・アプリケーションの両領域における収益向上のための施策を提示してみたい。

<長谷川 博史>